Three Months Journey.

アニメとか漫画とか小説とか、好きなものについて書きます

全人類『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』を見てくださいというブログ。

どうもみなさんおはようございますこんにちはこんばんはおやすみなさい。これを書いてるのは深夜です。眠い。

2018年秋アニメが始まりましたね。今期アニメはSAO三期だったり禁書三期だったり近年を代表する百合漫画のやがて君になるだったり、期待できるアニメが多くてめちゃくちゃアツいクールですが、そんなバケモノアニメが揃ってるからこそそれに負けないぐらい輝いてほしい素晴らしい作品をみなさんに観測してほしいと思ってブログを書きます。

タイトルの通り『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』です。

この作品の原作はアニメ化もされているサムゲタンとか言うなさくら荘のペットな彼女』の鴨志田一(著)×溝口ケージ(イラスト)のタッグで描かれている電撃文庫から出版されているライトノベルシリーズです。

現在既刊8巻、10月10日には9巻が発売される人気シリーズで、毎巻『青春ブタ野郎は○○○○の夢を見ない』の○○○○の部分を変えて、ナンバリングがされていないのが特徴です。
7巻で第1章とも言える一区切りの話が終わり、現在は第2章の物語が始まったばかりというところですね。今後も非常に楽しみ。

 

今回のテレビシリーズでは1クールで
第1巻青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』
第2巻『青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない』
第3巻青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない』
第4巻青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない』
第5巻青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない』までが描かれ、

そして来年には、
第6巻青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』
第7巻青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない』の劇場アニメ化が決まっています。


この作品で一番重要なのは『思春期症候群』というワードです。
作中では症候群という名前通り病気の一種という扱いをされており(もちろん架空の症状です)簡単言うと『理論的、常識的には考えられないような現象が思春期特有の心の不安定さを引き金に発生する』というもの。
誰かの心の声が聞こえたとか、自分の未来を見たとか、誰かと体が入れ替わったとか、そういう不思議な現象に苛まれ、決まってそれは今の自分の悩み事だったり考えていることに関連している。
そんな現象が都市伝説のようにまことしやかに囁かれいて、しかしほとんどの人間や大人は本気にしていない。という舞台設定。


第1巻のヒロインであるバニーガール先輩こと桜島麻衣は天才子役、そして成長してからも有名女優として名を駆せ、とある事情で芸能界を引退した後も常に誰かに注目されていた。そんな毎日に疲れ『自分のことを誰も知らない世界に行きたい』という悩み事を抱え、それが『周りの人間が自分の存在を認識しなくなっていく』という思春期症候群を引き起こします。
最初は関係が薄い一部の人たちしか効力を発揮していなかったその症状も日時が流れていくとともにどんどん広まっていき、買い物すらできなくなってしまう。
そんな時出会った思春期症候群ととある縁のある主人公、梓川咲太が、彼女と共にその現状を好転させるすべを探っていく、というストーリー。

 

 

タイトルのせいでよくあるテンプレラノベという印象受けがちだが、主人公の人間性は独特で真摯、物語は先に進めば進むほど深みを増していき伏線もそこら中に張り巡らされている。という非常に完成度の高い物語になっています。


さて次は軽く、各ヒロインの解説をしていきたいと思います。

 


『驚いた……君にはまだ私が見えてるんだ』
バニーガール先輩:桜島麻衣
思春期症候群:他人から存在を認識されなくなる
朝ドラで爆発的にヒットした天才子役、しかしそれだけに止まらず成長した後も国民的人気女優の名を欲しいままにしていたが、ある日突然の引退宣言を行い芸能界から身を引いた。学校ではいつも一人で過ごしている。

 

 

『どうして明日になってくれないの!?』
プチデビル後輩:古賀朋絵
思春期症候群:次の日が訪れない
ひょんなことから知り合った咲太の学校の後輩、イマドキ少女。人間関係を円滑に進めることに執着しておりスマホのメッセージアプリは即返信する。博多出身でたまに博多弁が出る。ある先輩から告白される。

 

 

『私は私が嫌いなんだよ』
ロジカルウィッチ:双葉理央
思春期症候群:××が××いる
咲太の数少ない友達の一人。一人きりの科学部員。背は小さいが胸が大きい。頭が非常によく理屈に合わないことは苦手。咲太との共通の友人国見とも仲がいい。顔がいい。ある人に片思いをしている。

 


『お姉ちゃんのこと、全然わかってなかった……』
シスコンアイドル:豊浜のどか
思春期症候群:体が入れ替わる
咲太と同い年の金髪ギャルメイクの新人アイドル。スイートバレットというアイドルユニットに所属している。××××の妹。好きなものは桜島麻衣。実は頭がいい。

 

 

『お兄ちゃん、今日はかえでから重大発表があります』
おるすばん妹:梓川かえで
思春期症候群:心の傷が身体に影響を与えてしまう
咲太の妹。ネットでいじめられSNSの誹謗中傷を見ると体に傷が現れてしまう。今は学校に行かず家で過ごすことによって症状は現れなくなっている。お兄ちゃんが大好き。××の××が無い。

 

 

 

『ずっと、わたしにとっての夢でした』
ゆめみる少女:牧之原翔子
思春期症候群:????????
咲太が中学生の頃に出会った初恋の女子高生と同姓同名の中学生。捨て猫を発見した時に咲太と出会う。その猫を飼いたい気持ちがあるが親にそのことを打ち上げられず咲太の提案により一時的に梓川家に預け、猫を飼う練習のために頻繁に咲太の家に遊びに来るようになる。

 


『わたしはね咲太君。大好きな人には幸せになってほしいんです』
ハツコイ少女:????????

思春期症候群:????????
咲太が中学生の頃に出会った初恋の女子高生。実は××××××××××××。××××××××××××××××××××××××。

 

 

 

解説、とは。
後半、ネタバレを避けようとしたら何も書けませんでしたが、少しでも気になったらぜひアニメも映画も最後まで楽しんでほしいです。
欲をいうなら原作もぜひ読んでほしいですがひとまずはニコニコ動画で無料配信されている1話をみてください。そしてどうか3話までみてください。きっと何かが届くと思います。

どうか、どうか青春ブタ野郎シリーズをよろしくお願いします。

 

 

www.nicovideo.jp



こじつけ百合オタクこそBUMP OF CHICKENを聴くべき理由

BUMP OF CHICKENというバンドをご存知だろうか。


多分これを読んでいる人のほとんどが名前くらいは聴いたことあると思うが、よく

 

『あぁ!天体観測のバンドでしょ?!』

 

と言われるバンドである。

 

まあその通りであるので別に異論反論はないし天体観測は紛れもなく名曲なので特にその状況について語るつもりじゃないが…………今は僕が何が言いたいかがわかる人間だけがわかった気になって静かに頷いてくれていれば嬉しい。 

真面目に解説すると千葉県佐倉市で出会った幼馴染のホモ仲良し4人組で1996年に結成された今年もう活動22年に差し掛かろうとしているいい歳したおっさんたちのバンドである。
そう、多くの若者バンドマンたちを「前見えてんのそれ?」といいたくなるオールド・イングリッシュ・シープドック(画像検索)みたいな髪型にしたり、ベストアルバムやライブDVDもリリースすることをかたくなに嫌がったり、むやみにテレビに出ないことがロックバンドとして正解だという今も謎に充満している雰囲気の要因の一つになったり、客が気に食わなければ演奏を中断し曲の解釈違いをステージの上でライブそっちのけで正したりしていた、尖っているロックバンドの代表として時代を支配したバンドも(※イメージには個人差があります)もういい歳したおっさんなのである。メンバーは来年で40歳、まじかよ俺もびっくりだわ。

まぁベストアルバムも出したし今はライブDVDなんかばんばん出しまくってるし王様のブランチでもんじゃ食べるロケしたりするけど。かわいいかよ。

 

 

 

さて、スタジアムライブを開けばたった2日間で14万人を動員してしまう、もうすっかり国民的バンドとなった彼らですが、今回はそのバンドの海よりも深く空よりも高い魅力を皆様に懇切丁寧に解説する気など一ミリもなく、

 

