Three Months Journey.

アニメとか漫画とか小説とか、好きなものについて書きます

くすく的2022年の10曲

みなさんあけましておめでとうございます。
今年も何卒、よろしくお願いします。

とは言っても年が明けてからずいぶん時間が経ってしまいましたが……。
冬コミやら正月に鬼のように仕事が入ったりやらオフ会やらでようやく落ち着けるかなという感じになったので今のうちに更新したいと思います。
この記事は他のところに上げた記事をこちらにも投稿する形のあれです。一応ブログだけをチェックしてくれてる人もいるっぽいので。

失くしたくないものがあったよ
帰りたい場所だってあったよ
君のいない 世界の中で
君といた昨日に応えたい

まぁ、くすくといえばBUMPということで最初はこの曲。
劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』の主題歌ですね。
この曲はニュース記事などで『起用』と表現されているので最初からハロウィンの花嫁のために書き下ろされたわけではなく、ある程度は形のあるものをコナン側から使わせてくださいという依頼を受けてBUMP側が承諾したという流れだと思われます。
これは割とBUMPとしては珍しいことだと思います。こうこうこういう作品に使いたいので、タイアップのための曲を『作ってください』と依頼する『書き下ろし』という形が基本で、その期待に答える楽曲を作り出すのが非常に上手いのがBUMPであるという認識が強い。(もちろんイメージのはなしであり提供曲も数々存在する)
ただ、声がかかった時点で楽曲がどの程度完成していたかは不明なのでもしかしたら主題歌に使われるにあたり多少は作り直されたりしている部分があるのかも。

さて、2022年にBUMPがリリースした楽曲といえばこの【クロノスタシス】とアニメ『SPY×FAMILY』の第2クールPO主題歌【SOUVENIR】、そして【天体観測(2022 Rerecording Version】の三曲。天体観測はさすがに新曲ではないから省いたとしてもSOUVENIRを選ばなかったのは意外と思った人もいるかもしれません。
SOUVENIRももちろん名曲なんですが、個人的にはこのクロノスタシスが好きすぎる。多分2022年で一番再生した曲じゃないのかな。
理由としてはそのサウンドアレンジにあります。
この楽曲はポップテクノやFutureBassのサウンドを取り入れていてかなりBUMPに新しい風を吹き込んでいます。今までもrayで初音ミクとコラボしたり、ButterflyでEDMサウンドを取り入れたり、記念撮影でループミュージックを試みてみたりとアンテナを伸ばし、度々楽曲に新しい魔法をかけてきたBUMPですが、さすがにFutureBassを取り入れてきたのはめちゃくちゃ驚いた。厳密にいうとちゃんとしたFutureBassではないから音楽ジャンルに一家言ある人からすると雑言及になってるかもしれないけどそこは寛大な心で許していただけると……。
ただのこのクロノスタシスという新しい楽曲はその実、めちゃくちゃ本来のBUMPらしい曲でもあると思うんですよね。

これはクロノスタシスがリリースされ少し経った後、藤原の誕生日を祝うファンにお礼という形で公式Twitterでポストされた動画。
クロノスタシスという楽曲をギターと藤原の声だけで聴くと、かなり『懐かしいBUMP』を感じられる気がします。それこそインディーズの頃に出した一枚目のアルバム【FLAME VEIN】の匂いすら感じられるような。
これを聴いてBUMPというバンドの変わることのない芯の強さと、同時にそれに反し時代と共に変わっていく『面白さ』もこの曲に感じました。
変わらないことは『安心』する、でも変わっていくことも『楽しさ』として受け入れる。そういう、原始を崇拝する無垢な自分と、変化を楽しいと思えるようになった大人になった自分の同居を強く感じた一曲で、そういう意味でもこの曲をピックアップさせてもらいました。

 
2. 境界線 / amazarashi

境界線の向こう側で 足掻く人々 嘆く人々 目にしながら 
沈黙することを選択するならば 僕らは共犯者 人たりえたのか

amazarashiから一曲を選ぶのはかなり困難を極めたましたが、やはり2022年を象徴すると言われるとこの曲ではないでしょうか。

音楽は人から生まれるもので、その人は『この世界』に生きている。
人々の心の動きがリズムやメロディに乗せて出力されるのが音楽。
創作と世情は切り離すべきと主張する人々もいますが、僕個人としてはそれが好ましいかどうか以前に、不可能だと思っています。
恋人を歌にする人も、母親を歌にする人も、言ってしまえば昨日の晩ご飯を歌にする人も、なんら変わらない。すべて『自分に都合のいい題材』を『正しい題材』と判断して創作を行っているだけであり、それが正解か不正解かを外からヤジを飛ばして決めることが本当にできるのでしょうか。政治や紛争を『間違った題材』だと誰に決められるのでしょうか。もちろんそれは同時に人個人が何かを『正しい題材』だと断言することもできないということでもあるんですけど。
この曲は去年の頭にリリースされた曲、つまり件の戦争以前に作られた曲。でもこの曲はまるで未来を見てきたかのように私たちの心に突き刺さります。それはこれらのことがなんら新しいことではなく、何度も繰り返され、何度も記憶の外に追いやられてきた世界のいわば鏡のようなものだからではないでしょうか。
楽曲がきっかけだっていい、アニメでも漫画だっていい、なんだっていい。難しくなくてもいい。深くなくたっていい。そもそも考えなくてもいい。
そういう音楽もあるということを知るために、それを心の片隅にでも置いておくために、この曲は機能するのかもしれません。まぁもちろんそれも全部含めて、音楽はどこまでも自由なんですけどね。
 
3. インザバックルーム / syudou
辿り着いたぜアンタの背だけを追って
この呪縛と束縛逃れてやるから  
個人的に2022年一番痺れた曲です。最高。
TVアニメ『チェンソーマン』第5話エンディング・テーマですが、今回はチェンソーマンの話は一切しません。それは僕の役目じゃないので。
この曲はsyudouがチェンソーマンにかこつけて『自分』と『米津玄師』を歌った歌です。断言するな。まぁこれもうるせぇ外野の声の一つということで。
元ネタとして、海外産ネットミームの一つ『The Backrooms』というものがあります。詳しくはググって欲しいですが、世界の裏側に常識では考えられないような広大な部屋(不思議空間)があり、そこに迷い込んでしまった人は永遠にこちら側の世界に生きて戻ってこられなくなるというネットミームの都市伝説のようなものであり、それをsyudouは『憧れに出口はない』という表現でチェンソーマンのデンジとマキマ、そして自分と米津玄師を重ねているのがこの曲です。

さて、この曲を語るためにはその前に聴く必要のある楽曲がいくつかあります。
まず一曲目は米津玄師がハチ名義で最後に発表した『砂の惑星』です。

何もない砂場飛び交う雷鳴 しょうもない音で掠れた生命
今後千年草も生えない 砂の惑星
こんな具合でまだ磨り減る運命 どこへも行けなくて墜落衛星
立ち入り禁止の札で満ちた 砂の惑星
この曲は皆さんご存じの通り、かつてニコニコで一世を風靡したハチが昔と様相が変わってしまった(ようにハチからは見えた)ニコニコのボカロ界隈をかつての盛り上がりを感じない草木も育たない砂の惑星と表現したことによってボカロ界に衝撃を与えた曲であり、それは当然syudouを初めとしたその時まだ精力的にニコニコに投稿を続けていたボカロPから怒りを買うこととなりました。
よって数々のボカロPが砂の惑星へのアンサーソングを作りそれに反論をするというムーブメントが巻き起こり、多くのボカロPは『なんだこの老害懐古野郎』というスタンスで多く楽曲が作られましたが、syudouはひと味違いました。
syudouにとってハチは強すぎる憧れであり、でもその憧れから自分を否定されるような楽曲が世界に産み落とされ、非常に複雑な感情から楽曲を作ることになります。
それが『ジャックポットサッドガール』という楽曲です。

ねぇ先生 ここ無法地帯
あなた曰く既に廃れ枯れたアネクメーネ
草木生えず人類の住めなくなった
チープでキッチュ小惑星
 
ねぇ先生あなたバカじゃないの 
未だ滾る感情を知らないの
凝り固まってんならお勉強
ここで無垢で無知で無為な賛美を見せつけるわ

そしてそれから二年後の2022年夏に投稿された『いらないよ』
日from月 溶かす青春 有給も  
全てアナタの背を追うため注ぎ込んだ
荒廃した砂場から生存報告です
これは最大限の愛情表現
且つ終えるメロディ
そして2022年秋、syudouは米津玄師がOPを担当するアニメのEDを作ることになり、インザバックルームを発表する。
できればもう一度このタイミングでインザバックルームを再生してくれ。全然違う曲に聞こえると思うから。
こんなに上質すぎる関係性のコンテンツが現実の人間から生み出されているの、信じられるか? ここまで好き勝手やっといて「え? これですか? チェンソーマンに書き下ろした曲ですけど?」みたいな顔するのヤバすぎる。最高だよ。

ちょっと待ってやっぱまたループ
like the backroom 憧れに出口は無い
実際まだ出れないんだけど
アナタなんか知ってる?

そして憧れは無限ループ。どんだけ結論を出した気がしてもそれでも死ぬまで出られないんだよな。わかる。
 
4. ETA / 米津玄師

さあ起きて 子供たち
今日は この庭を綺麗な花で飾りましょう
もうおやすみ 古い友達
どうか安らかな夢で眠れますように
るるる

ということでそんなラブコールを受けまくっている米津玄師からも一曲。
おそらく世間が去年印象に残った米津玄師の一曲といえば『KICK BACK』なのでしょうが、僕はこの曲を上げます。逆張りオタクか?
実際2022年の米津玄師はKICK BACKを始め豊作すぎてマジで音楽の悪魔と契約してるんじゃないかって話題でしたよね(?)
PS5のCMソングとしてドロップされたタイトルが体をまったく表していない攻めすぎ最高キショ変態曲の『POP SONG』や古典落語の演目をテーマにしMVも話題になった『死神』などなど。特に死神のMVは米津のオタクとして最高過ぎて死ぬ間際に見る夢かと思った。
さてこの『ETA』はシン・ウルトラマンの主題歌であるM八七のカップリング曲です。死神もそうですが米津玄師のカップリングは毎回オタクを的確に刺しに来るんですよね。表題曲しか聴かないのはマジでもったいないですよ。
このETA、何がすごいかっていうと米津の古(いにしえ)のオタクを殺しに来てる部分。
昔々、あるところに『花束と水葬』というアルバムが存在していました。
米津が2010年に自主制作として同人で発表したハチ名義の1st.Albumです。
これはもう売れ線とかそんなものは全く考えていないハチ自身の独特で一見理解し難い世界観がこれでもかと発揮されてる一枚であり、間違っても一般受けするような代物ではないのですが、その頃の作風を売れっ子スーパー国民的ソングライターとなって”しまった”米津が2022年にそれでも立ち返ったイカれすぎてる一曲です。
リズムがとりにくいイントロ、一体何を語っているのか受け取りにくい歌詞、そもそもサビで歌ってる言葉と歌詞カード表記されているものが違う、わざとピッチを大げさにずらした気持ち悪いコーラスが響く間奏、増幅しすぎて普通のスピーカーではおおよそ再生しきれないほどの低音、脈絡もなくリズムをぶち壊すようなストリング、狂気を演出するひたすらに不気味で長すぎるアウトロ。
今マジで今の米津しかしらない一般ピーポーがこの曲を聴いたときにどんな顔するのか誰か観察させてくれ。
確かにMoonlightなどの昔のハチの匂いを感じる曲は時たまありますがここまでガッツリ『あの頃のハチ』を想起させる曲を書いてくるとは想像できませんでした。
学生の頃に部屋を暗くして一人イヤホンでハチの暗い曲を聴いていた自分がフラッシュバックして体調悪くなりかけた。いやマジで。
この曲を嵐やHNKに楽曲を提供している国民的ソングライターが嬉々として発表するの最高にロックだと思います。これからも末永く狂っててくれ音楽の悪魔。
 
5. ジャイボール / バーバパパ

高校ミュージカル最高峰の球技がここに
全国高校jaiball選手権公演がお盆の時期から始まります
舞台はここjaiballの聖地大阪のバトル公民館
ハードスタイルを武器に勝ち上がって参りましたのは赤コーナー 西松屋山東高校南高北校 全国公演初参加
対する青コーナーは 大分及熊本九州国際経済産業工業学院高校学園 去年の準優勝チームです
さあまもなく戦いのまぶたが切って落とされました

