Three Months Journey.

アニメとか漫画とか小説とか、好きなものについて書きます

くすく的2022年の10曲

みなさんあけましておめでとうございます。
今年も何卒、よろしくお願いします。

とは言っても年が明けてからずいぶん時間が経ってしまいましたが……。
冬コミやら正月に鬼のように仕事が入ったりやらオフ会やらでようやく落ち着けるかなという感じになったので今のうちに更新したいと思います。
この記事は他のところに上げた記事をこちらにも投稿する形のあれです。一応ブログだけをチェックしてくれてる人もいるっぽいので。

失くしたくないものがあったよ
帰りたい場所だってあったよ
君のいない 世界の中で
君といた昨日に応えたい

まぁ、くすくといえばBUMPということで最初はこの曲。
劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の主題歌ですね。
この曲はニュース記事などで『起用』と表現されているので最初からハロウィンの花嫁のために書き下ろされたわけではなく、ある程度は形のあるものをコナン側から使わせてくださいという依頼を受けてBUMP側が承諾したという流れだと思われます。
これは割とBUMPとしては珍しいことだと思います。こうこうこういう作品に使いたいので、タイアップのための曲を『作ってください』と依頼する『書き下ろし』という形が基本で、その期待に答える楽曲を作り出すのが非常に上手いのがBUMPであるという認識が強い。(もちろんイメージのはなしであり提供曲も数々存在する)
ただ、声がかかった時点で楽曲がどの程度完成していたかは不明なのでもしかしたら主題歌に使われるにあたり多少は作り直されたりしている部分があるのかも。

さて、2022年にBUMPがリリースした楽曲といえばこの【クロノスタシス】とアニメ『SPY×FAMILY』の第2クールPO主題歌【SOUVENIR】、そして【天体観測(2022 Rerecording Version】の三曲。天体観測はさすがに新曲ではないから省いたとしてもSOUVENIRを選ばなかったのは意外と思った人もいるかもしれません。
SOUVENIRももちろん名曲なんですが、個人的にはこのクロノスタシスが好きすぎる。多分2022年で一番再生した曲じゃないのかな。
理由としてはそのサウンドアレンジにあります。
この楽曲はポップテクノやFutureBassのサウンドを取り入れていてかなりBUMPに新しい風を吹き込んでいます。今までもrayで初音ミクとコラボしたり、ButterflyでEDMサウンドを取り入れたり、記念撮影でループミュージックを試みてみたりとアンテナを伸ばし、度々楽曲に新しい魔法をかけてきたBUMPですが、さすがにFutureBassを取り入れてきたのはめちゃくちゃ驚いた。厳密にいうとちゃんとしたFutureBassではないから音楽ジャンルに一家言ある人からすると雑言及になってるかもしれないけどそこは寛大な心で許していただけると……。
ただのこのクロノスタシスという新しい楽曲はその実、めちゃくちゃ本来のBUMPらしい曲でもあると思うんですよね。

これはクロノスタシスがリリースされ少し経った後、藤原の誕生日を祝うファンにお礼という形で公式Twitterでポストされた動画。
クロノスタシスという楽曲をギターと藤原の声だけで聴くと、かなり『懐かしいBUMP』を感じられる気がします。それこそインディーズの頃に出した一枚目のアルバム【FLAME VEIN】の匂いすら感じられるような。
これを聴いてBUMPというバンドの変わることのない芯の強さと、同時にそれに反し時代と共に変わっていく『面白さ』もこの曲に感じました。
変わらないことは『安心』する、でも変わっていくことも『楽しさ』として受け入れる。そういう、原始を崇拝する無垢な自分と、変化を楽しいと思えるようになった大人になった自分の同居を強く感じた一曲で、そういう意味でもこの曲をピックアップさせてもらいました。