 BUMP OF CHICKENの楽曲がどれだけ百合オタクのこじつけ解釈と親和性があるのかを、正史ガン無視の妄想オンリーで語っていきます。

 

真面目なBUMPファンが読んだら非常に憤慨する記事だと思うので冗談半分で読んでいただけるとたすかります。というより多分真面目な百合オタクも怒ると思う。

「こじつけなんて許さん!アーティストが思う楽曲像が正義なんだよ!」と憤る方はもちろんいると思いますが、これは何故こじつけ解釈と親和性が高いのかの理由にもつながってくる話ですがBUMPの楽曲の歌詞の特徴として描写をぼかすことが多いのです。
これは藤原の自分たちの曲がリスナーの人生のBGMになってほしいという想いから敢えてそういう形をとっていて。例えば藤原はラブソングとして歌詞を書いてはいなくてもその曲を聴いたどこかのカップルがこれは自分達の曲だと思って大切なものになるならそれはそれで正しい姿であり、望まれた形なのであると語っています。
そんな風に勝手に僕たちがバックグラウンドを組み立てて《これは自分のことを歌った歌だ》と解釈してもらえるようにあえてどんな年代でも性別でも関係性でも当てはまるように、情景を確定させてしまうような断定的な言葉を避けて作詞をしている。

なのでそれを僕らがイメソンにするのは当然の流れなのである。もちろん当然ではないのでこのブログ書いてる奴は頭が沸いてるんだなぐらいに思っておいてください。

 

これは、割とファンじゃない人間の中でも知られているかもしれない話ですが初期BUMPの楽曲に『アルエ』というものがある。1枚目のアルバムFLAME VEINというアルバムに収録されている曲で普通に聴くと内気な少女に自分に心を開くよう語りかける曲だが、実際はボーカル藤原が新世紀エヴァンゲリオンの登場キャラクター「綾波レイ」に本気で恋をして作ってしまった曲である。

アルエというタイトルはアールエー→RA→レイアヤナミ綾波レイからきている。


《僕の大切なアルエ 一人で見ていた夕焼け 僕もいっしょに見ていいかい? 僕もいっしょに居ていいかい? / ボクノタイセツナアルエ 本当はとてもさびしいんだろ 僕はいつでもそばに居る 僕がこれからそばにいる》


ご覧の通り、つまり藤原基央綾波レイの夢男子ということだ(は?)なのでやはりそのような文化に理解のある彼らが作った音楽を僕たちがイメソンとして嗜むのも自然の流れである。もちろん自然などではないのでこのブログ書いてる奴は取り返しがつかないほど脳みそが腐ってるんだなぐらいに思っておいてください。

 

さてそろそろ調子乗ってるとブログが燃え上がりそうなのでいい加減に本題に入っていこうと思います。
どんな形で楽しむのであれ、彼らの曲は素晴らしい楽曲だらけなので、少しでも興味を持っていただけたらと思いこのブログを書いています。CDを買おう、そしてあわよくばライブにいきましょう。

 

 

 

 《 普通の触れ方は知らないから 戸惑っていたら触れてくれた手に どれだけ夜をくぐり抜けても ずっと冷めないままの熱が 脈を打つ / 君がいるそれだけで 命の全部が輝く 凍りついた心に その鼓動が響き火を灯す わからないままでも側に 君の側に 一番近くに 》 8th ALBUM『Butterflies』より『ファイター』

完全にクラスで浮き気味の内気の少女に世間体を気にせず毎日話しかけてくれる活発系女子の百合じゃん。

まぁこれは漫画『3月のライオン』のために書き下ろされた楽曲なので実際は完全に零くんとひなたちゃんのことを歌っている歌詞なんですがそんなことは今関係ねぇ!!
いや、みんな推しカプに一組みは絶対これいるでしょ。想っている相手が存在するだけで命の全部が輝くんですよ。""わからないまま""でも君の一番近くにいるんですよ。完全に"""解ってる"""歌詞ですこれは。


はい、こんな感じで書いていくので非常にバカな記事です。どうぞお付き合いください。

 

 

《 出来るだけ離れないでいたいと願うのは 出会う前の君に僕は絶対出会えないから 今もいつか過去になって取り戻せなくなるから それが未来の今のうちに ちゃんと取り戻しておきたいから 》 6th ALBUM『COSMONAUT』より『宇宙飛行士への手紙』

はーーーーーーー尊いかよ。

推しカプの"くっつく前"まで想いを馳せてしまう百合オタクも少なくないと思いますが、これはそんな状況にぴったりの楽曲です。どれだけ一緒にいても言葉を交わしても触れ合っても出会う前のその人にはもう二度と出会えないんですよ。幼馴染百合もいいですが、高校入学して新たに出会って関係性を育んでいく百合もまたいい。

 

 

《 今 私が泣いていても あなたの記憶の中では どうかあなたと同じ笑顔で 時々でいいから 思い出してね 》 7th ALBUM『RAY』より『友達の唄』

みんな大好き負けヒロイン百合です。

 タイトルからわかるようにこれは『友達(にしかなれなかった女)の唄』です。誰がなんと言おうとそういう唄です。これが俺の""""現実""""であり""""世界""""だ。ドラえもん?リルル?うるせぇ!!!!!!(リメイク版映画ドラえもん鉄人兵団の主題歌です)

 

 

《 僕を無くしてもあなたでいられる それでも離れずいてくれますか ただその掌で撫でてください それだけで心を守れる 》 6th ALBUM『COSMONAUT』より『66号線』

リズと青い鳥、主題歌。

……やめて……石を投げないで、いや、ごめんって。
実際は藤原がBUMPのプロデューサー(男)に向けて書いた歌らしいですが、これでもラブソングじゃないって言い張るBUMPの図太さは見習いたいものがある。

 

 

《 君の生きる明日が好き その時隣にいなくても 》7th ALBUM『RAY』より『グッドラック』

推しの負けヒロインに言わせたいセリフNo.1

いや、こんなセリフを斉藤恵那とか露崎まひるとか菱川翠玉とかに言われたら僕の精神が持たないので正直言って欲しくないですが、言わせたい(支離滅裂な思考・発言)

 

 

《 僕は君を信じたけど 君が消えたらどうしよう 考えると止まらないよ 何も解らなくなる / いつか君と離れるなら いっそ忘れることにしよう 出来るのかな 無理だろうな 離れたくないな / 僕は君と僕のことを ずっと思い出すことはない だって忘れられないなら 思い出にできないから / ねぇ怖いよ 止まらないよ 上手に話せやしないよ 君は僕を信じてるの 離れたくないな / 見えなければ 死ななければ だけどそんなの君じゃないよ 僕は嫌だよ 君がいいよ 離れたくないな 》 5th ALBUM『orbital period』より『飴玉の唄』

クソデカ激重感情。

Cメロ丸々書きましたが完全に病んでます。が、BUMPとしてはわりと正常です。これを30歳そこらの人間が歌っていると思うとある意味興奮する。もちろん推しカプに当てはめても興奮する。百合ップルみんな口にしないだけでこれぐらいのこと思ってるでしょ(は?)

