Three Months Journey.

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TVアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』第3話解説と感想。

ほら!だから青ブタ面白いって言ったじゃん!!

この記事も早くも3回目……えっ、あと10話しかないの? つら。

 


前置きに時間をかけている暇なんかないのでさっさと本題行きます。
3話は大垣での朝チュンからのスタート、まぁ二人には何もなかったわけですが……。せっかく勝負パンツ選んでたのに……どんまい咲太。
そうして行きとは違い新幹線で藤沢へ戻ってきて学校へ行く二人、ここで重要なのは学校に来てもすぐには『全校生徒が麻衣の存在を認識しているのかどうかがなかなかわからない』ということ。
学校に来ても『いつも通り』麻衣に話しかけてくる人や見ている人はいない。思春期症候群のせいで一人の人間が認識されていないなんて非日常が起きているかどうかすぐに二人には『判断できない』。そこに麻衣覚えている双葉がやってきて「国見は忘れている」と告げ、古賀に確認をしてようやっと確信を得られる始末。

つまり思春期症候群なんて関係なく学校内で麻衣の存在を認識しないということはただの日常的な現象でしかなかった。そして生徒に悪気があるわけでもない。むしろ悪気があればそれはその人を『意識』していることになる。それは今の状況に反する。
麻衣が自分のことを無視してほしいという『振る舞い』が空気に乗って伝染し全校生徒が無意識的にその空気を読んで、それが学校の外へも伝染し、そして思春期症候群としてあわられた。それこそがこの状況の『原因』。

双葉から『寝たら忘れるのかもしれない』と告げられる咲太。寝ている間は誰かを意識することができない。起きている間は誰かのことを考えることができるが寝ると自由にそれはできなくなるのでその隙に思春期症候群の力に飲み込まれる。次の日にあっさり双葉が寝て忘れていたのは、咲太は必ず翌日も自分にその話を降ってくると予測し自分が忘れることで仮説が正しいことを証明するためです。
咲太はもちろん全世界で自分だけが麻衣を認識できている唯一の人間なので解決の糸口が掴めるまで寝るわけにはいきません。しかし解決の糸口なんてものが本当に存在する確証なんてない。そんな状況でいつまでもそれを続ける覚悟の咲太。ちなみに人が寝ずに活動した世界記録は約11日ほどなので、咲太の睡眠不足自体はそこまでファンタジーではありません。もちろん本気で命の危険があるので真似してはいけませんが……。筆者自体は数年前バンド活動が忙しすぎてずっと作業してた時の3日が限界でした。まじで何も考えられなくなくなるのでマジマジのマジでやらないほうがいいです。

咲太の様子がおかしいのは明白なので(原作だとかえでにすら心配されてます)そこで麻衣が寝たら自分のことを忘れるから寝ないようにしていると気づくのは簡単です。麻衣がやめろと言っても聞かないのもわかっている。そこで睡眠導入剤を咲太に盛ります。ここでは予想通り「薬が高校生に簡単に手に入れられるわけないだろ」みたいな声が上がってますが、普通に薬局に行けば簡単に誰でも買えますし、今の咲太の極限状態だとおそらくただの副作用で少し眠くなる程度の風邪薬でも一瞬で寝てしまうと思います。
原作ではここで「今は辛くてもその辛さも一緒に忘れるから……」と咲太に別れを告げます。もちろん、起きても自分のことを忘れないでいるんじゃないかという期待を捨てきれずに、ですが。初見の時この麻衣の独白でアホみたいに泣いた。

そして翌日、試験最終日にやはり咲太は麻衣を認識できなくなってしまいます。麻衣のことを綴ったノートですが原作では理解不能と判断しあろうことかゴミ箱に捨てられます。「麻衣がノート処分(隠すことを)しなかったのはなぜ?」という声が上がってますが麻衣は咲太に忘れられることを望んでいるわけではなく、自分のために身を犠牲にしないでほしいと思っているだけなのでノートの存在に気づいたところでそれを処分する理由はありません。むしろそれで思い出してくれたら麻衣的にはハッピーエンドです。そうはならなかったわけですが。
学校へ行くと双葉から謎の手紙を渡される咲太。双葉は双葉でただ忘れたわけではなく布石を打っていたわけですね。しかし麻衣のことそのものを忘れてしまっている咲太はその手紙の意味がわからず仕舞い。
そのあと麻衣とともに勉強した漢字の問題がトリガーになり現代国語のテスト中に麻衣のことを思い出す咲太。ここの徐々に麻衣の顔が鮮明になっていく演出好き。

