Three Months Journey.

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入間人間の『やがて君になる 佐伯沙弥香について』を読んだネタバレ無しの感想

乱文ですが、あなたが作品に触れるきっかけになれば幸いです

原作『やがて君になる』1巻を初版で買い、生きている中で一番作家として強く意識しているのが入間人間という僕がこの作品を読まない理由はおそらく地球を一周したって見つからなかったと思う。

さて内容については《至上》という他ない。『佐伯沙弥香について』というタイトルの通り、彼女という人間が形成されるまでの、いや、おそらくまだまだ生きている中で形が変わることもあるだろうが。しかし、その根幹とも言うべき『感情』がこの本読むことによってこれ以上ないほど見せつけられる。思い知らされる。この作品を読んでいるか、いないかによって原作であるやがて君になるの佐伯沙弥香の感情への解像度がまるっきり変わる。書かれている文章の一字一句全てがやがて君になるという作品そのものをさらに高めるために存在していると言っても過言ではないだろう。原作ファンは、安心してこの本に手に取って欲しい。

入間人間は言うまでもなくノベライズ作家としても非常に優れている。しかし原作を大切に扱うが故、自分の持ち味や、彼の場合おそらく多くの彼のファンが求めているであろうクセの強い作風を存分に活かしきれていないという意見がちらほらある。その意見はとてもよくわかる。今回も原作の雰囲気を一つも壊さず、とても綺麗に佐伯沙弥香という人間の奥底まで描いている。それが僕も含め普段入間人間に感情や心臓を叩きつけられて虐げられている読者からすれば物足りないのは当然である。
しかし『やがて君になるという作品を借りて入間人間が描くべきもの』としてこの作品はやはり正解だと僕個人としては思う。『やがて君になるという作品を入間人間が描いたら』という前提では不完全だが今回はそうではない。木の幹ではなく枝を描いたに過ぎず、枝が太過ぎるとそこから折れて地面に落ちてしまう。それでは本末転倒なのだ。

しかしあとがきにあるようにもし仮にこの作品に『その先』があるのだとしたら、やがて君になると言う作品がこのノベライズも通して大きく成長しさらに大きな大樹と成ったら、もしかしたら入間人間の描くやがて君になるが読める日が来るかもしれない。今はまだその時ではないのなら、僕はその日が来ることを信じていたい。もちろん、やが君の原作のファンとしても。

とにかく『やがて君になる』のファンでこの作品を読み、初めて入間人間という作家に触れた人は同じく入間人間仲谷鳰がタッグを組んだ『少女妄想中。』を読んで欲しい。きっとあなたの心に爪痕を残す作品になると思うから。

僕からは以上になります。