 

 

 

さて、ここまで読んでくれた人はなんとなく察しがついてると思いますがBUMPの楽曲は一般的なラブソングで多い思い出や出来事などの『体験』についての歌詞ではなく、僕と君という『関係性』にフォーカスを当てた歌が非常に多いです。そう、言葉選びそのものに世間一般的に百合作品で重要視されているであろうもの人間と人間の間にある『感情』が重視されています。これが百合オタクがBUMPを聞くべき理由の二つ目というわけです。もはや藤原基央が百合オタクな可能性すらある(ない)。ちなみにベースの直井由文は今年を代表する百合映画『リズと青い鳥』を履修済みです。まじかよ。

 

 

みなさんもぜひBUMPの曲を聴いてお気に入りのイメソンを探してください。そしてついでに彼らの曲の懐の深さを純粋に感じ取っていただければ幸いです。
懐が深いからこそ、様々な無理のある解釈も包み込むような優しさで溢れた曲が生まれるのです(曲解)
最近は一般向けになりすぎてつまらなくなったと思われがちですが、そんなことは全くなくじっくり聞くとさらに味わい深くなっているBUMP OF CHICKENをどうかよろしくお願いします。

 

 

 



P.S.最近の曲を中心に紹介しましたが、物語調の曲も素晴らしいです。『K』は絵描き(女)と猫(メス)と恋人(女)のトライアングル百合ソングですし、『かさぶたぶたぶ』は君(女)とかさぶた(メス)とあの子(女)のトライアングル百合ソングだと思って最近僕は聴いてます。かさぶたのメスってなんだよ。

 

 

 

 

僕らは皆不幸であるという幸福 - CIVILIANというバンドについて -

音楽に関しても何かブログを書いてみたいなと思ったので。

 

もともと僕は、って言っても最近はあんまり仕事がないのでご無沙汰ですが、知り合いのバンドやミュージシャンの方と関わって音楽ライターの真似事をしていたりしていたりしてます(いないとは思いますがこれを読んでいる方で音楽やっている方がいたらお仕事ください)


そもそもこのブログも布教のために始めたので「じゃあ、お気に入りの音楽について布教しよう」と思い、今回は一つのバンドについて紹介してみようと思います。

アニメとかの話題じゃなくてごめんなさい。ご覧の通り雑多なブログなので興味ある記事だけ読むぐらいのスタンスで楽しんでいただけると嬉しいです。でも全部読んでくれたらもっと嬉しいです。

 

さて、タイトル通り今回は『CIVILIAN(シビリアン)』というバンドについて、そしてそのバンドが去年リリースした『eve』というアルバムに沿って話していこうと思います。


……しかしその前に絶対語っておかなくてはいけないことがあります。それはLyu:Lyuというバンドの存在について。
そもそもこのCIVILIANというバンドはLyu:Lyuというバンドから『改名』したものです。
文学少年の憂鬱、ハロ/ハワユ、サクラノ前夜など多くの名ボーカロイド曲を生み出してきたボカロP『ナノウ』の本名名義『コヤマヒデカズ』をフロントマンとして、ベースの純市、ドラムの有田清幸の三人でLyu:Lyuという名前で活動をしてきました。

 

しかしそのバンドではフルアルバムを一枚しか出すことができませんでした。そう、出すことができなかったのです。世間や周りの人間からの評価が低迷し、本人たちの意思とは反して2枚目以降のアルバムを出すことが出来ず足踏みを踏む毎日。想像で補うことしかできませんが、その日々は三人にとって穏やかなものではなかったのでしょう。誰が悪かったとかそんなものを考えてももう意味がありません。もしかしたら彼らの楽曲が至らなかったのかもしれない、もしかしたら事務所の人間の聞く耳がなかったのかもしれない、もしかしたら僕たちリスナーの支えが足りなかったのかもしれない、でもそんなこと結局誰にもわからない。
曲を作っても作ってもそれが僕らリスナーに届かずに闇に消えていく、それが苦しくないわけがないし、ずっと昔から応援してきた僕は彼らがそんな状況に置かれていたという事実を知った時、本当にやるせない無くて怒りとか切なさとかそれ以外にも言いようのない感情に囚われるしかなかったことを覚えています。


彼らのそんな地獄のような状況に一筋の光が降り注ぎ、事務所を変え、タイアップなど周りの理解も獲得し、彼らはCIVILIANとして新しい一歩を踏み出すことになりました。

 

テレビやラジオで毎日のように流れてくる音楽は、結局は『評価されることができた音楽』であり、この世界にはその何倍も、いや、何千倍もの『評価されなかった音楽』が溢れています。
現代『良いもの』であれば必ず評価されるわけではありません。音楽も、漫画も、小説も、アニメも、どれだけ自分にとって心を打つ素敵なものであっても誰かにとってはそれは価値のないものかもしれないし、そもそもそのほとんどが『名前』すら認知されず消えていきます。

 

そんな『世界にとっての価値』になれなかったLyu:Lyuというバンド、僕は埋もれていいはずのものではないとずっと信じてきましたし、そしてこれからもこのCIVILIANというバンドがより多くの人の心を打つことを信じてこの文章を書いています。

 

好きじゃなかったらもう聴かなくていいです。
でもどうか一度『好きかどうか』を判断してほしいです。それが一番の望みです。

 

辛気臭い話になってしまって申し訳ありません。
前書きが長すぎるのはダメなブログの典型的な例ですね。
さて、彼らを知らない人はじゃあそもそもそいつらはどんな音楽をやってるバンドなんじゃい、と思う人もいると思うのでまずはその辺りを紹介していきます。

 

《 平凡な毎日ですら 今の僕にはとても困難です / 椅子から立ち上がる気力さえ無い 呆然と宙を彷徨って / 「作り笑いが嫌だ」なんて とんだ贅沢言ったもんだなぁ / 作り笑いすら出来やしないよ さあ今日は誰を憎んで過ごそうか 》 
アノニマス / Ly:Lyu

www.youtube.com

 

Lyu:Lyu時代を代表する一曲のひとつの歌詞です。イントロが終わって、最初の一発目のAメロでいきなりこれが歌われます。こんなバンド、なかなかいません。
一言で言うと彼らの音楽を一言で言い表すならば『社会不適合』がキーワードだと僕は思っています。
基本的にネガティブな歌詞であり、暗い曲調であり、ギターも歪んで、昼間の情報番組で流したら苦情がくるんじゃないかぐらい、日に当たるようなバンドではありません。
確かに誰からも褒められるような夢や希望で溢れた音楽は人々の心を豊かにし、そして背中を押してくれます。このバンドにはそのような働きは期待できません。

 

では、果たして彼らの音楽は『ダメな音楽』なのでしょうか。

 

もちろん人の数ほど答えはあるとは承知の上で、僕は『否』だと思います。
そもそも、人間はみんながみんな『社会に適合』できているのでしょうか。自分という存在を100%社会的に正しく適合できていると断言できる人って、もしかしたら一人もいないじゃないでしょうか。
毎日自然に笑顔になって、楽しいことだらけで、やりがいのあることで溢れていて、意味のある行動だけを続けて、そんな人間がいるんでしょうか。
対人関係でも仕事でも家族でもなんでもいいです、どこかで『折り合い』をつけて自分が生きていると思ったことはないでしょうか。
僕は世界が僕たちに対して優しいと感じたことは一度だってありません。常に試練が目の前に立ちふさがって、大切な人がいつだって自分を大切にしてくれるわけではなくて、誰から悪意を向けられることは一度や二度ではなくて、明日には何の前触れもなく災害で命を落としてしまう可能性すらあって……多分、僕らはそういう優しくない世界の中で自分の好きなものや大切なものを頑張って見つけてそれを目印に歩いているのだと思います。
だからこそ僕たち人間は『元気が出る明るい曲』を求めて、読んでいて『楽しくなれるような物語』を探して、一緒にいると『楽しい友達』に会いたくなって、それらのおかげで笑えているのではないでしょうか。
もちろん世界は素敵なものに溢れているとは僕も思います。しかし素敵なものを素敵であると感じるれるのは苦しみを理解しているからです。特別美味しいものしか食べたことない人は何が美味しいのか理解できないし、仲のいい友達を好きになれるのはどうしても好きになれなかった悪意と出会ったことがあるからこそ大切にしたいと願うのではないでしょうか。

 

明るく前向きな曲を聴くと励ましてもらえてるような、背中を押してもらえるようなそんな気分になると思います。
でもそれだけじゃ足りない夜が、一度や二度、人によっては数えきれないほど、あったりしたんじゃないでしょうか。僕にはありました。
周りには暗闇しか見えなくて、励まされても自分に価値を見出せなくて、背中を押されでもしたそのまま底の見えない奈落へ落ちてしまいそうな、そんな夜が。

 

そんな時に、寄り添ってくれたのが、僕にとっては彼らの言葉でした。
背中を押すでもなく、励ますでもなく、ただ静かにそこで苦しみを『代弁』してくれる。
CIVILIANは、そんな音楽を奏でているバンドです。

 

さて、このままいくと無限に長くなりそうなので、そろそろeveというアルバムの紹介をしていきます。

ちなみにAppleMusicではCIVILIANの楽曲を全部聴けるので登録している方はどうぞ。

eve

eve

  • CIVILIAN
  • ロック
  • ¥2100

 