まぶたを切るな。

みなさんは謎に包まれたミュージシャン、バーバパパをご存じでしょうか。
YouTubeにてEDMなどを中心に常識に捕らわれない音で人間の不安をかき立てるような楽曲と、それに対応する自身で作成した狂気を演出する3DCGを用いたMVをひたすらに外部とのコミュニケーションを行わないまま投稿し続ける存在です。あまりにも素性が不明すぎて人間であるかどうかすら疑われている始末。(去年予告なしに突如として開始されたライブ配信にて3DCGで作成されたアバターを介して日本語で地球人と交流できることが確認された)
めちゃくちゃにアングラなクリエイターなのだがその実チャンネル登録者数は60万人を超えている。やっていることのニッチさを考えるとあり得なさすぎる数字。
代表作としてはネットミームの『検索してはいけない言葉』に選ばれたり、HIKAKINがMVを再現したことでおなじみの【ウ”ィ”エ”】という、音楽に合わせて金〇恩に似た口と目が縦に曲がる男が、亜空間に閉じ込められた教室と思しき場所でコサックダンスのような踊るひたすら不気味な動画だろう。文字に起こしてみるとこんなのが4000万回も再生されてるのヤバすぎだろ。人によってはショッキングな映像と感じるかもしれないのでサムネを張るのは控えておきます。気になる人は調べてみてください。犬かわいいよね。
そんなバーバパパが2022年お盆の時期に投稿したのがこのジャイボール。
ストーリーとしては大阪のバトル公民館で行われるあの超有名国民的ミュージカル球技である『ジャイボール』の全国公演大会がjai吹奏楽部の演奏に乗せて生中継されるというものである。は?
弾力のある蜂の巣ボール(弾力のある蜂の巣ボールってなんだよ)を使う、どうすれば勝利なのか、そもそも勝ち負けが存在するのか、それ以前にスポーツなのかすら定かではないこのジャイボール。ただし実況が試合中「アタックフェーズを使い果たします」と語っていることからある程度のルールや制限は設けられているっぽい。ちなみに聞いてわかるとおり楽曲は吹奏楽楽器では当然鳴らせない音のみで構成されています。いやマジでなんなんだこれ。
何一つとして理解は追いついていないのに、選手たちの熱い想いや手に汗握る試合展開に謎にハラハラしたり、お互いのチームがボールを保持したタイミングに併せて楽曲に使われているサウンドが細かくその都度変わったり、バトル公民館を飛び出して街の中で無重力バトルを繰り広げられる間それに対応して楽曲のリズムが崩されて浮遊感を演出したり、終盤そもそも試合内容の予測に足る情報が何一つ掴めていないのに関わらず、なぜか予想を裏切る(と頭にすり込まれている)展開に胸が躍ったりするバーバパパの『まじでなんもわからないのになんかすごいのはわかる』という作風が惜しげもなく発揮された名作である。もう自分でも何書いてるのかわからなくなってきた。
音楽というものはこれほど自由で楽しんでいいのかということを教えてくれるのがバーバパパであるのでもっと人間たちに流行って欲しい。流行るかこんなもん。

動画を見た後はコメント欄やこのpixiv百科の記事を見ると理解が深まると思う。深まるのか????ほんとに???????
6. はじまりのセツナ / 蠟梅学園中等部1年3組

見慣れてない景色がキラリ光った
君が名前を呼んでくれたからだよ
クラスメートじゃなく 友達になりたい
君に思っていたの 密かにずっと

2022年のアニメの話をしましょう。さっきチェンソーマンの話はしなかったので。
特に印象に残ってるアニメは『明日ちゃんのセーラー服』ですね。いやまぁ年明けてから見た作品は本記事ではレギュレーション違反なのであの作品は抜いてって前提ですけど。全人類2022年激やばEmotional最強Animationである『Extreme Hearts』を絶対に見ろ。絶対とは絶対です。
話を戻すと明日ちゃんは『スーパーカブ』の原作イラストを書いている博さんが書いている漫画ということで名前は知っていましたが、アニメが始まるまではほぼノーマークでした。タイトルとイラストからは全く内容を推測できないかったので興味が向かなかった訳ですね。ただ一話見た瞬間『この作品はやべぇ』となったのを覚えています。CloverWorksが強すぎるのもあるけど、その後当然買った原作を読んだときに画力と質感で殴ってくる原作もヤバかったのでなるようになったのだなと思いました。

こいついつも同じこと言ってて芸がないな。オタク辞めたら?
戯言は置いといて、OPソングである『はじまりのセツナ』の作曲者は乃木坂の曲を多く手がけている『杉山勝彦』で、恥ずかしながら僕はこの曲で名前を知りました。
女性アイドルソングというものにめっきり触れてこなかった自分の人生でほぼ初めてといっていい邂逅だったのですが、街やテレビなどから聞こえてくる断片的な音のテイストを知らず知らずにすり込まれていたのか不思議と耳馴染みがあるなぁと感じたのを覚えています。ちなみにジャニーズは親の影響で小さい頃からめちゃくちゃ聴いてたりします。
等身大の感情を煌びやかなユニゾンのメロディーに乗せて楽曲を編む技術は自分にとってかなりの衝撃で、確かに今まで自分が通ってこなかった道だなぁと感じたので2023年はより一層聴いてこなかった音楽に触れていこうと思います。きっと、おそらく……。

 
7. フラッシュバッカー / 結束バンド

光る朝が 朝が
あまりに眩しいからさ
ちょっとさ らしくはない
未来も信じちゃうよ

個人的意見を取り去って2022年話題になった作品と言えば『ぼっち・ざ・ろっく!』であるのは疑いようもない事実でしょう。
僕のTwitterを知っている人は僕が原作1巻を発売日に10冊買っているのも、二次創作として楽曲を作成していることも、そして今現在この作品に対して非常に複雑すぎる感情を抱いているもの周知の事実であるとは思いますが、それでも今冷静になって振り返って見るとこのアニメが世界に『鳴る』意義というものは確実にあったのだろうなと思います。今回は曲について話する場なのでこの辺で。
さて、この楽曲はアニメ本編では使われていないものの、最終話放映直後に公開された詐欺……ではなく本PVにて解禁され話題になった楽曲。
ずっと下を向き、太陽から逃げてきた後藤ひとりが歌う『朝』の歌はこうなるのか。これほどまでにぼっちの心に寄り添ってそれでも新しい景色を見せてくれるような天才的な歌詞を生み出した音羽さんには脱帽するほかない。参った。
サウンド的にもこの楽曲はめちゃくちゃ素晴らしくて、まず、現段階で結束バンド唯一の『バラード』で、ロックという言葉から一般に想起される「ギターと孤独と青い惑星」のような『ギターロック』や、「あのバンド」のような『パンク・ロック』とも違うゆったりとしたテンポで展開していくものです。
現代では曲は短い方が『有利』です。音楽サブスクリプションの収益の仕組みでは多くリピートされやすいテンポが早くて疾走感のあるノリのよい楽曲の『価値』が高くなっています。なので多くの現代人はテンポが速い曲を聞き慣れていて、バラードをあまり聴かない傾向にあり、音楽活動をしていてそれを肌に感じることも少なくありません。もしかしたらそれは言い過ぎと思う人もいるかもしれません。しかしYouTubeSpotifyに否応にも表示される『再生数』を見るとこの傾向は確実にあると考えています。
だからこそ、この曲が多くの人の心を掴んでいるのがとても誇らしくうれしいと感じるのです。ロックの本質はどんな風に演奏するかではなく『何を歌うか』だと僕は考えているので、その本質をより感知しやすいバラードが世界にもっと鳴り響いて欲しいと、日々強く感じています。マジでみんな本当にもっとバラード聴いて欲しい。大音量で泥臭いギターに包まれながらでも歌詞が聴き取りやすくて胸にまっすぐ溶け込んでくるバラードでしか感じられない『エモさ』は本当にあるから。
…………もう少し語っていいですか?
この曲のめちゃくちゃ好きポイントは2番のAメロの途中、こんなちっぽけな僕の〜からのバンドアレンジで、喜多のギターだけが今までと同じリズムを刻む中、ぼっちのギター、山田のベース、虹夏のドラムまでもがそのリズムの軸から外れてそれぞれ轟音を響かせる。これは近頃のロックバンドでは珍しく新しいアレンジ、とまでは言えないものですが、この『崩し』は楽曲を伝える上でのフックとして絶大な効果を生みます。
今までの予想を裏切る音を与えられるとリスナーはハッとして現実に戻されるような感覚になります。「ぼーっと聴いてんじゃねぇーよ!!」という結束バンドからのメッセージとも受け取れます。
しかもこのアレンジ、バンドをやったことがある人ならわかると思いますが、めちゃくちゃ息を合わせるのが難しいです。いつもバンドのリズムを支えているドラムとベースがその軸から外れるとあっけなく簡単に演奏がぐちゃぐちゃになってしまいがちです。でもフラッシュバッカーではいつも支えている虹夏もいなくなって、楽曲を下から支えるのは喜多一人だけになります。この楽曲は厳密には作中曲ではないので本当に結束バンドとして鳴っている音なのか、は議論の余地がありますが(EDソングなど喜多ボーカルではない曲のように、作中世界線に存在しない曲、いわばキャラソンのようなものの可能性もある)
それでも喜多が三人を支えるというのは文化祭ライブを彷彿とさせるようで感情が高ぶるものではないでしょうか。(本当に喜多にこれが出来るのかに関しては一旦置いておくとして……)
そういう部分を想像しながらアルバムを聞き返してみるのも面白いと思いますので是非。

 
8. 一冊のアロー / 櫻川めぐ

君が笑った 空が光った
それは運命で奇跡で
合図だ

積んでるエロゲのOPソングを紹介するの正気ですか???????
ゲームは積んでるけどこの動画は300回ぐらい再生してるので許して。
神曲しか作れない男、堀江晶太が作曲のこの曲ですが、ことごとくエロゲソングの定説から外れまくっていて初めて聴いたときの衝撃がすごかった。
このハミダシクリエイティブ凸を出している『まどそふと』はオープニングテーマに堀江晶太を起用するのがお家芸なのですが、今までの流れからも想像のつかないギターのカッティングとドラムのゴーストノートを多用するミドルテンポのおしゃれ曲調で引き出しの多さに驚くと同時に、歌詞の真摯さがすごい。エロゲソングのクレジットの【作詞作曲:堀江晶太】はもう慣れたけど【ドラム:ゆーまお】はまだ慣れてなくてめちゃくちゃ面白くなっちゃう。
前作であるハミダシクリエイティブはプレイ済みなので作品の雰囲気は熟知していたはずなのにOPだけでハミクリの新しい姿をまじまじと見せつけられた。
タイトルもすごい。この作品はヒロインが全員何かしらの創作活動を生業としているクリエイターに焦点を当てた作品で、自分の精一杯を込めて作り出す渾身の作品と、大切な人への偽りのない正直な気持ちを矢になぞらえて【一冊のアロー】というタイトルとひらめいて やめて また考えて 渾身の一節を編む その一秒を束ねて この一生を込めて 君を想いながら放て!】【キラキラでボロボロなタマシイの矢 夜を越えて 君に向かって ガラクタさ それが何だい 君を世界ごと 射貫いてやるという名歌詞の数々、マジでよすぎる。落ちサビの合図だは何度聞いても痺れる何度も言いますがゲーム本編はまだ起動すらしてません。早くやれ。
最後に前作、ハミダシクリエイティブの布教をして紹介を終わります。

※セールは終了してます
9. Goodbye Innocence / She is Legend
※公式の動画ではありません。

あの日の雪、銀色、きみ、吐く、
息、真っ白、昨日のように覚えてるよ
もうすぐさよならしなくちゃいけないんだよね
ただきみだけ

AirCLANNAD、アニメAngel Beats!などでシナリオを担当している泣きゲーのパイオニア、そしてソングライターとしても活躍する麻枝准がシナリオを担当しているソシャゲ【ヘブンバーンズレッド】
シナリオだけではなく、作中の戦闘BGMとしてやなぎなぎ歌唱のボーカル曲が数多く使われていて、そのすべてが麻枝が作詞作曲担当。
今回紹介するのはBGMとしての扱いではなく、その主人公たちが組んでいる作中バンド、茅森月歌ボーカル担当のXAIと、朝倉可憐ボーカル担当の鈴木このみと、カレンちゃんのスクリーム担当に ayumu(Serenity In Murder)を迎えた劇中を彩るエモーショナルでラウドなロックバンド『She is Legend』の一曲。情報量が多すぎる。作詞作曲はもちろん麻枝が担当。この男メインシナリオもイベントシナリオもほとんど担当しながら毎月イベントボスの戦闘BGM用にShe is Legendの新曲を書き下ろしている。メインストーリーで使われているやなぎなぎ歌唱の曲ももう10曲以上ある。狂ってるとしか思えない。
このGoodbye Innocenceもその一つで去年の水着イベントで発表された曲で、外来生物により人類は衰退し荒廃した世界が舞台なので基本に重苦しい雰囲気になりがちなヘブバンでやっと平和で楽しいイベントを楽しめると思いきや、メインシナリオの展開にめちゃくちゃ関連のあるかなり重めなシナリオになっていて「だーまえお前ええええ!!!!!」ってなっていました。
この曲を紹介させてもらったのはサビのツインボーカルアレンジの素晴らしさを語りたかったからで、XAIと鈴木このみという歌唱力おばけタッグの相性がよすぎるせいで、【ひとつなぎの歌詞を2音ずつ交互に歌う】という普通は絶対やらない奇抜なアレンジを成立させるだけではなく、曲そのものの売りである『切なさ』を演出することに成功している。
作中で実際にこの曲を登場人物たちが作成している時「サビを二人で2音ずつ歌ってみようよ」とギターボーカルの月歌がメンバーに提案するのだがメンバーからはそんなの成立するのか?という当然の疑問が返ってくるシーンがある。俺も当然そう思ったしその時は「はいはい、いつものだーまえの奇抜アレンジね、最初は目新しいけどやっぱり奇抜すぎて印象は結構難があるんだよなー」と高をくくっていたら、シナリオ終盤のライブシーンで度肝を抜かれてしまった。いやこんなケミストリーあるのか??????どちらかというとサビにしては平坦なメロなのにめまぐるしく歌唱者が変わることによってドライブ感が生まれて、その二人で歌っていたメロディーをサビ後半に一人で歌うことによって切なさとか喪失感が付与されている。バックのドラムの攻め立てるようなフィルインもそれに一役買っている。本当に数ミリの掛け違えで破綻する奇跡の組み合わせで成り立っている音楽という印象でShe is Legendの曲で一番お気に入りです。ヘブバン、楽しいし、最近クリアのハードルも下がったからみんなやろう。
10. Lazyroop / 猫又おかゆ