 
2. 境界線 / amazarashi

境界線の向こう側で 足掻く人々 嘆く人々 目にしながら 
沈黙することを選択するならば 僕らは共犯者 人たりえたのか

amazarashiから一曲を選ぶのはかなり困難を極めたましたが、やはり2022年を象徴すると言われるとこの曲ではないでしょうか。

音楽は人から生まれるもので、その人は『この世界』に生きている。
人々の心の動きがリズムやメロディに乗せて出力されるのが音楽。
創作と世情は切り離すべきと主張する人々もいますが、僕個人としてはそれが好ましいかどうか以前に、不可能だと思っています。
恋人を歌にする人も、母親を歌にする人も、言ってしまえば昨日の晩ご飯を歌にする人も、なんら変わらない。すべて『自分に都合のいい題材』を『正しい題材』と判断して創作を行っているだけであり、それが正解か不正解かを外からヤジを飛ばして決めることが本当にできるのでしょうか。政治や紛争を『間違った題材』だと誰に決められるのでしょうか。もちろんそれは同時に人個人が何かを『正しい題材』だと断言することもできないということでもあるんですけど。
この曲は去年の頭にリリースされた曲、つまり件の戦争以前に作られた曲。でもこの曲はまるで未来を見てきたかのように私たちの心に突き刺さります。それはこれらのことがなんら新しいことではなく、何度も繰り返され、何度も記憶の外に追いやられてきた世界のいわば鏡のようなものだからではないでしょうか。
楽曲がきっかけだっていい、アニメでも漫画だっていい、なんだっていい。難しくなくてもいい。深くなくたっていい。そもそも考えなくてもいい。
そういう音楽もあるということを知るために、それを心の片隅にでも置いておくために、この曲は機能するのかもしれません。まぁもちろんそれも全部含めて、音楽はどこまでも自由なんですけどね。
 
3. インザバックルーム / syudou
辿り着いたぜアンタの背だけを追って
この呪縛と束縛逃れてやるから  
個人的に2022年一番痺れた曲です。最高。
TVアニメ『チェンソーマン』第5話エンディング・テーマですが、今回はチェンソーマンの話は一切しません。それは僕の役目じゃないので。
この曲はsyudouがチェンソーマンにかこつけて『自分』と『米津玄師』を歌った歌です。断言するな。まぁこれもうるせぇ外野の声の一つということで。
元ネタとして、海外産ネットミームの一つ『The Backrooms』というものがあります。詳しくはググって欲しいですが、世界の裏側に常識では考えられないような広大な部屋(不思議空間)があり、そこに迷い込んでしまった人は永遠にこちら側の世界に生きて戻ってこられなくなるというネットミームの都市伝説のようなものであり、それをsyudouは『憧れに出口はない』という表現でチェンソーマンのデンジとマキマ、そして自分と米津玄師を重ねているのがこの曲です。

さて、この曲を語るためにはその前に聴く必要のある楽曲がいくつかあります。
まず一曲目は米津玄師がハチ名義で最後に発表した『砂の惑星』です。

何もない砂場飛び交う雷鳴 しょうもない音で掠れた生命
今後千年草も生えない 砂の惑星
こんな具合でまだ磨り減る運命 どこへも行けなくて墜落衛星
立ち入り禁止の札で満ちた 砂の惑星
この曲は皆さんご存じの通り、かつてニコニコで一世を風靡したハチが昔と様相が変わってしまった(ようにハチからは見えた)ニコニコのボカロ界隈をかつての盛り上がりを感じない草木も育たない砂の惑星と表現したことによってボカロ界に衝撃を与えた曲であり、それは当然syudouを初めとしたその時まだ精力的にニコニコに投稿を続けていたボカロPから怒りを買うこととなりました。
よって数々のボカロPが砂の惑星へのアンサーソングを作りそれに反論をするというムーブメントが巻き起こり、多くのボカロPは『なんだこの老害懐古野郎』というスタンスで多く楽曲が作られましたが、syudouはひと味違いました。
syudouにとってハチは強すぎる憧れであり、でもその憧れから自分を否定されるような楽曲が世界に産み落とされ、非常に複雑な感情から楽曲を作ることになります。
それが『ジャックポットサッドガール』という楽曲です。

ねぇ先生 ここ無法地帯
あなた曰く既に廃れ枯れたアネクメーネ
草木生えず人類の住めなくなった
チープでキッチュ小惑星
 
ねぇ先生あなたバカじゃないの 
未だ滾る感情を知らないの
凝り固まってんならお勉強
ここで無垢で無知で無為な賛美を見せつけるわ

そしてそれから二年後の2022年夏に投稿された『いらないよ』
日from月 溶かす青春 有給も  
全てアナタの背を追うため注ぎ込んだ
荒廃した砂場から生存報告です
これは最大限の愛情表現
且つ終えるメロディ
そして2022年秋、syudouは米津玄師がOPを担当するアニメのEDを作ることになり、インザバックルームを発表する。
できればもう一度このタイミングでインザバックルームを再生してくれ。全然違う曲に聞こえると思うから。
こんなに上質すぎる関係性のコンテンツが現実の人間から生み出されているの、信じられるか? ここまで好き勝手やっといて「え? これですか? チェンソーマンに書き下ろした曲ですけど?」みたいな顔するのヤバすぎる。最高だよ。

ちょっと待ってやっぱまたループ
like the backroom 憧れに出口は無い
実際まだ出れないんだけど
アナタなんか知ってる?