 

 

 

[1] eve 
CDを再生してまず聞こえてくる歌詞を武器にしてきた彼らの『インスト曲』言葉もなくただ静謐に過ぎていく時間を表すようなアルバム名と同じeveというタイトルをつけられたこの曲は、誰にでも平等に明日が来ることは希望ではあるのかもしれないけど、でもいつでも明日をその『前の日』を永遠に彷徨い続けているような、そんな情景が浮かぶ曲、左チャンネルに乗っているノイズに混じったコヤマさんが喋っている『言葉』の内容は内緒で、リスナーへの言葉ではなく自分への言葉なので聞き取れなくても大丈夫だそう。曲は少しづづ静かに深みを増して、2曲目の一般生命論へとそのまま繋がる。

[2] 一般生命論
《 誰かの言葉だけじゃ 満たされない僕らは / 命の使い道を 決められずに彷徨った / さあ今 眼を見開け 答えを出せ / 借り物じゃない呼吸で 》
静かに展開していたeveとは打って変わっていきなり歌ギターベースドラム全てがアクセルベタ踏みで始まる激しい曲。
アノニマスのような彼らの得意な激しい演奏の上でまるでマシンガンのように言葉を並べて放つ曲。しかしそれは今までの繰り返しでは決してなく『歌だけではない』という意思を強く感じるCIVILIANの新しいアンサンブルを見せつけて来る。演奏が言葉を伝えるための道具としてではなく音楽があるからこそ高い純度で心に言葉が届くような、そんな曲に仕上がっている。

[3] 残り物の羊
《 病的に清潔な牧場の檻の一番奥で / 羊は震えていた 顔中に脂汗浮かべて / 「ああ次は俺の番だ きっともうすぐに声が掛かって / 先に行ったあいつらと 同じところに行くのさ」 》
《 しかし彼の予想に反して / 呼ばれてくのはなぜか別の奴ばっかり / 待てよ もしや まさかと思うが / 俺は最初から 必要とされていないのか 》
続けてまたしても休ませる気のないハイテンポな楽曲、牧場で飼育されている羊を主人公とした物語的な楽曲。自分が必要なのか、そもそも自分が何を願っているのかも定かではなく運命に翻弄される羊の焦燥は、人間界でも他人事ではないと感じさせる強い歌詞で歌い上げられる。

[4] どうでもいい歌
《 愛されたくて仕方なくて もう恥なんかかきたくなくて / とりあえずドラム4つ打ちにして ノリで受けそうな感じにしました / 聴いた奴らの声が浮かぶよ 「なんか明るくていいね」ってさ / はいはいどうせその程度 僕の音楽なんてそんなもの 》
音数が多いいかにも最近の邦ロック好きに受けそうなギターのディレイフレーズのイントロからドラムの4つ打ちがとともに言葉が紡がれる曲。アルバムで初めて聴いた時の衝撃が一番強かったのはこれで、真実で埋め尽くされている曲になっている。むしろ怖ささえ感じる。アルバムのリリースツアーではMCで「どうでもいい歌っていう曲をやります。でもこの曲で歌われていることは僕らにとっては " 全然どうでもよくありません " 」と叫び演奏された。純度100%の彼らの苦しみが反映されているからこそ、曲特有の説得力により心が強打されるような衝撃と力があるのかもしれない。

[5] 愛/憎
《 馬鹿馬鹿しくてさ 涙が止まらない / どうせ皆阿呆だ さあ輪になって踊れ 》
ドラマのタイアップにも使われたシングル曲。タイアップでも彼らのスタンスは変わらず自分たちの曲を奏でる姿勢が素晴らしい。辛気臭さはそこには存在せずにネガティブな感情だけでないそれに付随する狂気も織り込んだ彼らにしか演奏できない踊れないダンスナンバーのような曲。

[6] ハロ/ハワユ
《 幸せだろうと 不幸せだろうと / 平等に 残酷に 朝日が登る / 生きていくだけで精一杯の私に / これ以上何を望むというの 》
知ってる人も多いのではないだろうか、ボカロPナノウとしての代表作のセルフカバー。CIVILIANのためにバンドアレンジし、初音ミクではなくコヤマ本人が歌うからこその良さをうまく出している。彼らの曲を聴いたことがない人はとりあえず、聞き覚えのあるこの曲から聴いてみるのはどうだろうか。

[7] 赫色 -akairo-
《 幸せは仇となり 信じた奴から終わってく / この世界は彼等の 死体の上に築かれる / 傷つくのは優しさの 証だと嘯いて / 勲章だなんて宣う 本気で言ってんかよそれ 》
アニメのOPのタイアップ曲。この頃になるとサウンド的にも彼等の新しい挑戦が見られ始める。三人の音ではない別の楽器を組み合わせ、しかし決して邪魔にならずさらに音楽としての解像度を増させていく。Lyu:Lyuの頃には見られなかったアレンジだ。

[8] 言わなきゃいけない事
《 破裂しそうな感情も 言葉にしたら嘘みたいで / 君はきっと悔しいだろうな こんなもんじゃないのにってさ / たぶん 僕等 同じだろう 頭の足りない出来損ないさ / 人と人が 理解不能だと いつになっても分からないまま 》
引用した歌詞はAメロだがサビのキャッチーなメロディで紡がれる《 もしも心が透明ならば 誰も泣かずに済んだのに / 見えないからみんな怖がって 知らないから知りたがる 》の歌詞も素晴らしい。他人の心が見えないからこそ僕らは言葉が足りないし伝わらないし分かり合えない。そんなどうしようもない現実を歌うことによって、僕等は『苦しみ』を共有できる。なんの解決にもならないまま、でもその瞬間だけは僕らは孤独ではなくなるのだ。

[9] 生者ノ行進(Album Ver.)
《 さあ 腕を振って / 傷だらけの体で それでも歌えよ / 何もなくても 構わないから / 僕等は 行くのさ 明日を夢見て 》
アルバムバージョンではライブ会場でのオーディエンスのコール&レスポンスが収録されている音源に差し替えられている。ちなみに僕もその場にいたので声が含まれていたりする(絶対聞こえないけど)
コヤマ曰く、こういう風にコール&レスポンスをするバンドは苦手だったらしい。でも音楽で対話をして生きたいという想いとともに自らの意思で挑戦をした結果であり、オーディエンスの声を含めて初めてこの曲を完成できたという『奇跡』を僕はとても美しいと思う。僕らの苦しみを代弁をしてくれているCIVILIANの音源に僕等の声が合わさったのは、もしかしたら必然なのかも、しれない

[10] あなたのこと
《 あなたの事 そして僕の事 大嫌いな 夏の出来事 / 思い出すよ それでも生きて 僕らは出会えたんだから / 水の無い水槽の中 蹲って 泣いた僕らの / 悲しみは 美しさは 何一つ 無駄じゃなかったんだ きっと 》
おそらくこのアルバムで一番コヤマの『個人的な曲』だと思う。そして僕が一番好きな曲でもある。アルバムの中で一番歌詞の文字数が多く、詰め込まれているのでとにかく情報量が多い、目まぐるしく情景が浮かんでそしてその全てをコヤマの個人的な記憶であり僕らは共有することができない。明らかに他の楽曲とは毛色が違う。個人的な解釈ではあるがこの曲はLyu:Lyu時代の『Y』という曲と同じ人物について歌っているような気がする。『あなた』との記憶は、決して良いものとは言えず、大嫌いな出来事であり、思い出したくもないことで…………でも、何一つ、無駄じゃなかった。
もちろん正解は本人にしか分からないので断言はできないが、近い温度を感じる。

[11] I'M HOME
《 見えないから 聴けないから / 分からなくて 逃げ出したよ / さあ帰ろう もう帰ろう / これ以上は行けないよ / 足跡が少しづつ 遠くなっていく 》
優しくて、そして苦しい、CIVILIANの真髄をこれでもかと表した曲だと思う。もちろん激しい曲も好きなのだがCIVILIANに改名してからのバラードはどれもこれも甲乙つけがたいほど素晴らしい。とめどなく溢れて行く感情を全てすくい上げるような、そんな歌と演奏が光る曲。