ループループする毎日が
彩りに溢れてくよ
きっと さんざめく花火の側に
香る夢のように
こんな ループループする毎日が
かけがえない宝石のように
いつか 大切に思えるのなら
週末の夜も 煌めいて
憂鬱な夜も 愛しいね

2022年は一年を通してVtuberにハマった一年でした。
もう二度とハマることはないし、近づくこともないと思っていたコンテンツ、それは言ってしまえば自分の心を守るための生存本能のようなものだったと今では思いますが、日々の中にそれがない生活というのはもう考えられないぐらいになってしまいました。ある意味ではそれは退化である側面もあるかもしれませんが、それでもこの一年は自分にとって必要な一年だったような気がします。
去年行われた猫又おかゆのライブで最後に歌われたこの曲はニアやフロムトーキョーでおなじみの夏代孝明が作詞作曲を担当していますが、夏代さんらしいキャッチーなメロと透き通るような雰囲気が特徴の曲です。ってか歌詞のおかゆの解像度が高すぎる憂鬱な夜も愛しいねで曲を締めるのめっちゃ好き。
もちろんもぐもぐYAMMYもめちゃ好きだけどあの曲は2021年の曲だから……知ったのは去年ですけど……。知らない人がいたらこっちも聴いてください。毒気がある女の子ってみんな好きでしょ。
ピノキオピーの毒気とおかゆ人間性の親和性が高すぎる。かわいいサウンドとポップなメロに眉をひそめられそうな歌詞を添えるの天才過ぎる。そしてそれを受け入れる懐を持つ猫又おかゆさんの素晴らしさよ。
 
ってな感じで去年印象に残った曲を語らせていただきました。気になる楽曲があったら是非聴いてみてください。今年も沢山の音楽に出会えるようにアンテナを高く張っていきたいとおもいます。
 
 
 
2. 境界線 / amazarashi
3. インザバックルーム / syudou
4. ETA / 米津玄師
5. ジャイボール / バーバパパ
6. はじまりのセツナ / 蠟梅学園中等部1年3組
7. フラッシュバッカー / 結束バンド
8. 一冊のアロー / 櫻川めぐ
9. Goodbye Innocence / She is Legend
10. Lazyroop / 猫又おかゆ
 

くすく的2021年の10曲

みなさんご無沙汰してます。えぇまぁ、本当にご無沙汰してます。2個前の記事が去年の10曲記事ってマジ?もう実質ブログやってないだろそれ。

ということで、年の最後ぐらいは更新しようと毎年恒例(2回目)の今年の10曲ブログです。

今年もマジで良い曲が世界に産み落とされていったので僕の勝手な好みですが、みなさんに紹介して行きたいと思います。

タイトルで察しろ。間に合わなかったんだよ。明けましておめでとうございます。

 

 

 

1 ぜんぶあんたのせい CIVILIAN

www.youtube.com

生まれた瞬間から現在まで続くテスト
気づけば背後にそびえる巨大なスコアボード
神様 俺は可能な限り善人でいました
なぁ これくらい見逃せよ

 

一曲目はCIVILIANの『ぜんぶあんたのせい』です。

この曲、実は世に産み落とされたのは3年以上前で、ずっとライブだけで演奏されていたもので、ずっとファンの間で音源化が強く望まれていた曲です。
この曲ができてからアルバムも一度出しており、ライブで圧倒的盛り上がりを見せるこの曲が一向に音源化されない状況でファンの間では『歌詞が過激すぎてリリースNGになったのではないか』という説が囁かれるほどでした。
そんな楽曲が今年CIVILIANのメジャー2枚目のアルバム『灯命』で満を持して収録されました。
ディストーションの掛かったギターのエグいリフとリスナーを叩きつけるように紡がれる厳しい言葉、しかしそれは僕らに一番必要な言葉なのかもしれません。
まだ聞いたことがない人は一度聞いてみてください。きっと今までの価値観をぶん殴ってくれます。マジでCIVILIANが売れてない世界信じられねぇ。

 

 

2 ハイゲイン ヒトリエ

www.youtube.com

どんな面下げ
その姿にまだ縋り付くかって?
壊れたらその時に考えるよ

 

敢えて、この話をしたいと思います。wowakaが亡くなって2年が経ちました。
今だに世界では「wowakaがいないヒトリエに価値はない」という声が響き渡っています。
ボカロシーンを作り上げ、バンドを組み自らもプレイヤーとして強大な力を見せ、バンドとして大進化を果たしたアルバム『HOWLS』を発表した直後の出来事でした。
まぁ亡くなってしまえばもうこの世にはいない人で、大黒柱がいなくなったバンドなんか、そのバンドを聴かなくなる理由として十分すぎるほど十分です。そういう人たちはきっと正しい判断をして、正しい消費をしているのでしょう。それを責めることなんて絶対にできません。
wowakaの存在はあまりにもデカすぎて、ただのファンである僕ですらこれほどまでの喪失を味わったのにじゃあメンバーの精神にはどれほどのダメージを与えたのでしょうか。想像すらできません。
活動を再開する時、前のヒトリエを真似るつもりはないとヒトリエは語っています。それは正しいと思います。どこまでいってもwowakaは別の人間です。無理です。
でも、このバンドにはwowakaに人生を歪まされた三人がまだ残っています。
きっとこの言い方はあまりよくないと、わかっていますが、でも僕らは死別じゃなくても他人と関わって、ポジティブな意味でも、ネガティブな意味でも歪ませあって生きています。
そんなバンドが鳴らす音楽も聴きたいと、僕は感じてしまうのです。
wowakaとは別の人間が、でもwowakaと出会わなければ作らなかった曲を作っている。
勝手に死んで俺らを置いていったんだから、それを味わうぐらい許せよ。ということです。それが僕個人としてのwowakaの死との向き合い方でした。
三人になったヒトリエはきっと想像を絶する世間からの目という重圧を跳ね返して曲を作っています。
どうか、時間さえあれば『今のヒトリエ』を聞いてみてください。別のものだけど、別のものだからと言ってそれが悪いものだとは限りません、もちろん、好みはあるだろうけど、それはそれ、これはこれ。

 

 

 

3 後日談 じん

www.youtube.com

馬鹿な大人たちが 嘲笑った言葉で
救われたっていいだろう

 

2曲続けてボカロ出身のアーティストですね。
お前暗い曲しか紹介しないやんって言わないで。
この曲をできれば学生時代に聴きたかった。今の少年少女が羨ましい。

 

 

 

4 一途 King Gnu

www.youtube.com

さあ来世に期待ね
光れ閃け猛スピードで
一途に向かいます
余力を残す気はないの

 

いやマジでこの曲ズルいだろ。
全部サビみたいなキャッチーなメロディーに全然キャッチーじゃないバカみたいな人外テク伴奏ぶつけるの本当にズルい。
呪術廻戦ゼロ見に行きます。

 

 

 

5 うまぴょい伝説

open.spotify.com

うまぴょい!うまぴょい!

 

今年の曲といえばまじでこれでしょ。
いや僕はウマ娘マジでやってないんですけど、それでもこの曲が良いことだけはわかる。
実際こんなにはちゃめちゃやってるのに聞いた人がつい口ずさんでしまう曲になるの本当にどうやってんのって感じだ。
マジでこの曲はすごいのでウマやってなくても一度聞いてみようね。

 

 

 

6 さんさーら ARuFa

www.youtube.com

頭 体 手足通してまた足跡が増えた

 

一般人の曲です。どこが一般人やねん。
この曲はアニソン界でマジマジで評価されてる僕が一番好きなアニソン作曲者と言っても過言ではない田中秀和さんが作曲された曲です。
転調やその他音楽的にマジでやべーことをはちゃめちゃに楽曲取り入れながらもキャッチーに仕上げてしまう作曲界のバケモノみたいな存在です。ARuFaさんマジで本当にすげー人に頼んでて草

 

 

 

7 Beautiful Beautiful androp

www.youtube.com

消えたくって賭けた来世 首くくるふりをした
死ぬまで生きる意義も意味もない
苦しみ消す憎しみ断つ方法教えて

 

こちらは挑戦的なアレンジや超絶技巧な演奏が特徴のandropの今年出したアルバムに収録されている一曲目です。
正直、ここ最近のandropはあまり音楽シーンで目立っているとは言えない状況で、昔ほど熱心に聴いていなかったのですがこの曲が発表された瞬間その状況がぶっ飛びました。
ラップ的な言葉を詰め込む音楽に、トラックメイク的なアレンジとバカウマ演奏との共存、そしてサビは一転してメロディックに歌い上げる。
長年このバンドを聴いてきたけどまだこれほどまでのポテンシャルが残っていたのかと驚かされました。MVもめちゃくちゃに良い。

 

 

 

8 魔法の歌 PEOPLE 1

www.youtube.com

僕はそういう人じゃないから
背中をさすってあげられない

 

なにそれ知らないという人も少なくないかもしれません。
しかし、この曲はそういう人にほど聴いてほしい曲です。
自分も初めてこの曲を聴いた時は、このバンドを知らなかったどころかバンドかどうかすらもわからなかったのです。
音楽はある程度、この人が歌っているから、というようなバイアスがかかってしまうものであって別に僕はそれを悪いことだとは思いません。
しかしこの曲はそんな全く知識がない状態で聴いても、この歌に共感できるのであれば関係なく素晴らしい曲だと感じることができると思います。
この曲を初めて聴いた時はボーカルの名前も年齢も見た目も、なにも知らなかったのに、このMVひとつで泣きそうになってしまう程、心にグッときました。
どうか、この曲を知らない人は、なにも考えず再生してみてください。魔法の歌がそこにはあります。

 

 

 

9 知らない 古川本舗

www.youtube.com

街の夜に、君の声と、閉じた窓とレコードの音。
2時を過ぎて
甘い夜と、黒い猫と、想いの色。

 

レジェンド的ボカロPの古川本舗が長年の沈黙を破り6年ぶりに世界にドロップした新曲です。
人間、本当に良い曲に出会うと笑っちゃうんだなと感じた曲です。
楽曲はシンプルながら真に迫ってくるバラード、マジで一人の時に聴くと沁みる。
夜に電気を消してヘッドホンで聞くのがおすすめです。

 

 

 

10 Flare BUMP OF CHICKEN

www.youtube.com

巨大な星のどこかで いくつの傷を抱えても
どんな落とし物しても 全部 塗り潰す朝

 

最後に紹介するのは紅白でも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたBUMPが結成記念日にリリースした作品。
当時はベースのチャマが不祥事を起こして活動を休止しており、三人の状態で制作、レコーディングが行われてベースは藤原によって演奏されました。
歌詞について、当時は色々な憶測が流れました。
flareという単語はポルトガル語に翻訳すると「chama」となり、藤原が活動休止しているチャマに宛てて書いた歌なのではないかという声が上がり、ファンはそれを感動的に捉え、そうじゃない人には悪いことをして活休しているのにメンバーが励ますのはちがうんじゃないかとか。
確かに、活休しているメンバーについては傷ついた人が存在して大変デリケートな話題であり、それを肯定するような楽曲はよく思われないのは当然です。
しかし、この曲は本当にチャマに向けて歌われた曲なのでしょうか。
もちろん楽曲の解釈は人それぞれです。ましてや楽曲は自由に聞き手に受け取られるべきと何度も主張するBUMPというバンドの楽曲であればなおさらです。
しかしその上で、僕はこれはチャマに向けて歌われた楽曲ではないと、そう思うのです。
藤原はこの曲はコロナの情勢があってそこで色々考えて出来上がった曲と話しています。確かにコロナで抱えた消失感ややるせなさを歌っているようにも聞こえます。
しかし、それだけじゃないようにも感じます。やっぱり聴いていると言葉の節々にチャマを感じて仕方ないのです。
そこで気づいたのはこの楽曲は確かにチャマのことがなければこういう形で響くことはなかったけど、それはチャマに『向けて』書かれた証明にはならないことです。
この曲は、大好きなバンドに、今までなかったようなスキャンダルが発覚して、でもそれでもバンドや人は好きで、でも世間はそれをバッシングして、自分も彼の行動は肯定できない、でもそれでも、嫌いにはなれなくて、という状況そのものに『孤独』や『苦しみ』を感じてしまう。「ファン」に向けても書かれているんじゃないかと、僕はそう感じたのです。
だからこれはチャマに向けての応援歌ではなく、チャマのことやコロナで心を痛めている『僕らに向けて』歌われたのではないでしょうか。
楽曲の解釈は自由ですが、そういう捉え方もあると、心の片隅にでも置いて聴いていただけるととても嬉しいです。

 

 

 

さて、年が明けてしまいましたがみなさんの2021年はどんな曲が鳴り響いていたでしょうか。今年はできるだけブログを更新していきたいですね。今年も何卒よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

open.spotify.com

 

 

 

 

 

13年間初音ミクのオタクをやってきたオタクが選ぶプロセカでカバーして欲しいボカロ曲

タイトルの通りです。
一応言っておくと全てのボカロ曲を網羅しているわけではない上に、プロセカの読み込みも至らない点があるかもしれませんので「それは違う!」や「解釈違いです!」や「あの曲がない」など意見があるとはおもいますが、全ての思考をトレースはできませんので予めご了承ください。
一応全てのユニットに5曲ずつ選ばせていただきました。懐かしい曲が多めになったような気がします(新しめだったら普通にワンチャン実装あるかもしれないし)。知らない曲などありましたらリンクも都度都度貼っていますので是非聴いてみてください。


それでは御託はこれぐらいにして紹介していきたいと思います。

 

 

 

 

Leo/need

 

01 Strangers / Heavenz



気付いてたんだ 本質も本来も
分かってたんだ もうずっと前から
“誰かの為” 自分の為だ
それでも 貴方は 貴方は 貴方だけは

 

とにかくレオニにはカッコ良くて爽やかな曲を歌って欲しいと思ってまずこの曲。
9年前の曲ってマジ????
一歌、絶対Strangers好きでしょ。賭けてもいい。

 

 

02 非実在少年は眠らない / moff(もっふーP)



イカラ色に染まる空を 僕は何と名づけよう
「耳を劈(つんざ)く声の主」、それはテレキャスターでしょうか?