そして教室を飛び出し未成年の主張のシーン。って思った人はおっさんがバレてますよ。ってか俺でも世代ギリギリなのに今の若い子が知ってるわけないでしょ。
もちろん、双葉の手紙によってある程度の自信があって咲太は行動に出ているわけですがもちろん確信なんてありません。ではじゃあそもそもなんでこの告白が麻衣を救う手立てになるのかを補足していきます。
前回解説した通り麻衣は消えているわけではありません。そこに確かに存在しています。
例えば蚊が部屋にいたとしても存在が小さすぎてそれに私たちはなかなか気づくことはできません。刺されたとしても痒みが出てくるまで気づかないときすらあります。耳元で飛ばれてブーン、と音が聞こえてそこでやっと僕たちは「この部屋に蚊がいるらしい」と気づけます。そこから目で追うことができるようになれば姿ももちろん確認することができます。でもそうなるまでは存在していることにさえ気づいていなかった。つまりなんどもいうように存在してもしていなくても同じことになってしまう。人の認識なんて《目に実際見えている命のある生き物》でもその程度です。
麻衣さんも同じようにその存在が極端にまで認識されにくくなっている状態にあります。蚊に例えるとか麻衣ファンに怒られそう。なので咲太は全校生徒が麻衣を無視できなくなるほどに、その存在を知らしめる必要がありました。
だから告白。咲太が麻衣のことを大切に思っているという感情を学校中に知らしめて麻衣という存在を『到底無視できない』ようにする。そのために校庭へ出て、全員に聞こえるように、黒歴史になりそうなほど恥ずかしくて痛くて気持ち悪い告白をする人ようがあった。「あいつ、何馬鹿なことやってんの?」「なんでそこまでするの?アホじゃん」という無視ができないような咲太の奇妙な振る舞いを観測させ、今まで無視していたはずの麻衣を意識せざるを得なくすること。それが麻衣を世界に取り返す方法。

ここの告白について、共感性羞恥には辛いシーンであることはわかりますが、ここの咲太は当事者であり一番恥ずかしいのも咲太です。こんな押しても引いても叩いても何も言ってくれない空気と戦うなんて馬鹿らしい。そもそも解決法としてあっているのかすらわからない。世界に愛を叫ぶなんて馬鹿のすることだ。そう一番感じているのは咲太自身です。でもそれでも麻衣を世界に取り返すために咲太は迷ったり躊躇っている場合ではない。自分がどんなに悪評が広まっていてもそれと向き合おうとせず放置していた咲太はおそらく一番「愛を叫ぶなんて馬鹿だ」と思う人間です。そういう行動が『向いている』からしているわけではありません。
自分があいつらは馬鹿だなぁと思うような行動をするのはどんなことよりも難しいのは、多分誰でもすぐにわかると思います。自分という存在を他の誰かより進んで下にする人間はほとんどいません。だからアイツは自分よりも馬鹿だと、人間は無意識的にしろ意識的にしろレッテルを貼りながら安心して生きています。だから他人に「アイツ痛いよね」とか「恥ずかしいよね」とか思われるような行動を事前に人間は避けます。加えてそういうことをしている人間を馬鹿にする傾向があります。
咲太の告白が痛く見えるのも見ていて恥ずかしいのも当然です、痛くて恥ずかしいことをしているので、そしてそれは咲太自身も自分が今めちゃくちゃ痛くて恥ずべきことをしている現状を一番よくわかっています。でも空気と戦うなんて馬鹿だと思っていた咲太は麻衣のためにその自分の大切な信念をぶち壊します。まあそもそも咲太は他人のことなんて気にしないという国見に言わせれば『鋼の心臓』を持っているからこそできた芸当ではあるとは思いますが、それでも咲太はめちゃくちゃ自分がみっともないと思いながら校庭で叫んでいたのでしょう。

だからこそ、重度の共感性羞恥を持っている筆者もあのシーンは目が離せないものでありました。むしろ、この目を背けたくなるようなキツイという気持ちを自分は高い純度で感じていて、今咲太はこれと戦っているんだな。と別の視点から楽しむことができました。なので共感性羞恥を患っていてもそういう風に楽しめる人が増えてくれたらいいな、と思います。

全校生徒は無意識に麻衣のことを無視していたので、全員が麻衣を意識しはじめても「今まで無視していた」という意識はありません。なので自然に「あの病院送りの生徒あの有名人の桜島麻衣は一体どういう関係なんだ?」と無視していた存在から一気に気になる存在になってしまったので、おそらく無意識的に二人を無視することはこれから峰ヶ原高校の生徒はできなくなるでしょう。
麻衣が駆け寄って来て咲太は抱きしめようとして麻衣はそれに反してビンタを食らわせるシーン、マジで好き。作画の動きも素晴らしすぎてこれからも動きという観点でも期待できますね。



さてこれでバニーガール先輩編はおしまいです。「え?これ最終回?」とか言われてますが、いいえプロローグです。麻衣と咲太の二人はこれからも様々な思春期症候群にまつわる事件に苛まれます。まだ回収していない伏線も数え入れないほどあります。これからも引き続き視聴をお願いします。ついでにこのブログも。あと、何度も言っている通り、尺の都合上様々な描写がアニメではカットされています。もちろん短くしてもこの神がかった面白さにしているアニメスタッフには感謝しかないですが、それはそれとしてもっと深くこの物語を楽しみたい人はぜひ原作を買って読んでください。

さて、次回からはプチデビル後輩編です。こちらも咲太がめちゃくちゃかっこいい話になっているのでぜひ、ぜひよろしくお願いします。

では、また約一週間後に。