[12] 顔
《 こんな顔が あるから今日も / どこかで誰かがまた泣いてる / もしも皆 同じ顔で / 生まれてきたなら 誰も悲しまずに済むだろうか / 痛みと傷をみせないままで 誰もが笑っている 》
CIVILIANになってから現在までで唯一タイアップでは無いシングル。タイトルからわかる通り、この曲は「顔」についての歌だ。自分の顔のコンプレックスについて歌うバンドマンがはたして今までいただろうか。
コンプレックスというものはみなそれぞれ抱えていて、それはおそらくほとんど完全に解決などせずに長い時間が過ぎてしまうものであると思う。
この曲は決して個性などという言葉で励ましてコンプレックスを取り払う歌ではない。
そんなことは簡単にはできないとCIVILIANは分かっているのだ。
だから、この曲の歌詞にはコンプレックスを解消させるような言葉は含まれてない。
コンプレックスを抱えたままで、常に誰かと比べられて、自分でも周りとの違いを気にして、でもそれと同じようにただただ平等に、みんな同じようにそれでも日々を生きていって、それでも歩くしかないと、残酷だけど優しい「真実」のみを歌いそこには一切の「嘘」がない。だからこそ、それは安らぎになり、心に響く。

www.youtube.com

[13. 明日もし晴れたら]
《 自分さえも分からない僕等はこれから さあ何をしようか / 絶望でも悲しみでも終わらせられない命が待っているよ / もうどこへだって逃げられない 》
最後の曲。アレンジこそ練られてはいるが非常に素直なバラード。コヤマヒデカズの本領を発揮するのはこういう曲だと思う。メロディといい歌声といい全てがそこにあるのが一番いいと断言できる曲を毎回作ってくれる。どんな絶望や悲しみを抱えていても結局僕らは生きて今ここにいて、そして何処へも逃げられない。最後の最後で現実を突きつける曲、でもそれは僕らに対しての『攻撃』では無い。なぜならそれは全員同じだからだ。誰もが平等に同じ速度でどれだけ辛くても明日へ向かっていくしかないし、生物である限りその途中で必ずどこかで野垂れ死ぬ。でもそれまでは紛れもなく自分の命で、何処へだっていける。何処へも行かなくてもいい。
だからこそ、明日もし晴れたら、僕らは何をするのだろうか。それは明日晴れたら考えればいいのだ。
アルバムの最後に明日の歌を入れるというドラマも、とても気持ちいいがいい。


[14] メシア(2017.9.5 at Aobadai Studio)
このアルバムから僕らを知ってくれる人に聴いてほしいと収録されたボーナストラック。
この曲に関しては僕がどうこう言うよりも実際聴いてもらってそれぞれが感想を抱いてもらうのがいいだろう。

www.youtube.com

 

 


背中を押すでもなく、励ますでもなく、ただ静かにそこで苦しみを『代弁』してくれるCIVILIAN。
それはもしかしたら、諸手を挙げて褒められるような音楽ではないのかもしれない。
生きづらい世界を作っているのはもしかしたら自分自身かもしれない。誰かのせいにすることなんてできなくて、明日に希望を持てない僕らは失敗作なのかもしれない。


でもCIVILIANは一つだけ、僕らにある『幸福』を届けてくれるバンドだと、僕は思う。

 

確かに苦しみは分かち合えないし自分だけのもので誰も代わってはくれない。
でも、代わる間も無くぼくらはみんな不幸なのだ
それは、もしかしたら幸福ですらあるのかもしれない。

 

そんな、僕らは皆不幸であるという幸福をCIVILIANは僕らに届けてくれる。

 


願わくば、彼らの音楽がまだ見ぬあなたの人生を照らす光の一部になったら幸いです。

"巨大感情"というワードに反応してしまう百合オタクは『少女妄想中。』の「264pの5行目」を読んでください。

タイトルが全てです。

 

いや、もちろん最初のページから飛ばさずに読んでください。

つまりはそこまでたどり着けば自ずと僕の言いたいことは伝わると思います。

 

ここで終わってもいいのですが、それだけだと流石に読んでもらえなさそうなのでネタバレを回避しながら詳細を綴らせていただきます。

 

そもそも『少女妄想中。』とは電撃大賞最終選考で惜しくも賞を逃しながらもその独特で異質な世界観で大人気シリーズとなった『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃんシリーズ』やシャフトによりアニメ化もされた『電波女と青春男ラノベでは売れないとされている『百合』をそれでも題材にし人気を勝ち取った『安達としまむら』などで知られている入間人間先生によるメディアワークス文庫から出版されている小説です。一応、MW文庫なのでラノベには分類されないと思います。
表紙のイラストは来期(2018年秋)にアニメ化も決定している百合好きの中で今最も注目されている作品やがて君になる仲谷鳰先生が担当しています。

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好きになったのが、“あなた”だっただけ。

 

「こういうのが初恋なんだなって、思いましたっ」

いつも背中を追いかけていた、あの人への『憧れ』。夢の中で一緒に過ごした、海辺でのあの子との『友情』。傷つけてしまったあの人へ、伝えられない内緒の『想い』。私の好きな人は、私以外の人も好きなのだろうか。たくさんの人と物の中で、その女の子を好きになっただけ。自分の気持ちが恋なのかどうか、分からないし、確かめることもできない。そんももどかしい想いを描く、少女たちの可憐な物語。

表紙からわかる通り百合です。しかもアラサーとJKの百合という強すぎる概念が含まれます。


本作は短編集の体を取っており

ガールズ・オン・ザ・ラン
『銀の手は消えない』
『君を見つめて』
『今にも空と繋がる海で』

の4つの短い話から構成されています。表紙の絵はその中から三つ目の『君を見つめて』を描いた物です。
しかし短編集の"体を取っている”とは言いましたが実はただの『短編集』ではありません。これ以上語ってしまうとネタバレになってしまう可能性があるので控えますが少しその辺り意識しながら話を飛ばさずに読んでもらえると作品の本質が見えてくると思います。


ガールズ・オン・ザ・ラン
全力で『走った時だけ見える』幻影のような正体不明の決して追いつけない、本当に存在するのかもわからない女の子をそれでも追い続けることしかできない女の子の話。

『銀の手は消えない』
心が浮遊しているような感覚に囚われる、夢のような現実のような不思議な話。


『君を見つめて』
自分が壊してしまった叔母を好きになってしまった女子高生が罪を抱きながらもそれでも叔母を求めてしまう話。264pの5行目に脳天をぶん殴られてください。

『今にも空と繋がる海で』——じゃりじゃりする話。


とにかくこの作品は、心にささくれが刺さるような少し痛みを伴う感情がデカい百合が好きな人には特に読んでほしいです。きっと刺さると思います。どうか読んでください。それが全てです。


 


P.S. 斉藤恵那概念、という言葉に反応してしまう人はこの作品はもはや必修です。買いましょう。

 

 

 

少女妄想中。 (メディアワークス文庫)

少女妄想中。 (メディアワークス文庫)

 

 

 

Summer Pocketsをプレイしてくださいというブログ。未プレイ向け。

久々の更新で申し訳ありません。

まぁもろもろ、察してください……。

しかし話題はアニメでもラノベでもなくゲームになります。

先月発売したビジュアルアーツ、keyブランドの最新作、Summer Pocketsがあまりにも素晴らしすぎたのでオススメする記事を書こうと筆をとった訳であります。いや、実際はキーボード打つだけだから筆なんか取らないんだけど。

一応、未プレイや、なんだそのゲーム名前すら知らんぞ、という方に向けた記事になりますのでネタバレは含まれていません。

 

ええ、待ちに待ってましたとも。

ひさびさのフルプライスkeyブランド。そりゃあそうでしょ。

え? まだ買ってない?

まじですか? 夏のうちに急いで買いましょう?

