Three Months Journey.

アニメとか漫画とか小説とか、好きなものについて書きます

百合とか巨大感情とか尊いとか何でもいいから今すぐ『どうして私が美術科に!?』を読んでくれ。

今一番読まれるべき漫画の中で、今一番読まれていない漫画の話をさせてください。
まんがタイムきららMAXにて連載していた『どうして私が美術科に!?』という作品です。

結論から言ってしまうと、この作品は「百合」および「巨大感情」「共依存」「女女新しい女」等々のワードに少しでも惹かれる人たちは今すぐにでも読むべきです。


こんなブログよりももっと読むべきことがそこには描かれているので今すぐAmazonへどうぞと言いたいところですが流石にそれではこのブログの意義がなくなってしまうので『何故』読むべきなのかをうだうだと書いていきます。どうかお付き合いください。

今これを読んでいる方の中には「でもそれ、きららでしょ? 今の時代はエモい百合なんだよ。可愛さとか求めてないんだよね」という方ももしかしたらいるかもしれません。
断言しますが、そう思うあなたこそぜひこの作品を読むべきです。マジで。
この作品はどうしようもなくエモくて、散々胸が締め付けられて、身の毛もよだつほど救いのない話だって含まれていて、なのにどうしようもなく『可愛い』のです。
きっとあなたのきらら漫画への偏見が綺麗に溶けて消えていくことでしょう。

このブログではその作品のヤバさの一端を順序立てて解説していきます。

 


まず、その圧倒的な支持について語らせてください。

「ダウト、圧倒的な支持があれば打ち切られないよね?」と言いたい気持ちはわかります。この作品は平成を超えることができず残念ながら打ち切られてしまいました。

 

そこで下をご覧ください。

・4コマオブザイヤー2017 新刊部門第1位

・4コマオブザイヤー2018 既刊部門第2位

次にくるマンガ大賞2018 ノミネート作品

・百合漫画大賞2019 第21位

・COMIC FUZ アプリ内売り上げランキング4コマカテゴリ第1位

これは、どうして私が美術科に!?が叩き出した記録の数々です。繰り返しますが今は打ち切られた漫画の話をしています。

それだけではなく2018年の年末に行われたコミックマーケット95ではファン有志が二次創作合同誌を企画されました。20名を超える参加者が集い170Pを超える分厚い同人誌となり、コミケ当日は開場1時間で完売おいそれ主催お前だろとか言わないで。

 

この作品を追いかけているファンは誰しもが打ち切りの事実に驚きを隠せませんでした。何故なら圧倒的な支持がそこには確かにあったからです。ですが、いくら中身が面白い漫画でも当たり前ですが読まないと面白くありません。
売り上げが悪ければ当然『この漫画を読んでない人間』がたくさんいることになります。極端な話をしてしまえば読んだ人間の100%が絶大な支持をしたとしても100部しか売れてなければ当然打ち切られます。
商業漫画は年に12,000冊ほど出版されているといいます。同人漫画は当然含まれません。あなたが今読んでいる大好きなめちゃくちゃ面白い漫画は一年換算でも1/12,000のとても小さな存在なのです。言ってしまえば去年より日本には12,000冊もの漫画が新たに増えていることになります。生半可なことでは『発見』されることすらありません。
漫画は当然売れなきゃ本屋の隅に追いやられやがて返本されていきます。その中身がどれだけ面白いかは全く関係ありません。『面白ければ売れる』は娯楽が多様化した現代においては幻想にすぎません。
そしてこの問題は『どうして私が美術科に!?』に止まらないのです。いまあなたが読んでいる大好きでめちゃくちゃ面白い漫画が文字通りの意味で売れなければいつ連載が止まってしまってもおかしくないのです。
ファンから圧倒的な支持を受けていてもその作品の存在が世界に轟かなければそれだけで価値は簡単に奪われてしまう。その結果この『どうして私が美術科に!?』という作品は打ち切られるに至ってしまいました。
だからどうかこの文章を読んでいるあなたには「売れてない漫画なんでしょ」という言葉は一旦飲み込んでどうかこの作品触れてほしいと思っています。きっと後悔はしないはずです。

 

 

さて、その『中身』に関して話していきたいと思います。
ここでやっとあらすじの登場です。

願書の提出ミスにより、間違って美術科に入学してしまった酒井桃音。 当然のごとく居残り三昧な毎日ですが、仲間がいればそれでも楽しい!力を合わせて目指せ進級&卒業!きららの次世代を代表する、女の子の尊さがいっぱい詰まった著者の初コミックスです。