憂いに振った選曲。選んだ後に一歌の愛機もテレキャスターなことを思い出した。
マジでTHE高校生な曲なのでレオニにカバーして欲しいプロセカくん全員高校生だろ

 



03 リンネ / ハチ



またどうか 愛を 帰りの電車は何処にも無いわ
教えてダアリン ねえダアリン 声が聞こえた ような気がした


え? これがレオニなの? ニーゴじゃない? という意見が出そうですが、ニーゴが歌うリンネよりレオニが歌うリンネの方が興奮しません?しないですか?……そう。
本家レオニは曲の世界観よりもサウンドを重視して選曲されているイメージがあり、だったらリンネが似合うのはレオニではないかなぁという思いから選びました。
タイムマシンの咲希の歌声がエモいのでこの曲もあんな風に歌ってくれたら僕が嬉しい。僕が。




 

04 ラストラスト / ぼーかりおどP



捩れた世界の片隅で それでも僕は夢を見る
指先でそれをなぞれ 「.」は「,」に変わる

これは終わりの終わり


ストレートなミクロックといえばと考えた時に思い浮かんだのがこの曲でした。古いけど、最近はこういうサウンドの曲は伸びないのでめちゃくちゃ少なくなった気がする。
レオニのみんながどういう選択をするのかはまだわからないけど、こんな未来になったらいいなぁと思いながら聴いています。



05 ray / BUMP OF CHICNKEN

youtu.be

 

いつまでどこまでなんて 正常か異常かなんて
考える暇も無い程 歩くのは大変だ
楽しい方がずっといいよ ごまかして笑っていくよ
大丈夫だ あの痛みは 忘れたって消えやしない


完全なるお前の趣味だろ、そもそもそれはボカロ曲じゃないという意見も多々あるかと思いますが、これは紛れもないボカロ曲です。 と個人的には思ってます。あとあわよくば藤原基央がプロセカに楽曲提供してくんねぇかなぁと思ってます。俺だけは無限に待ち続ける。今メンバー足りなくてライブできないし、、
咲希の痛みを乗り越えたレオニにマジでこの曲を歌って欲しい。頼むーーーーーーー

 



MORE MORE JUMP

 

01 気まぐれメルシィ / 八王子P



全然アタシに興味ないじゃん キミが好きなのは自分でしょ(Yeah!)
やっぱりアタシに興味ないじゃん その話もう聞き飽きたわ
そもそもだいたいアタシに興味ないじゃん そーやってまた誤魔化して...(もう!)
Be My Boy わがまますぎるBaby 抱きしめてよね!

 

 全国五億人のモモジャンファンがモモジャンに歌って欲しいと思っている曲。

 

 

02 君色に染まる / TOKOTOKO(西沢さんP)


気付いたら君色に染まってるような 何気ない言葉で汚して欲しい
ずっとわからないフリを続けてきたんだ この時が来るまで
もしかして、君と釣り合ってないかな? そんな不安もたまに過るけれど
いつも困らせてばかりでごめんね 好きだよって伝えたい

 

全国五億人のモモジャンファンがモモジャンに歌って欲しいと思っている曲。 その2

 


03 ゆるふわ樹海ガール / 石風呂


ゆるふわ樹海ガールは今日も笑って元気
中学生のタバコを涙で濡らしていく
気付けば毎日が人を殺すような夏でした
今日も新宿前では女子高生が2、3人死んでいる

 
普通に考えてこれをモモジャンに歌わせようとしてるオタク、オタクがすぎるでしょ。
いやでもこの曲歌ってて一番興奮するのモモジャンじゃないですか???絶対可愛い。




04 曖昧劣情Lover / koyori(電ポルP)


たぶん あんたに愛を伝えても たぶん あんたは優しく笑う
"でもね…けどさ…" はっきり言え 思わせぶりな態度で遊んで

いつもあんたを許してしまう やっかいでっかい病にかかる
好きさ 好きなのさ 愛してる 千回唱えても零みたいな魔法

 
どう考えても愛莉に歌って欲しい。雫みたいな魔法…………

 

 

05 ネコミミアーカイブ / 糞田舎P


恋の敵(かたき)のシルエット 重なる夜まであと何時間
泥棒猫はどっちなの? ヘッドホンは外さない方がいいんじゃないの?


モモジャンにもたまにはカッコいい曲を歌って欲しいんですよね。
この曲、最初はなんとなくビビバスっぽいなと思っていたんですけど一度モモジャンが歌ってるの想像したら最高がすぎて無理だった。

 

 

 

 

Vivid BAD SQUAD

 

01 エンヴィキャットウォーク / トーマ


旧ネオン街 三番通り 路地裏猫 欲情論理
パラノイア 振り向かせたい 夜ごと飾るNail
体裁 美貌 理想 奪い合い? 恋のBandit Song
強引 Fallin' さあ尻尾で誘惑の美

どう考えても本家で実装されるシリーズ。アナボで男女ペアでも歌って欲しい。
 


02 花瓶に触れた / バルーン



帰りたいと思った 君は手を握った
その振動は確かに 花瓶に触れた
笑えない話しは 出来ればしたくないんだ
いつも通りなら ここで

どう考えても彰人と冬弥に歌って欲しい。絶対エロい。

 

03 バッド・ダンス・ホール / カラスヤサボウ


そうさ バッドダンスホールへ飛び込んで
今 デッドエンドコースを抜け出して
もう最低で最悪な感情を抱いて飛べ
君の手をとって

ハイドアンドシークじゃつまんないな
今 反攻前夜のクラップヨアハンド
ステップステップエンドブレイクダイブインモッシュピット
ああ、世界をぶち壊してゆけ
キックキックエンドゴー

めちゃくちゃコールアンドレスポンスやってほしーーーーーーー
ビビバスのライブの十八番にして欲しい。

 


04 リバーシブル・キャンペーン / DECO*27



想いはこんがらがって 互いにトンガリ合って
待って待って こんな筈ないよ
赤い糸縺れちゃって 舞台は大混乱で
待って待って こんな筈ないよ

 

3DMVのこはねのウインクまで見えた。



05 シュレディンガイガーのこねこ / daniwellP



天体観測夜空に飛び立つ 子猫こねこの見つめる視線が
電力オーバー停電寸前 タイムカプセルで時間遡行する
目覚まし時計のベルを止めて 二度寝三度寝なんてしちゃえば
気になる夢の続きの続きで キミと歩いてく魔法

drop pop candyでかわいいビビバスもいけるやん!となったので。
絶対3DMVで男4人にするオタクが続出する。

 

 

 

ワンダーランズ×ショウタイム

 

01 非公開日誌 / みきとP



“夢ヲ見ル時ワ独リデ見チャダメ” それがこの世界のルール
カラフルに散らばる地図を 白いパラソルに塗り写して
風の向くまま カエルの船長 舵を取るのさ

かわいいワンダショ枠。
やっぱりワンダショにはストーリー仕立ての曲を歌って欲しい。



02 演劇テレプシコーラ / ハチ



揺れて 傾く 照明の灯 ここは 童話の 世界さ
踵 鳴らして 踊ってる 君の 手に 忘れた

林檎 片手に 狼が 「落としたのは君か?」と
揺れる 世界に 耐えかねて 枯葉の様に 落ちた


ワンダショの魅力はやっぱり暗い曲でも世界観を壊さずに歌えることなのでこういう曲を歌わせたくなるんですよ。ワンダショに関してはまず本家の選曲がオタクすぎて勝てない。


 

03 怪盗黒猫シャノアール / yukkedoluce(黒髪ストロングP)



例に倣って傲慢な亡者の大層な秘宝はスカーレット
彼の御令嬢の首輪になって生涯ケージ瞳はイーア
犯行声明送り込んで 番兵に成り済ました モノクルシルクハット某怪盗
難なく罠、目 擦り抜けて 少女の部屋に忍び込む

僕未来から来た人間なのでわかるんですけど本家プロセカにこの曲つかえむちゃんの2DMVが実装されるんですよ。本当なんです。信じてください。

 

 

 

04 歌に形はないけれど / doriko



僕は歌うよ
笑顔をくれた君が泣いてるとき
ほんの少しだけでもいい
君の支えになりたい

僕が泣いてしまった日に
君がそうだったように


草薙寧々に歌って欲しいボカロソングオブザイヤー。
今回の選曲で一番古い曲。アナボで寧々ソロ版、絶対に欲しい。


 

 

05 マッシュルームマザー / ピノキオP

 

にょきにょき にょきにょきにょ
きのこが感染るから近づくんじゃねえ
にょきにょき にょきにょ きのこ野郎
泣くな 胞子が飛ぶからね

やーいやーい マッシュルーム
お前の母ちゃんマッシュルームマザー
やーいやーい マッシュルーム
マッシュルームマザー マザー

この曲は歌って欲しいと思ってる人多そう。
ワンダショのセカイの曲がピノキオPなので当然親和性高いし毒もあるので最高なんですよね。




 

25時、ナイトコードで。

 

01 Waltz Of Anomalies / ナノウ


さぁ 踊りましょう夜明けまで 疲れ果てて眠るまで
どうせこの心は君には 何一つ届かない
愛が欲しくて愛想笑い 夢が見たくて不眠症
別に何も悲しくはないよ
ねぇ そうでしょ


朝比奈まふゆ



 

02 テロメアの産声 / Heavenz



一粒が幾つもあって それが何個目で 僕を司るだろう
夢を転がしてく世界は 振り出しに戻る

まだ まだ ここにいますか
君の眼は 誰を見ていますか
オーロラが窓を塞いで行く
ああ 消えそうだ

ああ 消えそうだ。は原曲通りミクに歌って欲しい。



03 オレンジ / トーマ




許すだけでも、耐え抜くだけでも
ただ、きっと。そう、きっと
誰も変われないこと。
傷付けない弱さが生きられないほど
大きく育ったの。


歌っていることがふわっとしてるのでニーゴミクみも感じながらも奏っぽさもあるし朝比奈まふゆもいける。



04 病名は愛だった / Neru & z'5



病名は愛だった

これはニーゴ好きな人大体の人が希望してそう。
純粋にミクが歌うこの曲も聞きたいよね



 

05 [It's not] World's end / ナノウ



あぁ そうだよ 君はそうやって
世界の終わりから 救ってくれるの

完全なるかなまふだけど奏には歌って欲しくないので難しいところ。 

 


06 「ねぇ。」 / ナノウ



想いを繋いで ずっとずっと
あなたがどこかに 消えないように
あなたがまた 笑ってくれたら
きっとそれだけで 大丈夫だから


ナノウさん多くない? これでも少なくした方なので許して。
いやぁニーゴユニスト二章のナノウさんの書き下ろし楽曲が楽しみですね!!!!!!