 

さて、まずは作品のあらすじ。

亡くなった祖母の遺品整理のために夏休みを利用して、鳥白島にやってきた主人公の鷹原羽依里。祖母の思い出の品の片付けを手伝いながら、初めて触れる「島の生活」に戸惑いつつも、順応していく。海を見つめる少女と出会った。不思議な蝶を探す少女と出会った。静かな灯台で暮らす少女と出会った。思い出と海賊船を探す少女と出会った。島で新しい仲間が出来た。この夏休みが終わらなければいいのにと、そう思った。

 

物語は主人公が夏休み期間、亡くなってしまった祖母の家に訪れるところから始まります。そこは小さな島で、いつも過ごしている都会とは全く異なる環境。そこで初めて会う同年代の少年少女と仲良くなりながらおもいおもいの夏休みを過ごしていく。というものです。

まずBGMといい演出といい夏の雰囲気を味合わせるのがうますぎる。僕は子供の頃毎年のように夏休みに母方の田舎に遊びに行っていたこと思い出しました。そういうノスタルジーな雰囲気にふけるあまりテキストを送ることも一瞬忘れてしまう始末。ここらへんはさすが今もなお愛されるAIRを作ったkeyというべきでしょうか。

 

さてSummer Pockets、結論から言わせてもらうと「素晴らしいゲーム」です。

いや、もうこれはゲームじゃなくて『素晴らしい夏休み』といえるでしょう。

ギャルゲーというよりも体感的には『ぼくのなつやすみ』に近いような気もしました。

プレイしていくうちに主人公である鷹原羽衣里の視点を通じて、僕は確かにもう僕の人生には二度と訪れることのない『夏休み』を体験しました。

でもそれは「もう俺はこんな楽しいことは体験できないのか……」という悲壮感ではなく、本当に素敵な夏休みの息遣いみたいなものを確かに"今"の自分が感じました。

ネタバレになるので詳しくは言えませんが、その不思議な没入感すらこの作品のテーマの一つになってます。

君も早く買ってプレイしよう。さぁ、夏のうちに!

 

ネタバレを含めない感想で一番声を大にして主張したいのは「これこそ王道key作品である」ということです。

テンポのいいクスッとくる会話劇、
可愛いけどどこかちょっとおかしなヒロインたち、
攻略できないくせに魅力的すぎるサブヒロイン、
やけにホモくさいけどめっちゃいいやつな男ども、
そいつらがやらかす自分もそこにいたいとさえ思えるどんちゃん騒ぎ、
「いやこれ美少女ゲームだよな……?」と心配になるぐらいの男キャラの掘り下げ、
そこかしこに散りばめられた「どこまで考えてあるんだよ」と突っ込みたくなる伏線、
そしてなにより、最初はヒロインそれぞれの個人的なもののはずだった個別ルートを読み進めていくうちにいつの間にか世界を見渡すように壮大になっていくシナリオ。
そういう「keyらしさ」みたいなものがこれでもかと押し込められた作品です。

 

keyが大好きな人はもちろん、そうじゃなくても『入り口』としてとても優れた作品に仕上がってると思います。
前作のRewriteももちろん素晴らしい作品ではあるけれど少しややこしくて難解すぎるストーリー故、少し人に勧めるのを躊躇ってしまう作品でしたが、このサマポケはそんな心配のない、素直にまっすぐ心の中に届いてきてくれる作品に仕上がってると思いました。

そうだよ。こういうのでいいんだよこういうので。

僕自身、あんまり頭が良くないので「これは……どういうことだ……?」と考えながらプレイしちゃうと感動すべきポイントで置いていかれちゃったりするので……。

でもだからといって物語が単調で薄い訳ではないのです。

後述しますが、シナリオに散りばめられていたピースが自分の頭の中でガッチリハマったその瞬間にとめどなく流れ始める大量の涙……そんなkeyらしさはバッチリ残っている……いやもしかしたらパワーアップすらしてるかもしれない。

 

この作品の大きなテーマとして、さっきから何度も言ってますが「夏休み」というものがあります。

プロローグで主人公はヒロインに「今まで一番楽しかった夏休みはいつ?」と聞きます。しかしそれはヒロインに投げかけていると同時にプレイヤーである僕たちに投げかけているものであるように感じました。

みなさんの中で【その夏】がとっさに出てこなかったとしても、この作品を追いかけているうちにその夏の匂いや手触りを強くフラッシュバックさせる、そしてそれは追体験であり、同時に初体験でもあるのです。

いや、その「なにいってんだこいつ」って目で見ないで……お願い……やればわかるから!!

とにかくその【プレイヤーが実際体験してきた夏】そのものがこの作品を楽しむための鍵となっているのです。……keyなだけに。

「あの頃の夏休みはよかったなぁ」という人も、「夏休みなんて暑いだけで楽しくもない」と思っていた人も、この作品はそんなあなたの【記憶】すらシナリオに生かしてきます。まじです。本当に恐ろしい子

 

でも、そんなこと言ってもkeyなんてあんまり知らないし、ギャルゲーとかやったことないし、まだ半信半疑だし、フルプライスだし、そんなほいほい買えるものじゃないよ……って人に朗報です。現在体験版がリリースされてます!

体験版では物語のプロローグと少しの共通ルートが楽しめます。

体験版と侮るかもしれませんがこれだけでも結構ボリュームがあります。数時間は遊べます、タダで。

しかもこの作品の魅力もちゃーんとプロローグに詰まってます。

まずはその体験版を最後まで遊んでいただきOPを見た瞬間、大概の人は「あ、買うわ……」となるはずのでそこから先は頑張ってどうにかお金を工面してしてください。

後悔は、させません。

体験版は下の公式ホームページから探せますのでどうぞ。

 

key.visualarts.gr.jp

 

 

体験版の"公式"実況プレイ動画も上がっています。こちらも非常に面白い動画になってるので体験版と並行してやってもいいと思います。

www.nicovideo.jp

 

 

 

次回更新は(おそらく)ネタバレありのプレイ済み向けの感想記事になると思います。でも考察とかはできないタチなのでそこらへんは期待しないでいただけると。

では長々とお付き合いありがとうございました。

 

異世界テニス無双騒動について。

 

matome.naver.jp

togetter.com

 

 

 経緯については上記を見てもらえればそれなりに理解できると思う。

 発表当初は望公太先生のファンとして、色々な感情が重なりカッとなって必要以上に攻撃的な発言をしてしまった事を認めて、まずは謝罪したい。

 問題のツイートは自戒のため消していないので残っているが、見ても誰も得するような内容ではないし、不快になる人もいてもおかしくはないため引用はしないが、今後はこのような事の無いよう勤めて行きたいと思っています。

【追記1/29 10:00:発言を撤回し、攻撃的なツイートは消しました。理由としては拡散し私自体へコメントをすること自体は構わないのですが、拡散した当人ではなくそのフォロワーなど不特定多数の"意図しない"受け取り側が傷つくようなツイートは消した方が良いという判断からです。なお、消したものに関しては完全に意見として撤回したものととってもらって構いません。】

 

 

 さて、しばらく時間が経ってネットの様々な意見を見て冷静に物事を考える余裕が出てきたので、自分の考えを整理しようと思う。

 なおこの記事は基本的にテニス無双ファン側から主観をまとめるが、テニプリファン側を批判するつもりの内容ではない事をここに明記しておく。

 情報があまりにも爆発的に拡散されていて、このままではテニ双ファン側もテニプリファン側も誰も幸せにはなれないの思いこの記事を残す。

 

 

 まず、一番の問題点としては望公太先生の作品におけるオリジナリティの欠如であることはまず間違いない。

 他人の生み出したネタを自分の作品に取り入れそれを発表した時点で、「望公太先生は一切悪いことをしていない」なんて言うつもりは毛頭無い。

 テニスの王子様ファンがそれに対して憤ることは当然であり、そこに関しては誠心誠意望先生は対応して然るべきであると思っている。

 と言うより、別に大概のテニスの王子様ファン側には特に問題点見当たらないと言ってもいいだろう。

 捨て垢を使って情報の拡散を測っている行為が見られるが、それは別に自衛の行為としては基本的に正しい。(と筆者は思っている)

 ツイッターでの問題提議ツイートでの無断で画像を転載している云々は悪いことでないとは言えないが、それについては様々な状況を顧みて当記事では一旦スルーさせていただく。

 

 では双方の主張が衝突してしまうのは何故か。という部分にスポットを当てて考えていきたい。

 

 その要素として考えられるのはパクリ、パロディ、オマージュ。という曖昧な線引き。

 これらの言葉は、人によって解釈が違うものである。しかもこれはテニプリファン側とラノベファン側で別れている『と言うわけでもない』。

 そこがこの問題の厄介なところで、

 テニプリ側の『パクリだから許さない』『パロディでも金儲けに使うな』etc...