主人公である酒井桃音は普通科にいくつもりが間違って美術科に入学してしまうという頭のおかしい驚きのオープニングから始まります。そこで出会ったどこか変だけど素敵な仲間たちと四苦八苦しながらもそれでも卒業を目指していく。これがこの作品の1番の目的です。
このあらすじを読むと『どうして私が美術科に!?』は一見、きらら漫画らしく女子高生たちがわいわいとキラキラした青春を過ごす日常系と呼ばれる漫画に思われると思います。
それも正しい側面ではあります。わいわいきらきらしているのも間違いなくこの作品の魅力の一部ではあります。
ですがそれだけで収まらないのがこの『どうして私が美術科に!?』という作品です。
間違って美術科に入学してしまった桃音は物語の序盤でその間違いを正せる機会を得ます。つまり普通科に転科する選択肢を与えられるのです。しかしそこで桃音は自分の意思で間違って進んでしまったその道を否定せずに歩くことを選びます。桃音は美術が得意なわけでも将来美術を生かした職業に就こうとしているわけでもありません。普通の人であればそれは愚かな道であり間違っていると非難するでしょう。その感覚は間違っていません。
しかし桃音はそれでも仲間たちと今の道を進むのです。そして御都合主義で自動的に彼女たちの青春がキラキラしたものになっていくことはありません。他人とは違う生き方を選んだ彼女にはそれ相応の超えなければいけない壁が高く立ち塞がるのです。それは正しい道を歩んだ人には襲ってこない物です。桃音にとっての『どうして』は常に彼女の周りを漂っていて、時には明確に彼女へ刃を向けてきます。繰り返しますが、今はきらら漫画の話をしています。普段きらら漫画を熱心に読まない人にとってはびっくりするようなことを言っているかもしれません。

そしてその日々に襲い来る『どうして』は桃音だけのものではありません。桃音の仲間たち、つまりは間違えずに美術科に来た他の4人にもそれぞれ抱える桃音とは違う形の『どうして』が描かれていきます。
実際に読んで確かめてほしいので詳しくは書きませんが彼女たちが内面に抱える問題はとても簡単に解決するものではありません。たった一人の人間に出会っただけで簡単に解決するようなものでも決してありません。ネガティブな要素だって平気でこの漫画では描かれていきます。一見解決したように見せかけてその実全然救われてないよねそれ……。という要素も平気で作者が狙って描いてきます。


特に3巻範囲が怒涛の展開のオンパレードで、毎月雑誌の発売日には最新話を読んでその人の心がない展開にやられて精気を抜かれたゾンビのようにツイッターを徘徊するオタクの成れの果てが多数目撃されていました。そんな話が収録された最終巻は本日4月25日に発売しました。買いましょう。
よく百合ファンの間で話題に挙げられる『やがて君になる』や『リズと青い鳥』、『バンドリガールズバンドパーティー』や『安達としまむら』などに負けず劣らずな巨大感情やエモさがこの作品には多数含まれています。特にリズを好きな人はきっと心に突き刺さるカップリングがあります。そんなエピソードが収録された最終巻は本日4月25日に発売しました。読みましょう。
本当に乱暴な言い方をするのなら、この作品はゆるふわな可愛い女の子たちの日常系に擬態した、互いの感情を発露させ戦う女と女の感情バトル漫画とも言えます。美術要素どこ行った。至高のレヴューをどうか目撃してください。そんな彼女たちの生き様が収録された最終巻は本日4月25日に発売しました。買って読んでください。ほんとお願いします。マジで。

 

長々と買いてきましたが、とにかく言いたいのはこの作品の力はこんなところで終わるべきものではないということです。
僕が短くない人生を生きてきて、好きになった漫画はたくさんありますし、すごく好きでも残念ながら打ち切られる作品も数え切れないほどありました。その度に悲しい気持ちになったりもしましたし、もっとこの登場人物たちの人生をのぞいていたいと、誰しもがそんな思いになったことはあると思います。


でもこの作品は「好きだった漫画が打ち切られて悲しい」とはあまり思いませんでした。


そこにあったのは悲しいという感情ではなく「こんな凄い漫画があっけなく終わる世界はとても信じられない」という怒りに似たものでした。もっとこの作品には計り知れないほどの可能性が秘められていて、それは火を見よりも明らかであり、当然それはこの世界に響くべきものでした。打ち切りの事実を知った時は大げさではなく目の前が真っ暗になって数日本当に何も手がつかなくなるほどでした。


もっと多くの人間に読まれるべきであると今でも信じてやまないですし、僕個人としては今よりも少しだけでもこの輪が広がってほしいと思っています。
もう連載は終わってしまい、彼女たちのスクールライフのその先を見ることは叶わなくなってしまいましたが、それでもこの全3巻で語られた物語はとても尊く、そして傲然たるものだと、今より一人でも多くの人たちに知ってもらえればそれ以上の幸せはありません。

 

 

最後に僕がファンが作った『どうして私が美術科に!?』脳内TVアニメーションの脳内オープニング脳内主題歌であるComple X Harmony(コンプレックスハーモニー)という曲を紹介して終わりにします。

www.nicovideo.jp

 

 

 


『どうして私が美術科に!?』通称『どうびじゅ』をこれからもどうかよろしくお願いします。

 

 

 

どうして私が美術科に! ? (1) (まんがタイムKRコミックス)

どうして私が美術科に! ? (1) (まんがタイムKRコミックス)

 
どうして私が美術科に! ? (2) (まんがタイムKRコミックス)

どうして私が美術科に! ? (2) (まんがタイムKRコミックス)

 
どうして私が美術科に! ? (3) (まんがタイムKRコミックス)

どうして私が美術科に! ? (3) (まんがタイムKRコミックス)