Three Months Journey.

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流行に流されることのないあなたが映画『君の名は。』を見るべき3つの理由。(ネタバレ無し)

秒速5センチメートル』を始め、素晴らしい映像美を作り出すことが得意な新海誠の最新作、『君の名は。』が現在全国映画館にて公開中であること、そして、夏休み終盤に公開された1アニメ映画タイトルでしかなかったその作品が、今日本でとんでもない旋風を起こしていることを知っている人も多いと思う。

 

 この作品を目撃し、その物語に魅了された人も少なくないだろう。だが、僕はこの作品はより多くの人に見られるべき作品だと、そう、強く感じた。

 

 「まだ見てない」「見るか悩んでる」「見るつもりはない」「なんかこれだけ持ち上げられてると見る気なくすわ」「なにこのブログ、ステマくさ」「新海誠って雰囲気だけだよな」「RADじゃなかったら見たわ」

 ——僕はそういう人にこそ是非、この作品に出会って欲しいと感じる。

 

 さらに持ち上げると逆効果なんじゃ……、と思われるかもしれないが、1人でも、「しゃーねーな、そんだけ言うなら見てやるよ!面白くなかったら金返せよ!!」となる方がいれば僕はすごく嬉しい。

 

 では、散々御託を並べることになると思うが、どうか最後までお付合いいただけたら。

 

 

 理由1 無視できない紛れもない反響。

 現在、君の名は。とんでもない反響が起こっている。
 興行収入は公開から1ヶ月もかからず100億円を越え、10月4日付で128億円、観客動員数1,000万人を記録。興行収入ランキングも公開から6週連続で1位という化け物映画と形容するものやぶさかではない。まったくこの期間に放映がスタートした他の映画からすればたまったものではないだろう。
 しかし、その数字がどれだけすごいものかよく分からない、という人のために少しだけ解説すると、いままで日本で公開された全てのアニメ映画、その中で100億円という大台を超えた作品は、君の名は。を除きたったの8作、その全てがジブリもしくはディズニー映画である。そこにその二つのビックネームに比べたらほぼ無名と言ってもいい。「新海誠」とかいうなんの後ろ盾もない男が食い込んだのだ。
 日本人でジブリ、ディズニー、という言葉を知らない人はほとんどいないだろうが、君の名は。の公開前、新海誠という名前は、オタク文化の中ではある程度有名でも、一般には全く周知されていなかったと思われる。実際新海誠監督の前作、言の葉の庭は興行収入1億5000万円、君の名は。これの100倍の成果。いや、未だに伸び続けている。これは誰もが快挙と言わざるをえない現象といえるだろう。
 それだけ多くの人に見られている。それだけでも面白さは折り紙付きだ。もちろん1人1回しかみないでこの記録を出すのは不可能であろう。それだけリピーターを生み出しているという事実も加味して、この作品は大多数の人間の心を打つ作品であることは保証されている。

 

 理由2 この作品は予告編で判断するべきではない。

 君の名は。を見ない理由の一つとして、「予告編で満足」という意見がある。
 正直気持ちはよくわかる。予告編というのはその映画の「面白いシーン」をまとめて作られ気味な傾向がある。そりゃあ、予告編というのは「この映画が面白いですよ」と伝えるためのものであるのだからその作られ方は正しい。その映画の盛り上がりどころがまるまる予告編で流されていることも、まあ、少なくはない。
 しかし、その「面白いシーン」を予習して映画を見に行ってしまうと、「期待した割になんだかしょぼかったな」となってしまうこと、皆人生で一度ぐらいはあるのではないだろうか。だからこそ意識して予告編を見ないで映画を見に行く、というスタイルの人もいるのではないだろうか。
 さて、そこで君の名は、の予告編を見てみよう。
 ………………予告編だけでかなりの満足感を得られる。
 これはどういう作品なのか、それが非常にわかりやすく編集されている。ほほぅ、面白そうだな!と思う。だが、そこで映画通の人間は一度考える。「いや、まてよこれはデジャヴ。映画館に行ったらがっかりしそうだな……」と。そう思うのも、もしかしたら自然な流れかもしれない。
 しかし、この君の名は、に至ってはその心配はない、と断言できる。
 それはなぜかというと、君の名は。の予告で語られているのは映画のほんのプロローグに過ぎないからである。
 予告編を見る限り、『心が入れ替わった男女のラブコメ』という今まで何度見たことか、と思う概要なのだが、この作品全体でみると、それはただの「舞台装置」でしかないのだ。
 この作品にとってネタバレが命取りであるため言及は避けるが、予告編以上の満足度が詰め込まれている作品である。ということは保証できる。