 ラノベファン側の『パクリではないから問題ない』『パロディだけどやりすぎた』etc...

 と言うように同勢力間でも千差万別であるのだ。

 

 だからそもそも前提の認識としてズレているので衝突が起きてしまう。

 正解なのはAかBかという簡単な議論ではなく、人によってそれぞれの正解があるので、味方同士の意思疎通も取れずにお互いの勢力の"個々"が暴走をしている事態にある。

 

 

 では、そもそもそれら言葉の違いとは『広く』どのように『解釈』されているのか。

dic.nicovideo.jp

 

 筆者の考えと一番近い解釈をとりあえず引用する。

 要約すると。

 『パクリ』は盗用で元ネタを"伏せて"コンテンツを受け取る側(今回の場合は読者)に純粋な自分の創作物であると【騙す】行為。

 『パロディ』は"笑いをとる"ために、他人のネタを自分の作品に取り入れる行為。大概は読者が【元ネタを理解していないと面白くない】と感じるものなので元ネタは○○であると読者に理解されるように意識して創作する。

 『オマージュ』はパロディと非常に近い意味で、多くは【この作品を私は尊敬している】ということを主張するために作られるもの。元ネタを明確にしない場合もある。

 

 基本的にパクリは悪いことでパロディとオマージュはその限りではない。という認識をされている。

 

 と解説したところで申し訳ないが、筆者はこの問題に関して言葉の認識の違いは【あんまり関係ない】と思っている。

 

 正直、先ほどの大百科のページの一番下のパクリと著作権侵害という欄に書かれている 、

著作権侵害親告罪であり、侵害された元作品の権利者が訴えた時点で成立するものである。たとえそれが無断の引用や転載であったとしても、被害を受けた当事者が訴えない限り裁判を起こし法的判断に持ち込むことは出来ない。つまり、パクリ作品に対して第三者が「著作権違反だ!」「犯罪だ!」などと法的な判断を持った言葉で相手を責め立てるのはお門違いである。

ニコニコ大百科 パクリより

 

 ということがこの問題に対して一番主張したいことなのだが、これも一種の個人の意見であることは変わりないし、それではテニプリファンに対して少し不誠実だと思うので、もう少し踏み込んだ話をしたい。

 

 

 問題は内容よりも『望公太先生の対応である』という意見が比較的多く見受けられる。(もちろん総意ではないことはわかっている)

 当記事筆者である僕自身も望先生の対応について、完璧であったとは思っていない。別の言葉で別の方法で情報を発信していれば、これほどの問題にはならなかったのではないだろうか。

 

 テニプリのファンの一つの意見として「愛や尊敬が感じられないからこの作品は許されるものではない」という意見がある。

 それに対して「愛があるのかジャッジするのは原作者許斐先生本人でありテニプリファンがすることではない」という反論もあるが、とりあえずそれは置いといて、僕としてはテニプリファンを『法的に問題ない』で突き放すのではなく、どうにかその胸につっかえた不快感を取り除くために努力したい。

 何故なら良い関係を築けないままいがみ合ったままだと、もし逆の立場になった時に困るのが僕らラノベファンであるからだ。エンタメの世界では争いは本当に何も生まれない。

 

 まず、そもそも望先生に本当に『愛』はなかったのだろうか。

 僕個人としては"否"だと思っている。だからこそこの記事を書こうと思ったのだ。

 

 確かに望先生は出版前後、ツイッターにてテニスの王子様という具体名を出すことはなかった。これは筆者の主観でしかないがそれは伏せていたというわけではなく、『テニスの王子様』という具体名を出すことによってその行為自体が不誠実で不確実なマーケティングになると思っていたのではないだろうか。

 テニスの王子様の公式なスピンオフでもないのに「テニスの王子様をオマージュしました!」なんて発言をしたらテニスの王子様好きな人に対してのマーティングになってしまう。(それで本当に買うかは置いといて)

 ちょうどいい時期なので話題に出すが、今期放映されているポプテピピックというアニメは豪華声優陣を起用することで話題になっているが放映前に「誰々と誰々が声優です! なので見てね!」というマーケティグは一切行わず、直接アニメをみた視聴者の知識と認識能力に頼るというブラックボックスのような形を取りパロディとして昇華させている。(本当は寒いだけから解説などしたくないのだけど)

 そもそもパロディとはそうあって然るべきなのだと思う。パロディ作品を「パロディ作品である」と大々的に明言するのは、逆にパロディ以外のオリジナルの要素を潰すことになりかねない。テニスの王子様を好きな人に無理やりこの作品を買わせても異世界転生の面白さがわかりにくく、また別のテニプリ発祥ではない小ネタが伝わらずに終わってしまう。(一応ネタバレに考慮しているので曖昧な書き方ですみません)

 だからこそ、作者は元ネタはテニスボーイです! と茶化したり、反応する側に判断を任せるようなマーケティングを行なったのだとおもう。

 

 そもそも、異世界テニス無双という作品は、作中で主人公が異世界に転生してからは『一度たりともテニスというスポーツを行なっていない』のであって形式としてスポーツモノでは一切ないのだ。

 例えばこれが異世界に転生して現実世界ではありえない魔法を使う超人たちと『テニスの試合をする』ようなそれこそ"パクリストーリー"であったのならば望公太特有の面白さは全くでなかったであろう。

 この物語はテニスボールで倒せるはずのないドラゴンや魔法使いを、あの手この手で文字通り【倒す】のが現実離れしていて面白いのであって、テニス技術がどうこういう話ではない。(テニプリもそうだろという意見が出そうなのも重々承知してますが、筆者としてはテニプリはしっかりとした"スポーツモノの青春ドラマ"だと思っています。)

 オリジナル要素ではないものが含まれているのは確かだが、最初から最後までテニプリの要素で作品の面白さを埋め尽くしているのでは決してなく、超人的なテニス技術を持った主人公が、ラケットとボールだけ持って異世界に転生し世界を救うという"アホみたいな"ファンタジー小説なのである。

 そもそも僕のような一オタクが何故こんなにも声をあげているのかというと、「この作品がめちゃくちゃ面白かった」からなのだ。他のものに埋もれるような作品で終わってはいけない名作だと判断した上で「次巻は出ない」という状況に絶望して、ついつい最初は声を荒げてしまった。

 まぁこんな記事を書いたからといって誰にも読んでもらえないだろうし、その決定が覆ることはほぼ100パーセントないが……。

 まぁ、だから何? と言いたい気持ちもわかる。ここまで問題が大きくなったらそんなこと知ったこっちゃないと言われてもしょうがないのは確かだ。でも、テニスの王子様のいいとこ取りだけした模倣作ではないという『僕個人の意見』を述べさせてもらった。

 

 望先生がテニプリのファンであることは上のまとめを読めば理解していただけると思うが、本作のあとがきには(本文の引用はしませんが)具体名は出さずともテニプリへの愛が溢れていて、さらにはテニプリにめんどくさいツッコミをしてバカにする人たちへの"怒り"すら語られている。

 まぁここら辺は受け取りようの問題でもあるだろうが、とにかく主張したいのは、望先生はこの作品を通してテニスの王子様という作品をバカにしているわけではなく敬意で溢れているということだ。

 望先生が本作に対して「ふざけている」と発言したことが取り糺されているが、それはテニスの王子様がふざけたネタを多用した作品であるという意図ではなく、超人テニス『を』こんなふざけたネタに『昇華』させてしまって申し訳ない(ネタとして)という意味であることは本作を読んだ人ならすぐに理解できるはずだと思う。

 

 

 

 さて、散々望先生の擁護に回ったわけだが、ここからは僕が思うこの作品の『マズかった部分』を上げていこうと思う。

 僕の個人的な理想としては、これらの部分が修正されて出版し直してくれないだろうか。という夢物語を抱いているが、まぁそんなことにはまずならないだろう。

 