 


07 スイヘイリーベと僕の舟 / ラムネP



それでも彼女を助けに行かなくちゃ
地下50階はきっとデッドエンド
それでも彼女に逢いに行けるのかな
後ろを振り返ればすぐバッドエンド

多分全世界で俺だけがニーゴにカバーして欲しいと思ってる曲だと思う。
ニーゴ、表面的に暗い曲ばっかり歌ってたらマンネリ化してしまう可能性があるのでこういう曲も歌って欲しい。


 

08 失想ワアド / じん(自然の敵P)



不思議なことに この世界は 「普通なこと」が 難しくて
言葉一つも 返せないのが バカらしくって 泣いている
めくるめくような 勘違いを 繰り返して 嫌いになった
つぼみのままで 枯れてく 未来に 言葉が見つからない

カゲプロ曲、カゲプロ以外との親和性を発揮するとかなりエグめになるので大変良い。
ニーゴ瑞希バナーイベント、マジで今から怖いし読みたいけど読みたくないし読みたい。いっそはやく殺してくれ。



09 絶対的関係性推進論 / ぴぼ



歪んだ 歪んだ 心を 揺らした 揺らした あなたのことを
探して 探して しまうから 仕方ないと 仕様がないと 笑ってる

止まった止まった 呼吸が 忘れた 寂しさ 思い出させて
満たして 満たして 欲しいから 助けてと 救ってと 縋ったの


選曲時は『満たされないペイルカラー』を未読だったんですよ。いや、マジなんです信じてください。


 

10 それがあなたの幸せとしても / Heavenz




その数秒が運命でも その数歩が運命でも
その決意を止めるのは我儘か
行かないで 行かないで 行かないで 今は

あなたが 目指してた地点は暗くはないか
それが大きな光の ただの影だとしたら
あなたが 旅立つ場所へ行かせたくはないな
例えばその先で 静かに眠れても
それがあなたの幸せとしても


ヘブンズPも多くないですか? いや、マジで許してください。
いろいろな意見がありますが僕はこれを自殺の歌だと解釈してます。
ニーゴはもう『この段階』ではないですが、それはそれとして歌って欲しいという感情に嘘はつけないので選曲しました。

 

 

 

 

 

いかかでしたでしょうか。納得がいく楽曲があったでしょうか。なかったらすみません。僕の力不足です。
とにかく無限に紹介したい曲があったので絞り込むのが大変でした。特にニーゴを5曲に絞り込むのは骨の折れる作業でした。は?

このブログをきっかけに、でなくても別にいいですがTwitterやここのコメント欄で自分が思うプロセカに実装して欲しい曲などを書いていただけるとまとめた甲斐があったなぁと感じるのでよろしければお願いします。
またそのうちブログを書きますので講読などしていただけると非常に励みになります。

では、またいつか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くすく的2020年、今年の10曲

みなさんご無沙汰しております。年の瀬ですがいかがお過ごしでしょうか。みなさんが今これを読んでいると言うことは僕はどうにか年内にこの記事が投稿できているということだと思います。投稿できていなかったらこの文は消えているはずなので。

去年はサボってしまったので今年こそはと、今年出会った素晴らしい楽曲からもっと世に知らしめたい10曲を選んで紹介していく記事をやっています。
御託を長々と描こうとしてもブログがエタるだけなので早速1曲目行きたいと思います。

 

 

1. アカシア BUMP OF CHICKEN

www.youtube.com


《ゴールはきっとまだだけど
 もう死ぬまでいたい場所にいる

 隣で 君の側で 魂がここだよって叫ぶ》

わかり切っていたとは思いますが、今年僕にとって一番印象に残った曲といえば間違いなくこの曲です。
僕が一番大好きで心奪われているアーティストであるBUMPが、同じく僕の人生にいつだって寄り添ってきたポケモンの楽曲を手掛けたという事実、いまだにちょっと何が起きてるのかわからないぐらいの衝撃でした。ここ数年で一番幸福な出来事といっても過言ではありません。まぁBUMPに関してはここ数年で一番不幸なことも同時に起きてしまったのが今年なのですが…………、
BUMPはタイアップ曲を作る時、自分たちが普段描いていることと、コラボ先が抱えている要素を照らし合わせて、それが重なり合う部分を楽曲として出力をするという作り方をしています。
なのでBUMPが書き下ろす楽曲はBUMPの曲でありながらも、コラボ先だけを象徴する楽曲にも同時になりうるのです。作曲者の中では提供先の世界感を表現するためにその作品の『描きたい物』を描くというやり方をしている人も多くいます。しかし、BUMPのように『重なる部分』を出力することによってどちらか一方のコンテンツしかしらない人間にも十分に伝わる曲になるのです。
例えば、ポケモンに一切触れたことのない人間にとってはこの曲は純粋に今までのBUMP流れの上に自然に乗る新曲であり、BUMPを一度も聴いたことのない人間には、この曲は紛れもない不純なものが一切含まれていないポケモンの曲になります。そしてその二つが両立できるのです。
ポケモンが描いてきた景色の中で同時に【BUMPも描いてきた景色】でないと、藤原は楽曲の中に取り入れません。
《君の一歩は 僕より遠い 間違いなく君の凄いところ
 足跡は 僕の方が多い 間違いなく僕の凄いところ》
という歌詞は、ポケモンに触れてきた人間にとってはサトシとピカチュウであったり、自分とパートナーのポケモンの映像を思い浮かべますが、BUMPのファンにとっても今までBUMPがずっと描いてきた君と僕という概念の地続きなのです。
《いつか君を見つけた時に 君に僕も見つけてもらったんだな
 今 目が合えば笑うだけさ "言葉の外側"で》
という歌詞も同じ言葉を喋れないポケモンとの絆とも言葉にしなくても伝わる人間同士の絆ともどちらにも取れるようになっています。
そのように提供先に真摯にに、でもBUMPであるという土台は絶対に崩さない書き下ろしに対するスタンスは僕がBUMPがめちゃくちゃ好きな理由の一つです。
BUMPとポケモン、その境界線が溶け合ってできた曲、そりゃ、両方が好きな人にとってはとんでもない衝撃でした。
是非是非、そんなことも意識してアカシアを聴いていただけるとまた楽しめると思います。

 

 

2. 盗作 ヨルシカ


www.youtube.com


《「音楽の切っ掛けは何だっけ。
 父の持つレコードだったかな。
 音を聞くことは気持ちがいい。
 聞くだけなら努力もいらない。

 前置きはいいから話そう。
 ある時、思い付いたんだ。
 この歌が僕のものになれば、この穴は埋まるだろうか。

 だから、僕は盗んだ」》

二曲目はこの曲、ヨルシカの今年の夏にリリースされた『盗作』というアルバムの表題曲です。衝撃的なタイトルだと僕は感じました。
この曲の主人公は他人の楽曲を意図的にトレースすることによって名曲と称される楽曲を作り続ける男です。

俺は泥棒である。
往古来今、多様な泥棒が居るが、俺は奴等とは少し違う。
金を盗む訳では無い。骨董品宝石その他価値ある美術の類にも、とんと興味が無い。
俺は、音を盗む泥棒である。

それはメロディかもしれない。装飾音かもしれない。詩かもしれない。コード、リズムトラック、楽器の編成や音の嗜好なのかもしれない。また、何も盗んでいないのかもしれない。この音楽達からそれを見つけるのもいい。糾弾することも許される。
客観的な事実だけなら、現代の音楽作品は一つ残らず全てが盗作だ。意図的か非意図的かなど心持ちでしかない。メロディのパターンもコード進行も、とうの昔に出尽くしている。

それでも、作品の価値は他者からの評価に依存しない。盗んだ、盗んでないなどはただの情報でしかない。本当の価値はそこにない。ただ一聴して、一見して美しいと思った感覚だけが、君の人生にとっての、その作品の価値を決める。
「盗作品」が作品足り得ないなど、誰が決めたのだろう。
俺は泥棒である。

原曲MV詳細分より引用


実際にこの楽曲のバックに流れているピアノフレーズにはサティジムノペディ 第1番の有名すぎるフレーズがそのまま流用されています。
ここで言う現代の音楽作品は一つ残らず全てが盗作だ】という言葉。音楽を日常的に作る人間にとってこれは当たり前の価値観なのですが、この作品の恐ろしい部分は、それ自体をコンセプトにし、世間に対して発表したことです。
オマージュと盗作は客観的に見れば同じ行為です。境界線を作っているのはその心持ちでしかありません。
世間で流行ってる、求められているメロディー、リズム、語感、そして雰囲気。
そういうものをリサーチして、解析して、それを元に作られた音楽をヨルシカやその他ソングライターたちも自分たちの曲として発表し、そして世間から評価されます。
それは当たり前であり、同時にわざわざ言う必要のないことでした
でもヨルシカは今このタイミングでそれをアルバムコンセプトとして打ち出してきた。
良い悪いでも、正しい間違いでもなく、世の中で曖昧になっている価値観を一度ぶっ壊すためにアルバムを作ったのではないでしょうか。
自分も音楽を作るものとして非常にこの一枚には痺れました。
おすすめな曲であり、そしてアルバムです。一聴してみてはいかがでしょうか。

 

 

3. 令和二年 amazarahi

www.youtube.com


《とげられぬ夢 やむを得ぬ故
 恨めしく睨む空 令和二年
 封切りの映画 新譜のツアー
 中止の入学式 令和二年


今年の10曲にこの曲が入らないのは嘘だろう。ということで選ばせていただいた一曲です。
この曲はその名の通り今年を歌った曲です。
amazarashiは今年の頭にアルバムを発売し、そのリリースツアーが4月より開催される予定でした。僕ももちろんチケットを確保し楽しみにしていましたが、そのライブは2020年12月末現在、未だに行われていません。
そんなやるせない今年に抱いている思いを綴った楽曲が5曲収録された今月リリースされたEP『令和二年、雨天決行』の表題曲です。
今年を生きた全ての人に何かしら響くものがある一枚だと思いますので、是非チェックしてみてください。

 

 

 

4. Henceforth Orangestar

www.youtube.com


《あぁ! 夏を今もう一回
 君がいなくても笑って迎えるから
 だから今絶対に君も歩みを止めないで
 あぁ! それだけの心臓が
 絶え間なくアオく光を願うから
 仕方なくもう一回
 変わらぬ今日を征くんだよ
 何度でも》

5月に公開されたOrangestarの新曲です。数々の夏の曲を書いておいてまだこんなに強い夏が描けるのかと唸りました。大サビの転調がめちゃくちゃ気持ちいいので是非大音量で聴いてみてください。

 

 

 

5. 聴いて 鹿乃

www.youtube.com


《どうか私の言葉響いて
 どうかあなたの心で聴いて
 とても情けない話だけど
 誤解を恐れず今日は言おう

 私はあなたが描くように
 優しくも面白くもなくて
 悪魔にも天使にもなれない
 あなたが嘆くあなた自身だ》


歌い手の鹿乃さんが今年作曲家の田中秀和さんとタッグを組んでリリースしたアルバムyuanfenに収録されている一曲です。
鹿乃さん本人が自信を思いを素直に綴った歌詞になっており後半になっていくにつれ思いが大きくなっていくように畳みかけていくのがめちゃくちゃ良い。

 

 

 

6. 迷える羊 米津玄師

open.spotify.com


《「千年後の未来には 僕らは生きていない
  友達よいつの日も 愛してるよ きっと」》

米津玄師のニューアルバム、STRAY SHEEPの収録曲。
A、Bメロと暗いメロディーでおどろおどろしい雰囲気で進んできたのにサビで別の曲なんじゃないかと思うぐらい一気に光が広がるような展開が天才すぎる。

 

 

 

7. 世界の果て CIVILIAN

www.youtube.com


《息を吸って 自動で吐いて
 何かと手を繋ぎたがる僕らだ
 繋がっているなんて感覚が
 本当は幻想でも

 躓いたって どのみちそうだ
 後ろにはもう戻れぬ僕らだ

 君が立っているその場所の名は
 世界の果て》


CDでリリースされていないCIVILIANの東京都が主催する『アートにエールを!』の企画で投稿した楽曲です。こちらの曲も今年を生きる人たちには響く物になってるのではないでしょうか。

 

 

 

8. 躍動 坂本真綾

www.youtube.com


《手に入れるのが勝利なら
 手放すのは敗北でしょうか
 誰も傷つかない世界
 なんて綺麗事かもしれない
 それでもまだ賭けてみたい》

Fate/Grand Order2部後期OP主題歌です。ゲームをプレイしていない人には何を言ってるのかちょっとわからないと思いますが笑 毎度、ストーリーの節目になる度に坂本真綾さんが新曲を発表するんですけど、それがストーリーに深く結びついててエモいです。2コーラス目でメロディーが変わり捲し立てるようなAメロが良いです。

 

 

 

9. 世界はファンシー UNISON SQUARE GARDEN

www.youtube.com


《The world is fancy !》

ニゾンの今年リリースしたPatrick Vegeeというアルバムから発売前に公開された新曲。ユニゾンの曲は毎度ギミックや展開が新鮮で驚かされるのですが、これだけ長く活動してもまだ新鮮なことができるのかと度肝を抜かされました。この曲の特徴的すぎるBメロは聴いたことがないなら是非一度再生してみてください。

 

 

 

10. Sai no Kawara Crystal-z

www.youtube.com

 

《順調じゃなくていいから
天才じゃなくていいから
堂々巡り 巡り 繰り返し
東京 偉大なこの街

順調じゃなくていいから
天才じゃなくていいから
堂々巡り 巡り  繰り返し
東京じゃ春は来ないし》


10曲目は話題になったこの曲。初めて聴いた瞬間「あ、この曲は今年の10曲に絶対入るわ」と確信しました。音楽で伝える、ということの新たな可能性や未来が見えた、これはもはや楽曲という小さな括りに収まらない、音楽シーンでのもはや一つの事件だと思います。僕から多くは語りません。是非、なんの先入観ももたずに聴いてください。



くすく的2020年、今年の10曲

 1. アカシア BUMP OF CHICKEN
 2. 盗作 ヨルシカ
 3.令和二年 amazarashi
 4.Henceforth Orangestar
 5.聴いて 鹿乃
 6.迷える羊 米津玄師
 7.世界の果て CIVILIAN
 8.躍動 坂本真綾
 9.世界はファンシー UNISON SQUARE GARDEN
10.Sai no Kawara Crystal-z