そして憧れは無限ループ。どんだけ結論を出した気がしてもそれでも死ぬまで出られないんだよな。わかる。
 
4. ETA / 米津玄師

さあ起きて 子供たち
今日は この庭を綺麗な花で飾りましょう
もうおやすみ 古い友達
どうか安らかな夢で眠れますように
るるる

ということでそんなラブコールを受けまくっている米津玄師からも一曲。
おそらく世間が去年印象に残った米津玄師の一曲といえば『KICK BACK』なのでしょうが、僕はこの曲を上げます。逆張りオタクか?
実際2022年の米津玄師はKICK BACKを始め豊作すぎてマジで音楽の悪魔と契約してるんじゃないかって話題でしたよね(?)
PS5のCMソングとしてドロップされたタイトルが体をまったく表していない攻めすぎ最高キショ変態曲の『POP SONG』や古典落語の演目をテーマにしMVも話題になった『死神』などなど。特に死神のMVは米津のオタクとして最高過ぎて死ぬ間際に見る夢かと思った。
さてこの『ETA』はシン・ウルトラマンの主題歌であるM八七のカップリング曲です。死神もそうですが米津玄師のカップリングは毎回オタクを的確に刺しに来るんですよね。表題曲しか聴かないのはマジでもったいないですよ。
このETA、何がすごいかっていうと米津の古(いにしえ)のオタクを殺しに来てる部分。
昔々、あるところに『花束と水葬』というアルバムが存在していました。
米津が2010年に自主制作として同人で発表したハチ名義の1st.Albumです。
これはもう売れ線とかそんなものは全く考えていないハチ自身の独特で一見理解し難い世界観がこれでもかと発揮されてる一枚であり、間違っても一般受けするような代物ではないのですが、その頃の作風を売れっ子スーパー国民的ソングライターとなって”しまった”米津が2022年にそれでも立ち返ったイカれすぎてる一曲です。
リズムがとりにくいイントロ、一体何を語っているのか受け取りにくい歌詞、そもそもサビで歌ってる言葉と歌詞カード表記されているものが違う、わざとピッチを大げさにずらした気持ち悪いコーラスが響く間奏、増幅しすぎて普通のスピーカーではおおよそ再生しきれないほどの低音、脈絡もなくリズムをぶち壊すようなストリング、狂気を演出するひたすらに不気味で長すぎるアウトロ。
今マジで今の米津しかしらない一般ピーポーがこの曲を聴いたときにどんな顔するのか誰か観察させてくれ。
確かにMoonlightなどの昔のハチの匂いを感じる曲は時たまありますがここまでガッツリ『あの頃のハチ』を想起させる曲を書いてくるとは想像できませんでした。
学生の頃に部屋を暗くして一人イヤホンでハチの暗い曲を聴いていた自分がフラッシュバックして体調悪くなりかけた。いやマジで。
この曲を嵐やHNKに楽曲を提供している国民的ソングライターが嬉々として発表するの最高にロックだと思います。これからも末永く狂っててくれ音楽の悪魔。
 
5. ジャイボール / バーバパパ

高校ミュージカル最高峰の球技がここに
全国高校jaiball選手権公演がお盆の時期から始まります
舞台はここjaiballの聖地大阪のバトル公民館
ハードスタイルを武器に勝ち上がって参りましたのは赤コーナー 西松屋山東高校南高北校 全国公演初参加
対する青コーナーは 大分及熊本九州国際経済産業工業学院高校学園 去年の準優勝チームです
さあまもなく戦いのまぶたが切って落とされました