 まずは何よりも絵である。この問題が爆発的に広まったのは挿絵がツイッターで拡散されたからだ。

 あれはよくある構図などというつもりはない。おそらく望先生か担当編集側が意図的にキャラデザや絵の構図を似せるように発注したことは事実なのだろう。(違かったらごめんなさい)

 では、じゃあ、何のためにそんなことをしたのかという疑問。

 完全に妄想でしかないが、おそらく「ちょwwwキャラデザ似過ぎでやべぇだろこれwwww」「構図が全く一緒じゃんwwww怒られるぞwwww」という笑いを狙いたかったのだろう。

 構図を盗むためではなく、『咎められることを期待して』その上でポプテピピックのような『作者を見下す』ことで生まれる笑いを期待してああいう絵を発注していたのだと思う。

 でもそれがうまくいかず、炎上した。

 それは何故かというと異世界転生モノを普段好んで読む層は普段テニスの王子様を『読み込んでいる』人だけではないからだ。

 テニプリは国民的作品であり、誰もが知っているといっても過言ではないし、アニメはかなり多くの人が見たことがあるのだろう。だからこそ異世界転生モノや普段望先生の作品を読む層にも超次元テニスというネタやキャラデザの類似は伝わるが、しかし「原作何巻の何ページのここのコマに構図まで似せている」という(出版側としては)渾身のボケが【好意的な読者にだけ】気づかれないことが多発したのだろう。かくいう僕もその1人である。

 結果、普段から原作漫画が好きで読んでる層だけそれをすぐに理解しパクリであると嫌悪感を抱いてしまう結果となってしまった。

 なので逆に言ってしまえばどうせ伝わらないならここは別の構図の絵でも問題がなかったはずで、そこに読み違いが生まれてしまったのは残念だ。

 

 もう一つは技名の類似、これも上の件と同じような効果を望んで取り入れたが、より理解の深い人からすればパクリ認定、という残念な結果に終わってしまった。

 …………というより、「そもそも望先生ルビ振りの技名と通り名考える好きなんだから自分で考えてもよかったじゃん!!!! 何してんのさ!!!!!」というのが一ファンである僕の叫びである。まぁ、結局は後出しジャンケンなのだが。

 

 

 

 

 

 

 さて、最後になるが僕個人がテニプリファンに求めているのは、訴えを取りさげろ!みたいな的外れなことではなく、どうかその怒りを治めてくれないだろうか、という一点。

 2巻が刊行中止とGA文庫が判断した今。1巻も自主回収しろという意見が多いものわかっているが、もうこの作品は僕らラノベファンにとって大切な一つの作品なのである。

 【許斐先生や集英社が直接権利侵害で訴えるまでの間】だけでもどうか……どうか、この一巻をこっそり世界の隅っこで楽しむことだけは、どうか許してほしいのだ。

 もちろん許斐先生や集英社が問題視し、本当にGA文庫が訴えられるような自体になったとしたら潔く諦め一巻も手放し、この記事も取り下げる。

 納得できないのもしょうがない。好きなものを汚されたと思うのもしょうがない。テニスの王子様は許斐先生が汗水垂らして身を削って作り出した素晴らしい作品であるのも理解している。

 だけど、決してこの作品はテニスの王子様を冒涜するために書かれたものではないってことだけをわかって欲しいのだ。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。僕からは、以上です。 

 

 

妹さえいればいい。1話先行上映会、感想のような何か。

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 妹の日ということで、行ってきました妹さえ(正式略称。読み方:いもさえ)1話先行上映会。

 さて、この妹さえいればいい。は僕としても原作は初版を所持して読んでるくらい大ファンで、アニメ化の話を聞いたときは(その情報開示が制作側の意図したものではなくても笑)とても興奮して心が躍ったのを覚えていますね。


 でもまあ、同時に本当にあれをアニメ化するのか? 正気か? と思いましたけど。

 とまあ、既読組は、色々心配だったんじゃないのかな、と思われる妹さえいればいい。のアニメですが、新宿ピカデリーにて一足先に1話を見てきました。 

 

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Story

「妹さえいれば人生は常に最高なのに、なぜ俺には妹がいないのか……」

妹モノの作品ばかりを書き続けている妹バカの小説家・羽島伊月の周囲には、天才作家にして変態の可児那由多、女子大生の白川京、イラストレーターのぷりけつ、鬼畜税理士の大野アシュリーなど、個性豊かな人物たちが集まっている。

それぞれ悩みを抱えながらも、小説を書いたりゲームをやったりお酒を飲んだり確定申告をしたりといった、賑やかな日常を送る伊月たち。そんな彼らを温かく見守る伊月の義理の弟・千尋には、ある大きな秘密があって―。

楽しくも心に刺さる、天才や凡人や変人たちが繰り広げる青春ラブコメ群像劇、スタート!

  

 時間になると会場が暗くなり、特にアナウンスもなく開始。


 そして、すぐさま会場に響き渡る「お兄ちゃんおっきっき〜」(CV:国府田マリ子
 原作既読組はおそらく記憶に焼き付いているであろう原作プロローグのアレは「そのまま」映像化されてました。要するに放送時間、まだ家族が起きているであろう22時半に「リビングでは見るな」ってことです。 

 会場には原作をまだ読んでいない方も半数ほどいるみたいで、その人たちはおそらく総じて「これはとんでもないアニメが始まったぞ……」と顔面蒼白になったことでしょう。いや読んでてもなったわ。
 さすがはシリーズ構成として読先生が関わっているだけあり、マイルドになるなんてことは一ミリもありませんでしたね。安心しました。来いよBPO!! 審議なんて捨ててかかって来い!!!!
 

 1話は、キャラクターの顔見せと、主人公である伊月とヒロインの那由多の出会いのエピソードが中心でした。シチュエーションには多少の変更があるものの概ね原作通りの展開、それぞれしっかりとキャラが立ってて初見にもわかりやすかったのではないかと。

 そして、とにかくヒロインたちが可愛い。自分は那由多が特に好きなのですが、ドラマCDの時点で金元さんボイスの那由多には脳を溶かされていたのに、可愛い動きが付いてもう全てに抗えない……。那由多の髪型の左右の出っ張りを猫耳のように動かすシーンが好きでした。

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  京や何故かOPではサブヒロインっぽい扱いを受けている山県さん、1話本編には登場していないですけどOPにちょろっと出てきたアシュリーと蚕、そしてもちろん千尋くんも野郎どもも、みんな魅力的なキャラデザに落とし込んであって、カントク絵はやっぱり素晴らしいなと。

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 作画に関しては、動きも凝って丁寧に作られていていい印象を受けましたが、同じく秋期にはSILVER LINK.の10周年記念作品である「つうかあ」が控えているので一抹の不安が拭えないのが本音ですかね。是非両作とも頑張って欲しい!

 1話の時点で相当ぶっとんでいる妹さえですが、お気楽モードだけではなく、ちょっと胸がチクチクするようなシーンも含まれています。主題歌はどちらも1話の時点で聴けるのですが、爽やかでかっこいい疾走感のあるOPと、少ししんみりするようなEDどちらも物語に寄り添っている印象で素晴らしかったですね。リリースが楽しみ。

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 原作未読の方々にどう映るのかとても気になりますが、僕個人的には視聴前の少し大きかった不安のほとんどが2話以降の期待に移り変わるような素晴らしい出来だったと思います。
 読先生が原作本編で伊月のアニメがクソアニメにされる自虐ネタに走らずに済むので嬉しいやら惜しいやら笑

 とはいえ、1話を見て本当に胸を張っておすすめと言える作品になっているので、どうか本放送もよろしくお願いします。ドラマCDでも登場していないアシュリーや蚕ちゃんに声が乗るのが個人的にはとてもとても楽しみです。

 10月8日の22時半から、みんなもテレビの前でおっきっき〜(はぁと)してくれよな!!

 

 

 

アニメ『妹さえいればいい。』公式サイト

imotosae.com

 

 

昨日、先行上映会直後に公開されたPV第1弾

www.youtube.com