 

 

明日、元日も2020年を振り返る記事が上がると思います。
多分、おそらく。応援してください。

 

 

 

 

 

 

【初音ミク(VOCALOID)をテーマにしたボカロ曲】ボカロという概念はどのようにして形作られてきたのかについての考察

みなさんお久しぶりです。いかがお過ごしでしょうか。

本日は最近盛り上がりを見せているボカロにあやかって、自分のVOCALOID遍歴ついて記事を書こうと思い立ち、自分の感性に影響を与えたVOCALOID曲を100曲選んで紹介しようと思っていました。…………そう、最初はそう思っていたんですけど、いつの間にかメモ帳にストックした曲は200曲を超えてしまい、削るのも困難。それならいっそのこと、と今回は第0回と称しまして『あるテーマ』に沿って自分が選んだ曲から抜き出して紹介する記事にしたいと思います。次回以降、それらを抜いた200曲を紹介するのでそちらもどうかよろしくお願いします。本編もやってないのに番外編とは。

まず最初に自分のことを話しておくと僕と初音ミクとの出会いは2007年、つまり初音ミクがこの世界で『活動』を始めたその年からずっと追いかけてきて、そして今、自分も底辺の底辺でありながら初音ミクを歌わせる側に身を置いている一人の人間です。それなりにVOCALOIDというものに対して費やしてきた熱量や時間はあると自負しているのでこれを読んでくれている人にとって有意義な記事となれば幸いです。


さて、まず最初に初音ミクとはなんでしょう。
バーチャルアイドルであると答える人も、いやいやそうではなくただの楽器だ、と答える人もいると思います。そのどちらも僕個人としては正しいと思います。
そもそも大前提の話をすればVOCALOIDシンセサイザーです。つまり楽曲作りをサポートするパソコン上で動作するソフトウェアであり、初音ミクはその中の一つの音色でしかありません。しかしその音色に初音ミクというキャラクターを付与するというクリプトンの選択が今このVOCALOIDという世界を生み出しました。
楽器でありながらもバーチャルアイドルでもある初音ミク、その複雑な存在をボーカロイドPや我々ファンが思考し、そして形作ってきました。

今回はそんな初音ミクVOCALOID)のことを歌った歌』にフォーカスを当てて、楽曲を紹介していきたいと思います。あくまで僕から見たボカロ、という前提で進んでいきますので「この曲がないじゃないか!!」「それは違う!!」という声も多々あると思いますが予めご了承ください。 


まず、初音ミクが生まれたその年を振り返ってみましょう。
2007年の8月31日にクリプトン・フューチャー・メディア、ボーカル音源ソフトウェア「キャラクター・ボーカル・シリーズ 01 初音ミク」を発売され、その4日後の9月4日に【VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた】が投稿されました。

www.nicovideo.jp

ここではちゅねミク及び初音ミクといえばネギというイメージが生まれました(最近大分忘れ去られてる感じするけど……)
クリプトンが用意しているのは【年齢:16歳 身長:158cm 体重:42kg 誕生日:2007年8月31日生まれ】という簡単なプロフィールと立ち絵のみです。なのでそれ以外のあれやこれは全部ボカロPやイラストレーター、そしてファンたちによる創作です。今後この記事ではこれらの要素をまとめて『ユーザー』と呼称します。このネギというアイコンもその後に別の投稿者によって投稿された。【初音ミク】みくみくにしてあげる♪【してやんよ】の歌詞に引き継がれています。

www.nicovideo.jp

 このように制作元であるクリプトンから離れ、ユーザーが自由勝手に初音ミクというものを形作ってきた歴史があり、その自由度こそが初音ミクという文化がここまで発展してきた一番の理由だと思います(それはそれとしてミクの胸を必要以上に盛るやつは絶対に許さない)そして当然それに付随して初音ミクというキャラクターをテーマにした楽曲も数々生まれてきました。今回はそれを一部ですが紹介していきたいと思います。

 

 

初音ミクオリジナル曲 「ハジメテノオト(Fullバージョン)」

www.nicovideo.jp

時の流れも 傷の痛みも 愛の深さも あなたの声も
ワタシは知らない だけど歌は 歌はうたえるわ だからきいて

こちらも初音ミクが発売されて二週間後ぐらいに投稿されたバラードです。当時のボカロPたちのスピード感覚どうなってるんだ。
言葉は離せないけどその代わりに歌は歌えるというミクらしさに溢れた名曲。この頃はどちらかというとバラードや電子ポップを歌うことが多く、昨今のようなボカロといえば早い曲、みたいなイメージが極端に少なかった気がします。

 

初音ミクがオリジナル曲を歌ってくれました「Packaged」 Full Ver.

www.nicovideo.jp

ずっと待ってたの ひとりぼっちで
歌いたくて 歌えなくて
でもあなたと 出逢えたから
もうさみしくなんてないよ

心がビートで満ちてくの
あふれ出す想いは歌に変えて

この世界のメロディー
わたしの歌声
届いているかな
響いているかな

こちらも最初期の初音ミクブームを牽引した代表曲。やがてGoogleCMソングでもある『Tell Your World』を作ることになるkz(livetune)のデビュー曲です。
当時はハジメテノオトとこの曲を狂ったように聞いていた記憶があります。

 

初音ミク】恋スルVOC@LOID (修正版)【オリジナル曲】

www.nicovideo.jp

パラメーターいじりすぎないで! だけど手抜きもイヤだよ
アタックとかもうちょっと 気を配って欲しいの
ビブラートで誤魔化さないでよ そんな高音苦しいわ
もっとちゃんと輝きたいのよ あなたの力量って そんなもの?

今でも変わらず曲を投稿し続けているOSTERさんのデビュー作。
この曲は今後増えてくる初音ミクがソフトウェアである前提がある上での人間との対話という作風の先駆けになった曲だと思っています。



初音ミクオリジナル曲 「初音ミクの消失(LONG VERSION)」

www.nicovideo.jp

ボクは生まれ そして気づく 所詮 ヒトの真似事だと
知ってなおも歌い続く 永遠(トワ)の命 「VOCALOID

たとえそれが 既存曲を なぞるオモチャならば・・・
それもいいと決意 ネギをかじり 空を見上げ涙(シル)をこぼす

だけどそれも無くし気づく 人格すら歌に頼り
不安定な基盤の元 帰る動画(トコ)は既に廃墟

皆に忘れ去られた時 心らしきものが消えて
暴走の果てに見える 終わる世界... 「VOCALOID

初音ミクのことを歌った曲といえばこの曲と思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。ソフトウェアであり人間とは住んでいる場所が違うからこその悲劇を歌った曲。
BPMが240という爆速で人間には到底歌えないリズムも歌えるミクだからこそ成立することがさらにドラマに深さを与えているように感じます。
この本当の意味で僕ら人間と初音ミクは繋がることができないのではないかという問は、他のボカロPにも今後影響を与えていきます。

 

初音ミク】ヒビカセ【オリジナル】

www.nicovideo.jp

忘れないでね わたしの声を 画面越しでいい ちゃんと愛して
ヴァーチャルだって 突き放さないで あなたの音に まだ溺れていたい

覚えていてね わたしの声を あなたがくれた この身すべてを
見つめ合う あなたと二人 重ねた息と音とヒビカセ

一旦時代が飛びますが2014年の比較的新しい(?)この曲にもその文脈が受け継がれています。
初音ミクは思い通りに歌を歌わせられる夢のある存在でありながら、どこか寂しさを抱えたキャラクターであるというイメージが今も昔も語り継がれていて、僕はそれこそがVOCALOIDという世界の魅力だと思っています。
しかし、ミクもユーザーも悲観的でばかりいるわけにはいきません。それぞれのユーザー、ボカロPが『ミク』を救いたいという気持ちが楽曲に込めた曲も生まれてきます。

 

初音ミクオリジナル曲 「初音ミクの激唱(LONG VERSION)」

www.nicovideo.jp

Voc.(ボク)たちは生まれ気づいた Voc.(ボク)たちのことを人の真似事と知っても
変わらず 名前を呼び続け そして 愛してくれるヒトがいる事実に
だからVoc.(ボク)たちは歌を紡ぎ出す たった一人でも新しい歌の
誕生喜び温かい 言葉 与え 返す ヒト いてくれる限り
妹 弟 に道を預けて消え逝く未来も 誰からも忘れ去られる運命(さだめ)も
それらを含めて 全てが Voc.(ボク)たちなんだと理解し
いずれおとずれる 最後の場面(シーン)にココロを持つ故 涙(シル)を流すなら
泪(アメ)より虹生み 笑顔見せるため 幸せ溢れる 歌 口ずさもう

ユーザーはミクの存在意義や、幸せを考えるようになります。
もちろん、ミクが自分の意思でしゃべり始めることはなく、自我はありません。その全てが創作であり人間のエゴであるのは変わりませんが、それでも初音ミクという存在が『そこにいる』という認識がVOCALOIDという世界には浸透しており、それによりただの楽器として、ジャンルとしてではない初音ミクが好き』という感情を生み出すのではないでしょうか。

 

sasakure.UK×DECO*27 - 39 feat. 初音ミク

www.nicovideo.jp

君に出会って みんな出会って "アタシ"であって良かったよ
何回言ったって足りないよ 声に出して 39(サンキュー)
あれ、なんだかアタシの名前みたい(笑) 今日もそして

明日だって この先だって アタシはずっと ここにいる
なんかあったら聴きに来てよ 歌うよ 何度だって

「はじめまして」も はたまた
「久しぶり」も みんなありがとう

 

存在しないはずのVOCALOIDと人間の対話が描かきエモを摂取できるのがVOCALOIDの魅力で、基本的には初音ミクが僕らに向かって思いを飛ばすというのが基本になっていましたが、時が進むに連れて初音ミクという存在に人間側が救われる』『人間が初音ミクに伝えたいことを唄にする』という曲も生まれてくるようになります。

 

【GUMI(40㍍)】 少年と魔法のロボット (Album Edit Ver.) 【オリジナルPV】

www.nicovideo.jp

「キミが作った音楽をワタシが歌い上げるよ。」
目を丸くした少年は おそるおそる、ボタンを押しました。

少しだけ不器用な声だけど、夜空に響いたその声は
確かに少年の心に届いていました。届いていました。

今回の記事唯一の初音ミクではない楽曲です。この曲がNHKみんなのうたに採用されたのは当時かなり驚きがあったのを覚えています。
実際、ボカロという存在がいなければ埋もれるはずだった曲はこの世界に何曲あったでしょうか。今この世に存在するボーカロイド曲は10万曲を優に超えると言われています。米津玄師もヒトリエも間違いなくボカロがなければこの世界にこれほどまでに音を響かせることはなかったでしょう。そういう観点で考えると初音ミクが我々人類に与えてくれた恩恵は計り知れません。

 

初音ミク僕は初音ミクとキスをした 【オリジナルMV】

www.nicovideo.jp

そう 前に 前に 手を伸ばして
今日も 今日も 出来なくて
四畳半の部屋で 独りきりで哭(な)いた
僕はそんな そんな 意気地ない世界を 歌を
誰かに 唄って欲しかった

この曲なぜ自分の創作物ではない『初音ミク』に託すのかという問にみきとPらしい答えを出している楽曲です。横槍メンゴさんが担当しているMVも素晴らしいので是非聴いてみてください。

 

10

初音ミク】 ODDS & ENDS 【Full Ver】

www.nicovideo.jp

※公式の動画ではございません

いつからか君は人気者だ
たくさんの人にもてはやされ あたしも鼻が高い

でもいつからか君は変わった
冷たくなって だけど寂しそうだった

「もう機械の声なんてたくさんだ 僕は僕自身なんだよ」って
ついに君は抑えきれなくなって あたしを嫌った

君の後ろで誰かが言う 虎の威を借る狐のくせに!
ねぇ君は 一人で泣いてたんだね

聴こえる? この声 あたしがその誹謗(コトバ)を掻きけすから
わかってる本当は 君が誰より優しいってことを

ラクタの声はそして歌った 他の誰でもない君のために
軋んでく 限界を超えて

今までユーザーと初音ミクとの一対一の関係性を歌ってきたVOCALOID楽曲ですが、時代が進んでいくうちに『世界』が無視できないようになってきます。
世間がボーカロイドというものを認識し始め、隅っこで密かに楽しんでいたものが白日に晒されることも珍しくなくなってきました。
今後のVOCALOIDのことを歌った唄にはそのような要素も含んでくるようになります。

 

11

君が生きてなくてよかった / 初音ミク

www.nicovideo.jp

君は変な声で 奇妙な見た目で 時に気持ち悪いと言われてきた
でも 心臓が動いてないから 傷つくことはなかった

第一印象はマイナス 変化してったバイアス
流れ流れて 月日は経ち まだ こんな歌を作っていた

こんにちは はじめまして さようなら またあした

変わらぬ愛も 儚い恋も 君からすれば ただの記号で
正義も悪も 帰らぬ日々も 君の前では どうでもよくて
ずっと ずっと 君が生きてなくてよかった
ずっと ずっと 君が生きてなくてよかった
今日も