まぶたを切るな。

みなさんは謎に包まれたミュージシャン、バーバパパをご存じでしょうか。
YouTubeにてEDMなどを中心に常識に捕らわれない音で人間の不安をかき立てるような楽曲と、それに対応する自身で作成した狂気を演出する3DCGを用いたMVをひたすらに外部とのコミュニケーションを行わないまま投稿し続ける存在です。あまりにも素性が不明すぎて人間であるかどうかすら疑われている始末。(去年予告なしに突如として開始されたライブ配信にて3DCGで作成されたアバターを介して日本語で地球人と交流できることが確認された)
めちゃくちゃにアングラなクリエイターなのだがその実チャンネル登録者数は60万人を超えている。やっていることのニッチさを考えるとあり得なさすぎる数字。
代表作としてはネットミームの『検索してはいけない言葉』に選ばれたり、HIKAKINがMVを再現したことでおなじみの【ウ”ィ”エ”】という、音楽に合わせて金〇恩に似た口と目が縦に曲がる男が、亜空間に閉じ込められた教室と思しき場所でコサックダンスのような踊るひたすら不気味な動画だろう。文字に起こしてみるとこんなのが4000万回も再生されてるのヤバすぎだろ。人によってはショッキングな映像と感じるかもしれないのでサムネを張るのは控えておきます。気になる人は調べてみてください。犬かわいいよね。
そんなバーバパパが2022年お盆の時期に投稿したのがこのジャイボール。
ストーリーとしては大阪のバトル公民館で行われるあの超有名国民的ミュージカル球技である『ジャイボール』の全国公演大会がjai吹奏楽部の演奏に乗せて生中継されるというものである。は?
弾力のある蜂の巣ボール(弾力のある蜂の巣ボールってなんだよ)を使う、どうすれば勝利なのか、そもそも勝ち負けが存在するのか、それ以前にスポーツなのかすら定かではないこのジャイボール。ただし実況が試合中「アタックフェーズを使い果たします」と語っていることからある程度のルールや制限は設けられているっぽい。ちなみに聞いてわかるとおり楽曲は吹奏楽楽器では当然鳴らせない音のみで構成されています。いやマジでなんなんだこれ。
何一つとして理解は追いついていないのに、選手たちの熱い想いや手に汗握る試合展開に謎にハラハラしたり、お互いのチームがボールを保持したタイミングに併せて楽曲に使われているサウンドが細かくその都度変わったり、バトル公民館を飛び出して街の中で無重力バトルを繰り広げられる間それに対応して楽曲のリズムが崩されて浮遊感を演出したり、終盤そもそも試合内容の予測に足る情報が何一つ掴めていないのに関わらず、なぜか予想を裏切る(と頭にすり込まれている)展開に胸が躍ったりするバーバパパの『まじでなんもわからないのになんかすごいのはわかる』という作風が惜しげもなく発揮された名作である。もう自分でも何書いてるのかわからなくなってきた。
音楽というものはこれほど自由で楽しんでいいのかということを教えてくれるのがバーバパパであるのでもっと人間たちに流行って欲しい。流行るかこんなもん。

動画を見た後はコメント欄やこのpixiv百科の記事を見ると理解が深まると思う。深まるのか????ほんとに???????
6. はじまりのセツナ / 蠟梅学園中等部1年3組

見慣れてない景色がキラリ光った
君が名前を呼んでくれたからだよ
クラスメートじゃなく 友達になりたい
君に思っていたの 密かにずっと

2022年のアニメの話をしましょう。さっきチェンソーマンの話はしなかったので。
特に印象に残ってるアニメは『明日ちゃんのセーラー服』ですね。いやまぁ年明けてから見た作品は本記事ではレギュレーション違反なのであの作品は抜いてって前提ですけど。全人類2022年激やばEmotional最強Animationである『Extreme Hearts』を絶対に見ろ。絶対とは絶対です。
話を戻すと明日ちゃんは『スーパーカブ』の原作イラストを書いている博さんが書いている漫画ということで名前は知っていましたが、アニメが始まるまではほぼノーマークでした。タイトルとイラストからは全く内容を推測できないかったので興味が向かなかった訳ですね。ただ一話見た瞬間『この作品はやべぇ』となったのを覚えています。CloverWorksが強すぎるのもあるけど、その後当然買った原作を読んだときに画力と質感で殴ってくる原作もヤバかったのでなるようになったのだなと思いました。