 

 理由3 この作品はただ「流行っている」わけでない。

 さて、最後の理由。
 君の名は。を見ない理由で一番多いのはこれなのではないだろうか。
 「なんだか、持ち上げられすぎて気味が悪い」
 そりゃそうだ。現に僕もこんな長ったらしい御託を並べて精一杯持ち上げている。そりゃオタクキモ……これだからキモオタは……となるのも仕方がない。いや、仕方ないってなんだ。悲しすぎるわ。いや、傷付くからキモオタとか言わないで……。
 しかし、実際問題これほどの爆発的なヒット、背景に何か大きな力が働いているのではないか。と思ってしまうのも仕方がない。それに見た人全員が全員間違いなく心が打たれる作品など存在しない。人間は十人十色であるのだからそれも当然だ。だから本当に正直な話をすればもしかしたら、今これを読んでいるあなたに「君の名は。」という作品が合わない可能性だってゼロでは、ない。
 しかし、僕はここ最近の流れをみてこの作品がただ流行に流されて数字を伸ばしているとは思えないのだ。
 「中高生が騒ぎ立てている声が大きいだけ」とか「一部の好きな人が騒ぎ立てているだけ」とかそう思うのも無理もないのかもしれない。だが考えてみてほしい。
 深夜アニメとは違いアニメ映画というのはそれだけでもう敷居が高いのだ。
 中高生が「この深夜アニメがすごい!」とかそんなのいつもいつも言ってるじゃん。それで実際見てみても、正直面白くないよね。と思うかもしれない。
 深夜アニメは「流行れば」だれでもテレビさえあれば観れるだけあって、数字を伸ばすことは可能。しかし、タダですきなだけ観れる深夜アニメとは違い。映画はまずお金を払わないと見れないのだ。中高生であれば1500円払わないとまずその映画を見ることすらできない。中高生にとって1500円あればどれだけのことができるだろうか。しかもリピーターは、全く同じ内容の映像を、来場者特典も全くない状況で繰り返し見ている。中高生に限っては騒ぎ立てているとしても、「少ないお小遣いを使い騒ぎ立てている」それだけでも大分違う。
 1,000万という数だけ、この映画に対して1500円ないし1800円という額を払っている人間がいる。その現象をただの「流行り」と形容するのは少し乱暴なのではないだろうか、そう僕は思うのだ。
 それに人間はお金を払うと、物事を批判をしやすくなる。お金を払っただけ、文句をいう資格があるからだ。決してこの作品に寄せられる「批判」はゼロではない。しかしそれを覆い隠すほどのお金を払った人間の「賞賛」があることもたしかなのである。
 そう、たくさんの人に一度見てみてほしい、と。僕は心から願う理由がそれだ。
 1800円というお金を払うには十分な作品であると僕は感じているし、それを複数回払ってもいいという人間がかなり多数いることも真実。
 そんな作品を流行に流されないからという理由で、まったく触れないというのはかなり「もったいない」と思うのだ。

 


 以上が、僕が思う流行に流されることのないあなたが映画『君の名は。』を見るべき3つの理由だ。

 

 

 

 さて、正直文章が気持ち悪すぎてここまで読んでくれる人などいないのではないか、と思ってしまうが、最後に一つだけ。

 

 僕はまず作品が「持ち上げられている」という表現自体にあまり納得がいかない。

 

 古来から他人に「おすすめ」する。という行為は、我々人間だけができる素晴らしい文化であるのに、いつのまにかそれが「ステマ」であったり「ゴリ押し」であったりする言葉に変換されていき、今となってはおすすめという言葉が使われること自体少なくなった気がする。
 自分が面白いと思ったものを他人に教えること、その行為自体が悪しき風習のように扱われてしまう今の現状にとても悲しみを感じてしまうのだ。
 「おすすめ」をする側も、「いやでも面白いと思うのは自分だけかもしれないし……」と萎縮してしまう始末。
 僕はもっと気軽に、深い意味を持たせずに、他人に好きなものを伝える。そんな風に思える人が増えてほしいと日々、願うばかりだ。