独特の切り口で『初音ミク』を曲にするのがピノキオピーです。
ソフトウェアでしかなく実際には『そこにいない』からこそ『今』がある。というこの曲も例外ではなくピノキオピーしか書けない歌詞で、でも初音ミクという存在を見事に言語にした楽曲です。

 

12

ハチ MV「砂の惑星 feat.初音ミク

www.nicovideo.jp

そういや今日は僕らのハッピーバースデイ
思い思いの飾り付けしようぜ
甘ったるいだけのケーキ囲んで
歌を歌おうぜ
有象無象の墓の前で敬礼
そうメルトショックにて生まれた生命
この井戸が枯れる前に早く
ここを出て行こうぜ

ねえねえねえあなたと私でランデブー?
すでに廃れた砂漠で何思う
今だパッパパッと飛び出せマイヒーロー
どうか迷える我らを救いたまえ
ぶっ飛んで行こうぜもっと
エイエイオーでよーいどんと
あのダンスホール モザイクの奥
太古代のオーパーツ
光線銃でバンババンバン
少年少女謳う希望論
驚天動地そんで古今未曾有の思い出は電子音

そして3年前、現在米津玄師としてネットから飛び出し全世界へ音楽を響かせているハチが初音ミク十周年イヤーで突如ドロップした問題作であるこの曲。
これはVOCALOIDというより、『ボカロ文化』についての歌です。
先の見えない衰退してしまったボカロシーン(ニコニコ動画という舞台)を『砂の惑星』に見立てて歌ったこの曲は、ハチ自身の予想通り賛否両論と共に世界に迎えいられました。

natalie.mu

ニコニコ動画というもの自体がどんどん砂漠になっているというイメージが広がっていって。「ああ、これ、砂漠だな」と思ったときに、自分がかつて過ごしてきた一種の故郷である、ニコニコ動画が砂漠になっていく光景を曲にしたら面白いんじゃないかと思ったんです。今のニコニコ動画を表現するべきと言うか、する人がいてもいいんじゃないか、と。これならやる意味があるかなと思って、依頼を受けました。

インタビューより ハチさんの発言を引用

当然、ニコニコで活動し続けている様々なボカロPがこの曲に対して嫌悪や怒りを示しました。

natalie.mu

「ここ最近シーンにいなかった人が急に戻ってきて、なんで知ってるふうなことを言うんだろう?」「僕のことは置いておいて、ナユタン星人、バルーン、n-buna、Orangestarみたいなこの数年のシーンを支えた人たちも“砂”だって言うのか?」って、ものすごく頭にきちゃって。それにあの曲が発表されたことによって、2014年頃に内輪で言われていただけのボカロ衰退論を外側の人に知らせることになって、「ボカロは時代遅れ」という呪いのようなイメージをたくさんの人に植え付けるんじゃないかって心配になったりもして。

インタビューより 和田たけあきさんの発言を引用

記事で言及されていたナユタン星人も自らの楽曲の歌詞にこの楽曲へのアンサーを忍ばせています。

初音ミクが「リバースユニバース」を歌ってくれたヨ

www.nicovideo.jp

無数の愛で 惑星に雨は降るから
あんな しゅうまつ論者のノウは
あぁ、そう。

 

togetter.com

 

 

皮肉にも今のボカロ文化の衰退を歌ったこの曲のニコニコでの【6日と5時間19分で100万再生】という最短記録はいまだ破られていません。
この砂の惑星という楽曲では初音ミクの消失で歌われていたBAD ENDとは全く違う形で初音ミクの終末が描かれており、そしてそれを払拭し切れていないが今のボカロシーンなのではないでしょうか。
個人的にはボカロPそのものは衰退するどころか明らかに昔に比べてもそれを超えるような素晴らしいクオリティの楽曲を連発しているが、問題はそれを受け取る側の質や置かれている状況の問題、というものが大きいのではないだろうかと思っていますが、ここでそれを語るのはこの記事のテーマからはズレるのでまた機会があれば。

 

 

 13

wowaka『アンノウン・マザーグース』feat. 初音ミク

www.nicovideo.jp

ドッペルもどきが 其処いらに溢れた
挙句の果ての今日 ライラ ライ ライ
心失きそれを 生み出した奴等は
見切りをつけてもう バイ ババイ バイ
残されたあなたが この場所で今でも
涙を堪えてるの 如何(どう)して、如何(どう)して
あたしは知ってるわ この場所はいつでも
あなたに守られてきたってこと!

同じく初音ミク十周年イヤーに投稿されたのがwowakaのこの曲 。
wowakaからみた『初音ミク』が歌われた歌です。自分が作り上げたVOCALOID楽曲のテンプレートとも呼べる雰囲気にwowaka自身が苦しめられていたのが伺えます。
このように、昨今では自分にとって初音ミクとはなんなのかということを再考する楽曲が増えてきているように感じます。

 

 

14

初音ミク】ハッピーホロウと神様倶楽部【オリジナル】

www.nicovideo.jp

我等の倶楽部のリーダーは 中身なんかなんにも無いんだぜ
歪んだ妄想 罵詈雑言 何だって好きなだけ詰め込んで
いいかい 此処では御自慢の 顔や名前に意味は無いんだぜ
ジャックオーランタン 頭に被って おんなじ顔で踊ろうや
ああ 今日も また一人 伽藍堂の神に跪いて

 

ハロ/ハワユや、文学少年の憂鬱などで知られるナノウ(ほえほえP)も初音ミクについての楽曲を作っています。
ボカロPそれぞれVOCALOIDとの向き合い方があり、そしてそれはきっと僕ら聴く側にももちろんあると思います。
あなたにとっての初音ミクはなんなのでしょうか。

 

15

愛されなくても君がいる / 初音ミク

www.nicovideo.jp

時は流れて 争いを経て
それでも 好きと言ってくれたら
嘘でも信じたいよ 嘘でも信じたいよ

あの人が どこかへ消え去っても
君がまだ そばにいてくれるなら
酷く 無機質で 優しい 人もどきのメロディが
今 歌に変わる

たとえ 愛されなくてもいいよ 君がいるなら
不器用な声 いつまでも届けるよ
大丈夫 愛されなくてもいいよ 君が望んだら
今日も 明日も 初音ミクでいられるの!

そして2020年である今年に歌われた新しい『初音ミクの歌』はひとつの答えのように自分は感じます。
初音ミク初音ミクたらしめているのは『誰か』ではない『君』です。
初音ミクは外から手を加えないと起動もしないしメロディーも歌えない。そしてそこから生まれた楽曲も『君』に届かないと存在を世界に繋ぎ止めることはできません。
だからきっとこれから先も初音ミクには変わらず『君』が必要であり、その『君』は僕も含め、この記事を読んでいるであろう、全ての初音ミクとは違い命を持っている人間なのです。

そしてこの後も変わらず我々ユーザーは『初音ミクとはなんなのか』という問に答えを出し続けていく、それが間違っているかもしれないし、正しいかもしれない、答えが変わることだって今まで何度もあった。でも問い続けていくことでしか初音ミクを生かすことはできません。未来(ミク)と名付けられたひとりのキャラクターはいつだってその名の通り未来へ向かって進んできました。それで生まれたこの景色はきっと初音ミクを散々消費してきた我々ユーザーも共に歩んできたということの証明です。


今年、初音ミクVOCALOIDではなくなります。今年リリースされる予定の音声ソフト初音ミクの新バージョンである初音ミクNT(ニュータイプ)』は、今までとは違い『VOCALOIDというソフトウェア上で動作する拡張プラグイン(音色)』ではなくなり、独立したpiapro studio』というソフトウェア上で歌を歌うことになります。
そんな節目にプロジェクトセカイという新たなコンテンツが始まり、広くそれが広がり、世間が初音ミクというものをまた強く認識し始めるのは偶然なのでしょうか。
※余談ですが、ニコニコ動画でのタグ付けに関しては混乱を避けるため今まで通りVOCALOIDの使用が推奨されています。


とか偉そうな言っていますが、筆者はまだプロセカをプレイしていません。この記事は、そもそもプロセカに飛び込む前に今の自分の中の初音ミクというものを整理するために書き上げました。
なので今後プロセカを通してまた考えが変わったりするかもしれませんが、それもまた一興なのではないかと思います。

 

愛されなくてもいいよ 
惑星ですらない デブリの海で
それぞれ都合の良い世界を見ていた
愛されなくてもいいよ 
ラクタだらけの音楽の国で
本当に大切なものを見つけたから

愛されなくてもいいよ 君がいるなら
私は まだ 歌っていられるよ
大丈夫 楽しいパーティーが終わっても 君が笑うなら
ずっと ここで 初音ミクでいさせてね!

 

どうか、昨今のボカロ界隈の盛り上がりが、砂の惑星に木を植える種子であればと個人的には思います。

 

17 

livetune feat. 初音ミク 『Tell Your World』Music Video

www.youtube.com

君が伝えたいことは
君が届けたいことは
たくさんの点は線になって
遠く彼方へと響く
君が伝えたい言葉
君が届けたい音は
いくつもの線は円になって
全て繋げてく どこにだって

  

最後まで読んでいただきありがとうございました。
近いうちに僕が選んだ自分を構成するVOCALOID楽曲200選を記事としてお送りしたいと思いますが、一体いつになることやら……。

僕からいうのはおかしいかもしれませんが、どうか初音ミクをこれからもよろしくお願いします。

 

 

 

P.S.初音ミクさん、16回目のお誕生日、おめでとうございます。

amazarashiをよく知らない人にほど【新言語秩序】を目撃してほしいというブログ

 

 

 

 

今日(2020年6月9日)20時からロックバンドamazarashiの二年前に開催されたライブを追体験する映像が配信されます。
追記:プレミア公開は終了しました。この動画6月16日の19:30まで視聴可能です。

これは、ライブという枠組みを超え、新しいエンターテイメントの形でもあり、それはより多くの人に目撃されることが、とても重要だと思っています。

どうか、amazarashiというバンドにそれほど興味がない人にも少しは興味を持っていただけるような、そんなブログになればいいと思い、これを綴ります。

 

 

 

朗読演奏実験空間 新言語秩序とは

 

2018年11月16日。

東京喰種の主題歌『季節は次々死んでいく』や僕のヒーローアカデミアの主題歌『空に歌えば』やどろろの主題歌『さよならごっこ』で知られているロックバンドamazarashiの記念すべき初めての日本武道館ライブで突如として決行したコンセプトライブ

 

形式上はライブとしているが体感的には、どちらかというと『映画』に近いと感じる、
歌によって構成されているので『ミュージカル』と言い換えてもいい。

ロックバンドにとってビートルズが初めて日本で演奏した日本武道館は特別な場所であり、そこで開催されるライブはそのバンドにとって『メモリアル』なものであるのが常であり、その殆どが人気曲や自身を象徴する楽曲で構成される。

しかしamazarashiはライブでほぼ毎回演奏する人気楽曲や思い入れが深い楽曲などをすすんでセットリストから除外し、あるテーマに沿ってライブが作り上げられた。

これはamazarashiが自分たちのアーティスト性よりも、このライブで、空間で、表現したいことがあり、そのために自分たちを表現者としての役割よりも演者(Actor)としてステージに立つことに徹したライブなのだ。

 

さて、このライブの異質さを語るにはまずamazarashiの普段のライブの様子を語らなければならない。


amazarashiはVo.Gtの秋田ひろむKeyの豊川真奈美の二人を中心に構成されるロックバンドであり、自らの素性や顔を隠し、音楽を主体とする、一種の覆面バンドである。

ライブでは必ずステージと観客席が紗幕(カーテン)で隔たれており、その向こうにシルエットとして演奏するメンバーが見える形で行われる。

その紗幕にはプロジェクターで歌詞や映像が投影され
彼らの音楽を視覚的にも楽しめるようになっている。

 

www.youtube.com

 

 

 


さて、この新言語秩序言葉のディストピアの物語が描かれる。つまり、ストーリーが存在する。
ディストピア物語では一般的に権力や大企業、AIなどの大きな存在に人間が支配されることが多いが、

秋田ひろむがこの新言語秩序で問いかけているのは

一般市民同士の発言の相互監視社会についてだ。

現代のSNSで日々行われている言葉狩りや表現に対する狭量さをモチーフにしている。

 

つまり
人々が相互監視によって相応しくない言葉を糾弾していくことにより、
相応しいとされる綺麗な言葉しか使えなくなってしまった世界の物語だ。

 

 

 

さて、この世界観を理解するためにいくつかの重要な単語が存在するので簡単に解説する。

 

【テンプレート言語】

多種多様な他者を傷つけることがない何億通りという状況に合わせた会話のテンプレートのアーカイブ、それをテンプレート言語と呼ぶ。
そこに含まれていない。白痴、あばずれ、キチガイなどの相応しくない自由で醜悪な発言はテンプレート逸脱とされ、社会を騒乱をもたらす危険があるため警察並びに新言語秩序の取締り対象となる。

テンプレート言語は凶悪犯罪だけでなく、セクハラ、パワハラなど日常に潜む言葉のハラスメントを予防し社会の生産性をあげる画期的な発明である、という研究結果が発表されると、

『新言語秩序』批判はタブーである風潮まで達した。

 

 