こいついつも同じこと言ってて芸がないな。オタク辞めたら?
戯言は置いといて、OPソングである『はじまりのセツナ』の作曲者は乃木坂の曲を多く手がけている『杉山勝彦』で、恥ずかしながら僕はこの曲で名前を知りました。
女性アイドルソングというものにめっきり触れてこなかった自分の人生でほぼ初めてといっていい邂逅だったのですが、街やテレビなどから聞こえてくる断片的な音のテイストを知らず知らずにすり込まれていたのか不思議と耳馴染みがあるなぁと感じたのを覚えています。ちなみにジャニーズは親の影響で小さい頃からめちゃくちゃ聴いてたりします。
等身大の感情を煌びやかなユニゾンのメロディーに乗せて楽曲を編む技術は自分にとってかなりの衝撃で、確かに今まで自分が通ってこなかった道だなぁと感じたので2023年はより一層聴いてこなかった音楽に触れていこうと思います。きっと、おそらく……。

 
7. フラッシュバッカー / 結束バンド

光る朝が 朝が
あまりに眩しいからさ
ちょっとさ らしくはない
未来も信じちゃうよ

個人的意見を取り去って2022年話題になった作品と言えば『ぼっち・ざ・ろっく!』であるのは疑いようもない事実でしょう。
僕のTwitterを知っている人は僕が原作1巻を発売日に10冊買っているのも、二次創作として楽曲を作成していることも、そして今現在この作品に対して非常に複雑すぎる感情を抱いているもの周知の事実であるとは思いますが、それでも今冷静になって振り返って見るとこのアニメが世界に『鳴る』意義というものは確実にあったのだろうなと思います。今回は曲について話する場なのでこの辺で。
さて、この楽曲はアニメ本編では使われていないものの、最終話放映直後に公開された詐欺……ではなく本PVにて解禁され話題になった楽曲。
ずっと下を向き、太陽から逃げてきた後藤ひとりが歌う『朝』の歌はこうなるのか。これほどまでにぼっちの心に寄り添ってそれでも新しい景色を見せてくれるような天才的な歌詞を生み出した音羽さんには脱帽するほかない。参った。
サウンド的にもこの楽曲はめちゃくちゃ素晴らしくて、まず、現段階で結束バンド唯一の『バラード』で、ロックという言葉から一般に想起される「ギターと孤独と青い惑星」のような『ギターロック』や、「あのバンド」のような『パンク・ロック』とも違うゆったりとしたテンポで展開していくものです。
現代では曲は短い方が『有利』です。音楽サブスクリプションの収益の仕組みでは多くリピートされやすいテンポが早くて疾走感のあるノリのよい楽曲の『価値』が高くなっています。なので多くの現代人はテンポが速い曲を聞き慣れていて、バラードをあまり聴かない傾向にあり、音楽活動をしていてそれを肌に感じることも少なくありません。もしかしたらそれは言い過ぎと思う人もいるかもしれません。しかしYouTubeSpotifyに否応にも表示される『再生数』を見るとこの傾向は確実にあると考えています。
だからこそ、この曲が多くの人の心を掴んでいるのがとても誇らしくうれしいと感じるのです。ロックの本質はどんな風に演奏するかではなく『何を歌うか』だと僕は考えているので、その本質をより感知しやすいバラードが世界にもっと鳴り響いて欲しいと、日々強く感じています。マジでみんな本当にもっとバラード聴いて欲しい。大音量で泥臭いギターに包まれながらでも歌詞が聴き取りやすくて胸にまっすぐ溶け込んでくるバラードでしか感じられない『エモさ』は本当にあるから。
…………もう少し語っていいですか?
この曲のめちゃくちゃ好きポイントは2番のAメロの途中、こんなちっぽけな僕の〜からのバンドアレンジで、喜多のギターだけが今までと同じリズムを刻む中、ぼっちのギター、山田のベース、虹夏のドラムまでもがそのリズムの軸から外れてそれぞれ轟音を響かせる。これは近頃のロックバンドでは珍しく新しいアレンジ、とまでは言えないものですが、この『崩し』は楽曲を伝える上でのフックとして絶大な効果を生みます。
今までの予想を裏切る音を与えられるとリスナーはハッとして現実に戻されるような感覚になります。「ぼーっと聴いてんじゃねぇーよ!!」という結束バンドからのメッセージとも受け取れます。
しかもこのアレンジ、バンドをやったことがある人ならわかると思いますが、めちゃくちゃ息を合わせるのが難しいです。いつもバンドのリズムを支えているドラムとベースがその軸から外れるとあっけなく簡単に演奏がぐちゃぐちゃになってしまいがちです。でもフラッシュバッカーではいつも支えている虹夏もいなくなって、楽曲を下から支えるのは喜多一人だけになります。この楽曲は厳密には作中曲ではないので本当に結束バンドとして鳴っている音なのか、は議論の余地がありますが(EDソングなど喜多ボーカルではない曲のように、作中世界線に存在しない曲、いわばキャラソンのようなものの可能性もある)
それでも喜多が三人を支えるというのは文化祭ライブを彷彿とさせるようで感情が高ぶるものではないでしょうか。(本当に喜多にこれが出来るのかに関しては一旦置いておくとして……)
そういう部分を想像しながらアルバムを聞き返してみるのも面白いと思いますので是非。