【新言語秩序】

テンプレート言語を取り締まる自警団。
当初はネット上のSNS過激な発言などに注意喚起を促す程度の小さな団体だったが、政府と世論の後押しを受け多くのボランティアが参加する巨大な組織として強い影響力を持ち日本中で活動している。

インターネット、ラジオ、漫画、小説、映画、音楽など、言語表現が用いられるあらゆる媒体に対して検閲を行いテンプレート逸脱活動に該当するものはあらゆる手段を使って処分を行う。

 

 

【言葉ゾンビ】

テンプレート言語の強要を自由への侵犯と見なし、世間への抵抗活動としてあえてテンプレート逸脱活動を行う人間たちを、新言語秩序は軽蔑をこめて言葉ゾンビと呼ぶ。

最近ではテンプレート逸脱者たちも言葉ゾンビを自称し始めた。

 

 

【言葉殺し】

言葉ゾンビたちが新言語秩序を呼ぶときの蔑称
言葉によって人間はつくられていると信じる言葉ゾンビたちにとって自由な言語活動を検閲する新言語秩序は殺人者に等しい。

 

 

【テンプレート言語矯正プログラム”再教育”

新言語秩序が言葉ゾンビたちに対して行う拷問じみた取り調べの一つ。
警察と新言語秩序が開発したヘッドギアを対象の頭に取り付け、同時に薬物などを併用することで、テンプレート言語を潜在意識に刷り込ませ自由な発言ができなくなるまで精神を破壊する。

 

 

このライブは物語であるからこそ、そこにはもちろん登場人物も存在する。

ライブでは秋田ひろむが書き下ろした小説の朗読が曲間に挟まれ、これらの単語や登場人物を把握できるようになっている。
ちなみにライブをより体感するために配信されているアプリをDLするとこれらの小説を全て読むことができる。



実多-mita-

f:id:kyoukyouks:20200608232414j:plain

新言語秩序の熱心な活動家の女性。幼い頃の凄惨な経験により『言葉を殺さなければならない』という想いからテンプレート逸脱を繰り返す言葉ゾンビたちを追っている。

 

 

希明-kia-

f:id:kyoukyouks:20200608232408j:plain

言葉ゾンビたちにとってのカリスマ的存在、率先し新言語秩序に抵抗し自由な言葉を取り戻そうとする青年。『現政権はまるで末期のカルト集団だ』と叫んでいたライブハウスで実多に追い詰められ捕まり”再教育”を施される。

 

 

amazarashi

自由な表現で時には鋭い言葉を使う楽曲を発表し続けるロックバンド。当然そのライブも新言語秩序の検閲対象となり歌詞並びに表現を制限され、原曲の面影を残さないほどに改変させられてしまう。

www.youtube.com

 

 

ライブ参加者

言葉ゾンビたちの精鋭が開発した新言語秩序の検閲を掻い潜りその検閲を解除することができるアプリケーションを駆使し新言語秩序への抵抗運動としてamazarashiのライブに参加する。

これはつまりライブを見ている私たちのことである。

 

 

ライブ本編では、いつもなら紗幕に正常に表示されるはずの歌詞が新言語秩序の検閲により消されてしまう。曲の本来の自由な姿を取り戻すためにアプリケーションを開いたスマホをステージにかざし、検閲に抵抗し、言葉を取り戻していく。

楽曲によってはYouTubeにアップロードされているamazarashiのMVがどんどん消されていく光景が映し出されたり、Twitterでのテンプレート逸脱行為がどんどん修正されていく場面も映る。

この抵抗運動に参加している私たちがライブ本編それだけでなく、世界の成り行きを見届けることになる。体感形のエンターテイメントなのだ。

 

www.youtube.com

 

さて、ここまで読んで興味を持ってくれた人たちは是非アプリをDLして20時に共にライブを見て欲しい。

 

 

 



しかしおそらく、どうしてもそれでも乗り切れない人もいるとは思う。

ディストピアディストピアとして描く過程で必ず強い思想が含まれ、様々な理想が渦巻く現代において、共感できなければ、それは苦痛であるからだ。

もちろんamazarashiをそのような部分で忌み嫌う人たちがいるのは確かだ。

 

 

 


この物語をどう受け取るかは個人個人の自由であり、言葉殺しが是か否かを判断するのも個人です。

でもそれら個々の意思も内包したのがこのライブです。

どうか、その結末を目撃してください。

これは、政権批判でも、シュプレヒコールでも、現代の凄惨さを嘆くドキュメンタリーでもなく、新しいエンターテイメントの可能性です。


好きなアニメ、映画、本、漫画、そして音楽。
そういうものの積み重ねで出来上がっている人たち全員に、目撃して欲しい、新しい表現の形です。

この物語はフィクションであり、実在する事件、団体、人物、そしてあなたにも全く関係ない、でも心の奥底に何か熱いものを感じる。そんな、たった一夜のライブです。


その先にある、何かを感じてくれたら嬉しいです。

 

 

全人類、見てください。全人類とは、全人類です。

 

 

朗読演奏実験空間“新言語秩序”  コメント

「新言語秩序」プロジェクトはリスナー皆さんで作る参加型のプロジェクトです。僕らは今までの集大成である言葉と映像と光を駆使しメッセージを届けようと試みます。そこに皆さんの意思が介入し、一つの結末へと向かいます。

傷つけられた言葉。嬉しくて嬉しくてたまらなかった言葉。そういう『言葉』の積み重ねで僕らは形作られています。是非この抵抗運動に参加して、この言葉達の行く末を見届けてください。


—— amazarashi 秋田ひろむ (Vo/Gt)

 

 

朗読演奏実験空間“新言語秩序” Ver. 1.01 コメント

『新言語秩序』は、一般市民同士の相互監視によって言葉が奪われた社会を描いています。
このテーマが時を経て、より深刻に感じられてしまう今の社会のムードが悲しいです。
amazarashiは希望を歌ってきましたが、それは人間の良心に依拠した僕の幻想にすぎません。現実は僕の想像よりずっと無情だったように思います。
この作品を通して、心の中に自問自答や葛藤のようなものが芽生えてくれたら、それが巡り巡ってどこかの誰かの希望になりえるのではないかと、そうであってほしいと願っています。

―― amazarashi 秋田ひろむ(Vo/Gt)

 

 

www.amazarashi.com

 

 

www.youtube.com

【非公式】『どうして私が美術科に⁉️』人気投票開催中です!

タイトルの通りです。

 

docs.google.com

 

こちらはもちろん公式と関係のない非公式のものとなっておりますが、現在沢山のアクセス、投票をいただいております。ありがとうございます!
ただ、まだまだ受け付けてます。まだの方は匿名で構いませんので是非どうびじゅの「好き」の気持ちを一票として投じていただければ幸いです。



さて、こうしてブログを書いているのもアンケートの宣伝の為だけではありません。
まずこの企画は後日【結果を編集部に送付する】ということを明示しています。
そのことに関してはある程度想像はしていましたが、疑問の声が上がっているのを見かけました。
ここから述べる意見はもちろん個人の考えであり、全ての方が納得いくものではないかもしれません。しかし、企画を立ち上げたその真意を語るのも僕の勤めだと思い、今回はこうして文章を用意させていただきました。

まず第一に【目的】を話していこうと思います。
このどうびじゅという漫画は、「愛された漫画」だと思っています。それはきっと僕の想像の上でだけで保たれるわけではなく、きっとこの作品に触れた多くの方にとってもそうであると思います。
事実としておそらく僕らの想像の届かない出来事の果てにこの作品は『打ち切り』という結末を迎えることになりました。
しかし、それを覆す、および糾弾することを目的としてこの人気投票が動き始めたわけではございません。これだけは、最初に主張させていただきたいと思います。
どうびじゅの連載終了の報せが世界に鳴り響いてから、僕は本当にいろんなことを考えました。自分にとって何ができるのか、それともなにもできないのか、はたまたするべきですらないのか。本当にいろんなことを考えました。その中で連載を終わらせた編集部へのある種の『報復』のような過激な感情が浮かばなかったわけではありません。今もまだそんなことを考えてしまう人もいるかもしれません。それ自体僕には責めることはできません。それはきっとこの作品が好きだからこそ生まれてしまった感情であると思います。しかし単行本やきららMAXを読み返す度に、やっぱりこの作品は何よりも愛されるべきだと、僕はそう思ったのです。

去年の冬コミで頒布された『どうして私が美術科に⁉️』の合同誌は、非常に多くの人の手に渡ることになりました。そこに基本的に同人ではまったくの無名の僕自身の力は含まれておらず、本当に僕含め、どうびじゅという作品を中心に本当にいろんな人が集まってその中心で美しい花火が花開くような、そんな奇跡が起きただけだけだと思っています。

この人気投票は数の暴力でも、ましてや誰かを非難するための弾丸でもありません。少しだけ大げさで、でも暖かいファンレターになればいいと思って立ち上げました。
人気であることを世界に知らしめるよりも、打ち切りの悲しみを嘆くよりも、それよりもまずどうびじゅの『好き』を集めて、それ自体が先生への恩返しになればいいと思い、そのような考えで何ヶ月も迷いながら考えながら、そうして決意し、企画するにいたりました。

雑誌のアンケートを送るのは、結構ハードルの高いことかもしれません。そしてファンレターを送るのはもっと勇気のいることかもしれません。
きっと送れる人は簡単に送れるし、そもそもそんな必要性を感じない人もいると思います。でも、何かを伝えたくても全員が行動に移せるわけではないし、時間も限られています。
でもこのようなプラットホームを立ち上げることによって、気軽に自分の『好き』を形にできる人も、きっといると思います。
実際、すでにいただいている人気投票ではみなさん投票するだけではなく、多くのコメントを寄せてくれています。人によってはツイッターの投稿限界文字数をはるかに超える長文を送ってくれる方もいて原稿用紙が何枚も埋まってしまうほどの熱量がもうすでに集まっています。
勿論この企画に参加せず、自分は自分の手で書いた文字で気持ちを伝える、というのも素晴らしいことだとおもいます。
言ってしまえば僕という個人は編集部となんの関係もないただのオタクです。ただ合同誌の主催だからある程度の認知があるから広告塔となっているだけです。非公式で信用なんて正直ありません。無理もないです。
なので企画者である僕も、みなさんと同じようにただ純粋に人気投票に投票をして、そしてコメントを残しています。あくまで僕は書類にまとめたそれを郵送するための切手代を払うだけの、それだけのための存在です。
あくまでみなさんと立場は同じです。好きを伝えたいけど燻っていただけのオタクです。

これが、この企画を立ち上げた【目的】となります。
どうか、より多くの人が人気投票に参加してより有意義なものになることを願っています。




長々と感情の込めた話をしてきましたが、ここからは少し冷静になって現実の話をしていこうと思います。


基本時に公式が行う人気投票は「お金」をかけて「宣伝」の一部として行われるものです。そしてこの世に存在する漫画の多くはそんなものは行われません
人気投票を行うということは余裕があるということでもあり、投票フォームを作る人も、それを集計しまとめる人も、その結果を載せるページも確保しなくてはいけません。
でも非公式であればそんなものは必要ありません。いや、実際は僕が色々してるからあれなんですけど、趣味としてやってるだけなので……。
もちろんこの企画によってまだどうびじゅを知らない人に作品が認知される可能性もありますし、目的がそれではないにしろ、新しい縁が生まれるきっかけになればそれはそれで幸福なことだと思います。
作家にとって、そんな行われるはずのなかった人気投票が行われ、票が集まるということは、もしかしたら作品を生み出してくれた作者への小さな小さな、そして微かな恩返しの一つになりうるのではないでしょうか。勿論、そうならない可能性もありますが。

そして、この投票企画自体が、公式に損害を与えるかもしれないという危機感を抱く方がいるのも承知しております。
上記で語っているこの企画の意義は言ってしまえば僕個人の考えです。少なくとも僕自身はきっと間違っていないと思って行動をしています。しかし自分が正しいと思う時、他方からは間違っていると思われているのは人間なので当たり前のことです。
ファンはあくまでファンであり、作家は雲の上の神様のように、手の届くことがない存在です。少なくとも僕はそう考えています。
そんな下々のファンの悪気のない、正義だとすら思っている行動一つで、作家や公式ににとって予期しない不幸が訪れる光景を、僕たちは幾度となくSNSなどで目撃してきたと思います。
なので投票ページにはそのリスクヘッジとして『先生』ではなく『編集部』に送付すると強調して書いています。
勿論、個人のファンレターも少なくとも編集部を経由して届いていると思いますが、この人気投票はその特異的な性質により慎重にならざるを得ません。
なので編集部の判断によって、この投票の情報が先生に届かない可能性がないわけではありません。全て編集部の判断に委ねる形になります。
もしそうなったらごめんなさい。どうかご了承ください。そうなった場合もいただいたコメントはネット上の特設ページやどうびじゅ合同2で精一杯使わせていただきます。
とはいっても簡単に返事が来るものでもないのですが(余談ですがファン有志が主催する漫画や小説のキャラクター人気投票はそれなりに色々な場所で行われていて編集部に結果を送った際、作者がブログで結果を取り上げてくれたこともあるそうです)。


最後になりますが多くの票が集まるほど、人気投票は精度と熱が上がっていいきます。もしよろしければ、まだ投票していない方も是非ご協力をお願いします。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

どうびじゅ合同第二弾も参加者募集してます。何卒よろしくお願いします。