 
8. 一冊のアロー / 櫻川めぐ

君が笑った 空が光った
それは運命で奇跡で
合図だ

積んでるエロゲのOPソングを紹介するの正気ですか???????
ゲームは積んでるけどこの動画は300回ぐらい再生してるので許して。
神曲しか作れない男、堀江晶太が作曲のこの曲ですが、ことごとくエロゲソングの定説から外れまくっていて初めて聴いたときの衝撃がすごかった。
このハミダシクリエイティブ凸を出している『まどそふと』はオープニングテーマに堀江晶太を起用するのがお家芸なのですが、今までの流れからも想像のつかないギターのカッティングとドラムのゴーストノートを多用するミドルテンポのおしゃれ曲調で引き出しの多さに驚くと同時に、歌詞の真摯さがすごい。エロゲソングのクレジットの【作詞作曲:堀江晶太】はもう慣れたけど【ドラム:ゆーまお】はまだ慣れてなくてめちゃくちゃ面白くなっちゃう。
前作であるハミダシクリエイティブはプレイ済みなので作品の雰囲気は熟知していたはずなのにOPだけでハミクリの新しい姿をまじまじと見せつけられた。
タイトルもすごい。この作品はヒロインが全員何かしらの創作活動を生業としているクリエイターに焦点を当てた作品で、自分の精一杯を込めて作り出す渾身の作品と、大切な人への偽りのない正直な気持ちを矢になぞらえて【一冊のアロー】というタイトルとひらめいて やめて また考えて 渾身の一節を編む その一秒を束ねて この一生を込めて 君を想いながら放て!】【キラキラでボロボロなタマシイの矢 夜を越えて 君に向かって ガラクタさ それが何だい 君を世界ごと 射貫いてやるという名歌詞の数々、マジでよすぎる。落ちサビの合図だは何度聞いても痺れる何度も言いますがゲーム本編はまだ起動すらしてません。早くやれ。
最後に前作、ハミダシクリエイティブの布教をして紹介を終わります。

※セールは終了してます
9. Goodbye Innocence / She is Legend
※公式の動画ではありません。

あの日の雪、銀色、きみ、吐く、
息、真っ白、昨日のように覚えてるよ
もうすぐさよならしなくちゃいけないんだよね
ただきみだけ

AirCLANNAD、アニメAngel Beats!などでシナリオを担当している泣きゲーのパイオニア、そしてソングライターとしても活躍する麻枝准がシナリオを担当しているソシャゲ【ヘブンバーンズレッド】
シナリオだけではなく、作中の戦闘BGMとしてやなぎなぎ歌唱のボーカル曲が数多く使われていて、そのすべてが麻枝が作詞作曲担当。
今回紹介するのはBGMとしての扱いではなく、その主人公たちが組んでいる作中バンド、茅森月歌ボーカル担当のXAIと、朝倉可憐ボーカル担当の鈴木このみと、カレンちゃんのスクリーム担当に ayumu(Serenity In Murder)を迎えた劇中を彩るエモーショナルでラウドなロックバンド『She is Legend』の一曲。情報量が多すぎる。作詞作曲はもちろん麻枝が担当。この男メインシナリオもイベントシナリオもほとんど担当しながら毎月イベントボスの戦闘BGM用にShe is Legendの新曲を書き下ろしている。メインストーリーで使われているやなぎなぎ歌唱の曲ももう10曲以上ある。狂ってるとしか思えない。
このGoodbye Innocenceもその一つで去年の水着イベントで発表された曲で、外来生物により人類は衰退し荒廃した世界が舞台なので基本に重苦しい雰囲気になりがちなヘブバンでやっと平和で楽しいイベントを楽しめると思いきや、メインシナリオの展開にめちゃくちゃ関連のあるかなり重めなシナリオになっていて「だーまえお前ええええ!!!!!」ってなっていました。
この曲を紹介させてもらったのはサビのツインボーカルアレンジの素晴らしさを語りたかったからで、XAIと鈴木このみという歌唱力おばけタッグの相性がよすぎるせいで、【ひとつなぎの歌詞を2音ずつ交互に歌う】という普通は絶対やらない奇抜なアレンジを成立させるだけではなく、曲そのものの売りである『切なさ』を演出することに成功している。
作中で実際にこの曲を登場人物たちが作成している時「サビを二人で2音ずつ歌ってみようよ」とギターボーカルの月歌がメンバーに提案するのだがメンバーからはそんなの成立するのか?という当然の疑問が返ってくるシーンがある。俺も当然そう思ったしその時は「はいはい、いつものだーまえの奇抜アレンジね、最初は目新しいけどやっぱり奇抜すぎて印象は結構難があるんだよなー」と高をくくっていたら、シナリオ終盤のライブシーンで度肝を抜かれてしまった。いやこんなケミストリーあるのか??????どちらかというとサビにしては平坦なメロなのにめまぐるしく歌唱者が変わることによってドライブ感が生まれて、その二人で歌っていたメロディーをサビ後半に一人で歌うことによって切なさとか喪失感が付与されている。バックのドラムの攻め立てるようなフィルインもそれに一役買っている。本当に数ミリの掛け違えで破綻する奇跡の組み合わせで成り立っている音楽という印象でShe is Legendの曲で一番お気に入りです。ヘブバン、楽しいし、最近クリアのハードルも下がったからみんなやろう。
10. Lazyroop / 猫又おかゆ

ループループする毎日が
彩りに溢れてくよ
きっと さんざめく花火の側に
香る夢のように
こんな ループループする毎日が
かけがえない宝石のように
いつか 大切に思えるのなら
週末の夜も 煌めいて
憂鬱な夜も 愛しいね

2022年は一年を通してVtuberにハマった一年でした。
もう二度とハマることはないし、近づくこともないと思っていたコンテンツ、それは言ってしまえば自分の心を守るための生存本能のようなものだったと今では思いますが、日々の中にそれがない生活というのはもう考えられないぐらいになってしまいました。ある意味ではそれは退化である側面もあるかもしれませんが、それでもこの一年は自分にとって必要な一年だったような気がします。
去年行われた猫又おかゆのライブで最後に歌われたこの曲はニアやフロムトーキョーでおなじみの夏代孝明が作詞作曲を担当していますが、夏代さんらしいキャッチーなメロと透き通るような雰囲気が特徴の曲です。ってか歌詞のおかゆの解像度が高すぎる憂鬱な夜も愛しいねで曲を締めるのめっちゃ好き。
もちろんもぐもぐYAMMYもめちゃ好きだけどあの曲は2021年の曲だから……知ったのは去年ですけど……。知らない人がいたらこっちも聴いてください。毒気がある女の子ってみんな好きでしょ。
ピノキオピーの毒気とおかゆ人間性の親和性が高すぎる。かわいいサウンドとポップなメロに眉をひそめられそうな歌詞を添えるの天才過ぎる。そしてそれを受け入れる懐を持つ猫又おかゆさんの素晴らしさよ。
 
ってな感じで去年印象に残った曲を語らせていただきました。気になる楽曲があったら是非聴いてみてください。今年も沢山の音楽に出会えるようにアンテナを高く張っていきたいとおもいます。
 
 
 
2. 境界線 / amazarashi
3. インザバックルーム / syudou
4. ETA / 米津玄師
5. ジャイボール / バーバパパ
6. はじまりのセツナ / 蠟梅学園中等部1年3組
7. フラッシュバッカー / 結束バンド
8. 一冊のアロー / 櫻川めぐ
9. Goodbye Innocence / She is Legend
10. Lazyroop / 猫又おかゆ